英語学習

英単語集の解剖学 単語帳を分解すると学習のヒントが見つかります

年々英語への関心が高まっている世の中ですが、そのためか、本屋さんに行くと今や語学書コーナーは実用書の中でも最も大きなスペースをとる一画となっています。そのなかで、今回は、単語集について考えてみたいと思います。

しかし、数が多くて、どれを選べばいいのやら…という思いをしたことがあるという方も多いかもしれません。そこで今回は、単語集を選ぶとき、ぼくだったらこの基準で選ぶという観点をいくつか紹介したいと思います。

Contents

単語集とはそもそも何かと考えると…

そもそも単語集とは、言語を学習するときに、効率を上げるために存在していると思っています。もし単語集というものがなかったら、英文を読んで出てきた単語を片っ端から覚えたり、辞書を覚えたり…という学習になってしまいます。

(こういった非効率そうに見える学習も、やってみたら、そこからしか見えない景色もあるものですが…。ぼくは何度もやったことがあります)

そこで、単語集です。自分の学習レベルに合わせて、必要な単語を必要な情報とともにまとめた単語集に出てくる単語を覚えたら、学習の効率が上がります。ぼく自身、英検1級を受けるとき、こんな思いをした経験があります。

 

ひたすら英単語のみが記された無数の単語リストに、ひたすら辞書を引いて意味を書き込んで覚えようとする。(ネイティヴですらあんまり知らないような単語まで全部覚えようと意気込み十分)

どうも、時間が無限にかかるような気がするなあ…

さぼりがち。

ほとんどサボる。数ヶ月に一回しか語彙学習をしないように。(これで1級を受験する決心が1年以上は遅れた気がします)

本屋でふと見かけた1級用の単語集を購入。(定番の『パス単』)

2ヶ月で1級用の単語ほぼ覚えてしまう。

初受験で無事に英検1級取得。

それなりに語学の経験はあったつもりですが、単語集を最初から買っとけばよかったという、非常に初歩的なところで少し後悔しました。

もちろん、遠回りには遠回りなりの景色もあったのでしょうが、何せ時間がかりました。ここで思ったのは、やっぱり単語集とは便利なものだという、なんともあたり前すぎるぐらい当たり前なことでした。

やっぱり市販されている単語集とは、執筆者の叡智が1冊の本に詰め込まれているものですし、覚えるべきことを、覚えやすいように配置してくれているものだということに改めて気づきました。

英単語集とは何からできているか考えると…

英単語集にはいろいろな情報が詰め込まれていますが、単語集によってこれは載ってる、載っていないというのは違います。単語集をよくよく観察してみると、次のような要素から成り立っていることが分かります。

  1. 品詞・日本語の意味(当然)
  2. 発音記号(アクセントと発音記号)
  3. 類義語対義語
  4. 派生語
  5. 例文
  6. 音声CD(内容によります)
  7. 例文未満のフレーズ・コロケーション
  8. 語源
  9. その他単語に関する補足情報(イラストや用法の解説など)
  10. 英語の定義

どういったものかというのを、例で説明しましょう。

たとえば、obviousという単語についての情報なら、次のようになります

obvious

  1. [形] 明らかな・明白な
  2. ɑ́bviəs
  3. ≒clear, plain, evident ⇔obscure
  4. [副] obviously (明らかに)
  5. It was obvious what he will say about that. (彼がそのことについて何というかは明らかだった。)
  6. (省略)
  7. an obvious fact(明らかな事実)
  8. ob(~へ)+via(道)→「道にあるような」、「されされている」
  9. 名詞化して、overlook the obvious(当たり前のことを見落とす)、 say [state the obvious(わかりきったことを言う)といった慣用表現もある。
  10. easy to notice or understand

だいたいこういったところでしょうか。もちろん自分の学習レベルによって必須な情報は異なるでしょうが、ぼくの経験では、上位5項目が掲載されている単語集は、基本的にいい単語集だと思っています。どうしてそう思うのか、いかに理由をまとめました。

①品詞・日本語の意味(当然)

まず、当然ながら、日本語の定義は必要です。ネイティヴ用の単語集でもない限り、これが載っていない単語集はないでしょう。しかし、日本語の定義と言っても、単語集によって実は様々です。

日本語が1つだけ書かれているものもあれば、3つも4つもの意味が書かれているものもあります。これに関しては、少なくとも日本語の意味は、よっぽど限定できる単語を除いて2つ以上は載っていてほしいものです

たとえば、appleという単語だったら、「りんご」という訳語が1つだけ載っていてもそれほど問題ありません。しかし、例であげたobviousという単語では「明らかな」という訳だけでなく「明白な」、「疑いの余地がない」;「見え透いた」などの意味まで載っている方がいいのです。なぜかというと、obviousという単語が表す内容が、よりイメージしやすくなるからです。次の2つを比べてみてください。

sensible 分別のある

sensitive 敏感な

とだけ書いてあるのと、次の違いはどうでしょう。

sensible 分別のある、賢明な;認識している

sensitive 敏感な、影響を受けやすい、傷つきやすい

2つの英単語は見た目は似ていますが、意味は全く異なります。いくつかの日本語が羅列されていることで、よりその単語の意味内容がイメージしやすくなるのではないでしょうか。似ている単語も区別しやすくなるものです。

(蛇足ですが、senseと関連する形容詞にもう一つsensualというものがあります。知らない方は、意味を調べてみてください。)

注意してほしいのは、日本語の意味がたくさん載っているからと言って、べての訳を覚える必要はありません。覚える意味は、ほとんどの場合、1つめの意味だけで十分です。ただ、単語のイメージを立体的に捉えるためには、複数の意味が載っていることが望ましいのです。

べての外国語の単語は、決して日本語と1対1で意味が対応することなどありません。どんな単語であっても、背景の文化や言語が発達した状況などを考慮に入れると、ある外国語の単語が表す意味内容と日本語の単語の意味内容が完全に重なることなどないのです。

たとえ“apple”と「リンゴ」であっても完全に重なることはないのです。これが言語が違うということなのです。

つきつめると、1つの外国語の単語を日本語にするときは常にこの問題が生じます。(英英辞典を使うべきだ!という主張の根拠は、ほとんどここにあります。)

かといってすべての単語に英英辞典を引いて、英語の定義で英単語を覚えるのは、相当な時間がかかります。(ぼくも一回やったことあります。めっちゃ時間かかります。楽しいけど。)だから複数の訳語を目にすることで「訳」の限界をすこしでも克服する必要があるのです。

②発音記号(アクセントと発音記号)

発音記号は必ず読めるようになっておくべきです。発音記号とは、漢字につける「ふりがな」みたいなもので、これが読めるようになると、すべての英単語の発音がわかります。(実際に発音できるかはまた別の問題ですが。)

発音記号は、自分で独立して英語を勉強できるようになるために必要なものです。発音記号が読めれば、電子辞書の発音機能や音声CDをいちいち確認する必要がなくなります。そのため、学習の効率が飛躍的にアップします。

単語集の音声CDを聞いて学習するのもいいのですが、CDはスピードや日本語・英語の読み方を選べないので、受動的な学習になりがちですし、音声CDを聞くのは、意外に時間がかかるものです。

発音記号を読むのに慣れれば、《英単語を見る→発音する→次の単語を見る→発音する》といった流れで、発音をさらうだけの学習ができるようにあります。練習を重ねると、100単語ぐらい発音するのに5分もかかりません。そうやって音から覚えていくことは、(単にリスニング力向上のためだけだけでなく)すべての外国語学習において、非常に重要です。

しかし現状、いわゆる進学校と言われるような高校でも、1年生の1学期で発音記号が読めるという人は、非常に少ないです。ほとんどの高校生にとって、発音記号は、目にはするけど、なんかようわからんやつ…と思い続けて学年が進んでいく…なんてことになっていることが割とあります。

これは非常に残念なことだと思います。発音記号は、アルファベットそのままではない、特殊なものは( )全部で15個もないので、練習を重ねるとすぐ見た瞬間読めるようになります。ひらがなで言うと、「あ」行から「さ」行までの文字を学習するぐらいの労力で済むのです。これだけですべての英単語が発音できるようになると考えると、学習しないのは非常にもったいないことです。

④類義語対義語

類義語対義語が役に立つ場面は、主に2つです。1つめは、知っている語彙の世界が広がること。こうした関連語が載っていることで、目にする英語の語彙が単純に増えます。

単語集に掲載されているすべての類義語対義語まで覚えてしまう必要はないと思いますが、すくなくとも、類義語対義語を目にすることで、もしその語が前にならった単語だったら、「そういえば、この単語、前にでてきたな」、と思うことができますし、その単語が後から出てきたら、「この単語、前、別の単語を覚えたときに、類義語ででてたな」など思うことができます。

これで十分です。これがあるだけで、新しく出てくる単語を覚える労力と、復習の労力が大きく軽減されるはずです

すべての単語は羅列してひたすら上から覚えるためのものではなくて、実は有機的に関連し合っています。先の例では、

obvious

≒clear, plain, evident  ⇔obscure

となっていました。obviousという単語を目にしたとき、clear, plainという単語は知っていたけど、evident, obscureは知らなかった、という場合は、この段階では、とりあえずこういった語もあるんだなぐらい思っておけば十分です。無理して全関連語を出てくるたびに覚える必要はないとぼくは思っています。

(覚えようとしたこともあったんですけど、そこまでこだわり出すと、なかなか次の語にすすめませんし、結果的には時間が多くかかってしまった、という失敗がぼくにもありました。)

学習が進むと、evident, obscureという語が、今度は見出し語として出てくることもあるでしょう。そのときに、obviousのとき出てきたな、と思えれば、儲けものですし、思い出せなくても心配ありません。

(ほとんど思い出せないと思います。あえて覚えようとしてないので。)それでも、そのあとでまた元に戻ってobscureという単語を復習していると、関連語として、またこれらの単語を目にするでしょう。

そうして何回も繰り返し単語を目にすることで、少しずつですが、1つ1つの単語が頭の中で有機的なネットワークのようなものを作りながら記憶に定着していくのです。

そして、例文を見たり、実際に読解やリスニングの中でこれらの単語に出会うことで、ひつこいですが、少しずつ、少しずつ、微妙なニュアンスの違いや用法については身についていくものです。肝に銘じておかないといけないことは、これはとても時間のかかるプロセスだということです。「単語が覚えられない」と嘆く人は、このプロセスにそもそも時間がかかるという事実を知らないか知ろうとしない人が多いものです。

類義語対義語(特に類義語)が必要な2つめの理由は、作文と読解の試験に対応するためです。

試験に限らず、英語で文章を書くという場合、同じ単語を何度も繰り返すことは、避けるべきだとされています。英検やIELTSなどの試験でも、作文での語彙の評価は様々な単語を使えているかという観点があるので、できるだけいろいろな単語を使うようにと指南されることが多いです。これは英語を学ぶ人にとって、世界各国で共通することです。

試しにYouTubeで「English Writing」と検索してみてください。英作文を添削したり解説したりした動画がたくさんでてきますが、多くの動画で “Don’t repeat the same word.”みたいなことが言われていると思います。

さらに、多くの英語の読解問題において、本文の内容に当てはまるのはどれか、という選択式の問題が出題されます。高校入試だろうがセンター試験だろうが英検だろうがTOEFL・IELTSだろうが状況はほとんど同じです。そんなとき、選択肢の文は基本的に、本文をうまく言い換えた(=パラフレーズした)表現になっています。類義語を多く知っていることで、怪しげな読解テクニックに頼らずに(そんなものは実際ありません)、ちゃんと文章が読めていたら、自然に正解を選ぶことができるようになります。

パラフレーズ力というのは言語を使う中で、理解する・伝える、どちらの場合にいても非常になってくるものです。それを鍛える上でも単語学習の時点で類義語対義語を意識することはとても意味があることなのです。

④派生語

派生語とは、見出し語と同じ語幹をもった、多くは違う品詞の語のことです。例えば、見出し語がhappy[形]だったら、happily[副]、 happiness[名]などが派生語に当たります。

派生語が単語集に収録されている方が望ましい理由は、先述の類義語対義語があったほうがいい理由とほとんど同じです。語彙を広げるため、次に違う品詞で出会ったときの覚える負担をできるだけ減らすためです。

よく、派生語もすべて覚える必要があるのですか、と聞かれることがあるのですが、見出し語を覚えることを優先して、派生語は目を通しておく程度で十分だとぼくは思っています。

見出し語が形容詞で、-lyをつけるだけで副詞を作れるような語なら(例えば、slowに対するslowlyのように)、見出し語の形容詞slowをちゃんと覚えておけば、文中でその副詞形slowlyに出会ったときに、意味がわからないと言うことはまずありません。動詞に-ing, -edをつけて派生する形容詞もそうです。

たとえば、demand([動]~を要求する)という語が見出し語と出ていて、それをしっかり覚えていたら、文中でdemanding([形]要求の多い)という形を目にしても、意味が全くわからないということはまずありません。だからやっぱり見出し語をしっかり覚えることを第一に考えて、派生語は目を通すぐらいでとりあえずは十分だと思います。

ただ、派生語が元の語から意味が単純に類推できないようなものもあります。たとえば、

promise[動]約束する

→promising[形]前途有望な

といったものです。これはたとえ、promiseという語をちゃんと覚えていても、文中で、

Tom is a promising student.

みたいな文に出会ったら、promising(前途有望な)という形容詞を別で覚えておかないと意味が単純には掴めないと思います。そういった派生語は、線を引いておくとかして強調しておくといいでしょう。

ただ、学習を続けていくと、意味が単純に予想できないような派生語は、いずれちゃんと見出し語としてでてくると思われるので、そこまで神経質にすべて覚えようとしてしまわなくてもいいでしょう。

同じ語幹から、品詞は同じでも2つ以上の派生語が生まれるときは、意味をしっかり区別することも必要です。例はそこまで多くありませんが、たとえば、次のようなものです。

imagine[動]想像する

→imaginary[形]想像上の

imaginative[形]想像力豊かな

imagineという動詞から、2つ形容詞が派生してますが、意味は異なります。こういった語も、派生語として出てきた時点で頭にたたき込んでしまう必要はありませんが、いずれ見出し語として出てきたときなど、覚える課程でしっかり区別して整理しながら覚えていく必要があります。

⑤例文

例文はすべての単語にある方がやはりいいと思います。例文をカットして、文未満の短いフレーズ(=コロケーション)だけを掲載した単語集も多いですが、例文はぼくとしては、外すべきではないと思います。

だからといってすべての例文を最初から目を通すべきだとは思いません。覚えにくい単語、訳語だけを見ても意味がピンとこない語、用法がわからない語など、すんなり頭に入ってこない語は例文を確認する、というやり方でとりあえずは十分だと思います。単語集で例文を暗記しようとするのは、労力を考えると、あまりおすすめできません。もっといい素材があるはずです。

例文というのは、文であるので、ちゃんと主語・動詞が含まれています。「○○は~だ。/○○が~をした。」という文の中に、見出し語を落とし込むということは、単語の使われ方をイメージするのに実はとても重要だと思います。

その語が、言語の世界の中で、どういった働きをするか、「誰が」「何を」「どう」伝えるときに「どのように」使われるのか、学習者はほんの少しだけ、例文を通して垣間見ることができます。これは語義の説明をどれだけ乗せようが、コロケーションが充実させようが、例文以上に端的に示すことはできないのではないかと思うのです。

⑥音声CD

音声CDはあった方がいい。でも、特に発音記号を苦労なく読めるようになっている学習者にとっては、必須ではないと思っています。音声は、学習の仕方によってどういった音声がいいかというのが結構異なってくる部分だと思います。

例えば、おもに電車のなかや運転中に音声だけ聞く、という場合は英語と日本語両方はいっているCDの方が学習しやすいでしょう。もっぱら単語集を開きながら音声を聞くという人は、英語だけが入っていれば十分です。訳語は見ればいいだけですから。訳語は、見れば一瞬ですが、聞けば数秒かかります。このため、音声で日本語を聞くのは学習の高速化・効率化の妨げになります。

例文の音声があった方がいいかなどは、学習方法によって一概にはいえません。意味をひたすら確認するだけなら、見出し語の発音だけでいいとぼくは思っています。

こういう音声があったらいいな、という音声は、見出し語がひたすら英語だけ、次から次に読まれていくような音声素材です。2秒に一語ぐらい読む感じで、どんどん次の語に進んでいく感じです。これなら発音をさらうだけなら5分もあれば100語以上目にすることができます。2周しても10分です。1週目は英語だけ見る。2周目は訳語もちらちら見る。こういうときは、じっくり覚えるのとは別の作業だと割り切って、とにかくどんどん発音していきます。

学習が進んで、覚えてきたら、何もにずにシャドーイングしてみる。シャドーイングしながら意味が一瞬ででてくるか自分で確認してみる、などなど使い方は無数にあります。単語を発音しているだけ、といったシンプルな素材は、その分いろいろな活用方法があるものです。英検の『パス単』アプリや、アルクの『究極の英単語』シリーズのアプリなどは、こういった音声が用意されていて、学習しやすいなと思っています。

⑦例文未満のフレーズ・コロケーション

主語動詞を含む文ではありませんが、特定のごとセットで使われる語をイメージするのを助けてくれるのが、コロケーションです。例えば、understand・generousという語でできるコロケーションは次のようなものです。

understand [動]~を理解する

・understand Chinese(中国語を理解する)

・understand how to solve a problem(問題解決の方法を理解する)

generous [形]寛大な;気前のいい

・a generous attitude(寛大な態度)

・be generous with money(お金について気前がいい)

といったものです。動詞の場合は、どういった種類の目的語をとるかがイメージできます。形容詞の場合はどのような名詞がつづくか、後ろにはどのような前置詞をとるかなどがわかります。

日本語では「スープ・味噌汁を飲む」と言いますが、英語では “eat [miso] soup” といいます。日本語では「スープ」には「飲む」を使うけど、英語ではsoupにはeatを使うといったきまりは、言語の中で一つ一つ学んでいくしかありません。ネイティヴスピーカーにとっても当たり前の言葉の組み合わせをイメージできるようにコロケーションが必要なのです。

コロケーションを理解することで、その単語がどのように文中で使われるかが一目でわかります。例文をあえて収録しない単語集はコロケーションにこだわっているものも多いです。大学入試でおなじみの『システム英単語』も例文を廃し、「ミニマムフレーズ」という短いフレーズでそれぞれの単語の用法を端的に表すように工夫しています。

作文や会話で学習した使えるようになるには、コロケーションを瞬間的に英語にする練習をするのは非常に効果的です。この練習法を突き詰めた単語集に『英単語ピーナッツほどおいしいものはない』というシリーズがあります。作文や会話などのアウトプットの練習を重ねたいならおすすめの単語集です。

⑧語源

ことわざだろうが、若者言葉だろうが、どんな言葉にも語源があります。語源については、語彙レベルが増えてくると、基本的な語幹ぐらいは知っておくべきだと思います。英語にもよく出てくる語幹・語根がいくつかあります。漢字で言う部首のようなものです。

よく使い、汎用性の高い語源については知っておく方が単語を覚える苦労が大幅に軽減できますし、語源から類義語のニュアンスを区別することもできたりします。

例えば、「活気のない経済」という時、「活気のない」という日本語に当たる形容詞をweb辞書で検索するといくつか候補が出てきます。

sluggish, ailing, stagnant (economy)

sluggishという語はslug(ナメクジ)という語から来ていて、あの生き物のようにのろのろと動いているようなイメージが思い浮かびます。

ailingはail(病気、体の不調)から来ているので、まさに経済が病んで、活気がなくなっているような感じがします。

stagnantですが、ラテン語のstagnare(水などがたまる)から来ていて、それこそ、たまった水がよどむように停滞している感じがします。

語源の知識はこのように、つきつめて学習すると非常に興味深く、かつ役立つものですが、なかなかここまで語源について深く学ぶことは時間もかかりますし、このレベルまでになるには英語だけでなくラテン語やフランス語など英語と関わりのある多言語の知識も必要になってきます。なので、語源はまずよく使い、いろんな単語に出てきて汎用性が高いものは押さえる、という使い方で十分な気がします。

語源の活用法として、ぼくは、単語集でなかなか覚えられない語やすぐ忘れる語は、語源辞典を引いて、語源情報を書き込んだりしています。そうすることで少しでも定着しやすく、そして定着が長続きするようにしています。ちょっとの工夫でちょっとだけ覚えやすくという工夫は、語学において、いつだってとても大切です。

単語集のすべての語について語源情報が載っている必要はあまり感じませんし、すべての語源情報を読むのもなんだか時間がかかりそうなものです。

語彙が増えてきて、英検の準1級・1級レベルになってきたら、もうちょっとしっかり語源を学習して、単語と単語のつながりの世界を楽しめるようになったらいいのではないかと思います。

⑨その他単語に関する補足情報(イラストや用法の解説など)

語源についてもそうですが、最近は、単語に関して何らかのコメントや意味・用法の説明がついていることが増えてきたと思います。実用的なものや雑学レベルのものまでさまざまですが、学習するときは活用するかうまく取捨選択しつつ学習していったらいいと思います。

先述の『シス単』でregardlessという語が出てくると、「99%がofを伴う!」と、regardless of(~に関係なく)の形で使うことがコメントされてます。こういった情報は学習者目線に立っていて、とても有用だと思います。

⑩英語の定義

いわゆる、英英辞典の語義説明のことです。これが載っている単語集は非常に限られますが、あると単語の意味がよりイメージしやすくなります。日本語の訳語で表すことのできない微妙なニュアンスが記されていることもあるので、有用です。

例えば、ある非常に有名な単語集には、reviseという単語の訳語に、「修正する」という定義が、載っていました。もちろん、この訳語はよく使われる文脈でそのような日本語になるということを表しているのですが、これだけでは単語のイメージがつかみにくいようにぼくは思います。もし、似たような意味の単語で、correctmodifyという語を知っているなら、どのようなニュアンスの違いがあるか気になる人もいるかもしれません。

英英辞典で名高いロングマンの定義では、reviseは次のようになっています。

revise

to change something because of new information or ideas
(新たな情報やアイディアのために、何かを変更する)

こうしてみると、書籍などに新たな情報を加えて出版するときや、改訂するときにこの語を使うことが分かります。実際、「改訂する」という訳語を単語集も多いです。こういった語感は「Revise=修正する」とだけ覚えていてはなかなか身につくことではありません。こういうわけで、日本語だけでは伝えきれないその語が持つニュアンスを教えてくれると言う点で、英英辞典の定義は役立ちます。

ただ、すべての単語のすべての意味について英語定義を確認していたら時間がかかるため、覚えることを優先するなら、必須ではありません。日本語の訳語を見て、語義がぴんとこないものやイメージしにくいものだけ自分で調べて補足したりするので十分ではないかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。単語集を構成する情報について、各項目ごとに改めて考えてみました。よい単語集とは、学習がしやすいものだと思っています。ぼくの場合は、上であげた要素のうち1~5の項目ぐらいは単語集には収録しておいてほしいなと思います。その他の情報については、覚えにくい単語・相性の悪い単語についてだけ(そういう単語ってあると思います)辞書で調べて書き加えていったらいいと思います。

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