近頃、言語学習の分野でよく聞かれるような用語にCEFR(「セファール」と読みます)というのがあります。特に英語をはじめとする欧米の言語を学習していると、1度は聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。最近は高校の英語の教科書にもCEFRという記載があることがありますし、本屋にもCEFRと名のつく本が多く並んでいます。
CEFRとは
CEFRとは、学習者の語学レベルを表す基準です。「欧州共通言語参照枠」の頭文字をとったもので、その名の通り、ヨーロッパの言語について、学習者がどのレベルであるか参照するために生まれました。
基準は、6段階で、一番低いレベルのA1から、A2, B1, B2, C1, C2の順にレベルが上がっています。
単純化していくと、
A 初級(基礎段階の言語使用者)
B 中級(自立した言語使用者)
C 上級(熟達した言語使用者)
という感じで、それぞれの段階が、さらに2段階に分かれている感じです。日本人の英語の平均レベルはAレベルで、仕事や生活で使うにはまだまだほど遠いというレベルです。
Bになってくると、独学でも学校でも、ある程度は真面目に勉強したという人が到達し出すレベルです。大学入試でいうと、センター試験の平均点(120点程度)を超えてくると、Bレベルであるといっていいでしょう。英検の準1級に合格する人でもほとんどはBレベルです。Bレベルでも後半になると、海外旅行で遭遇するような場面は、ほとんど自分だけで対処できるでしょう。
これがCになってくると、もう、相当勉強した人、という感じになります。英語であっても、Cレベルの日本人は一気に数が減ります。英検でCレベルといわれているのは1級だけとされているので、そのレベルの高さが分かるでしょう。C2レベルともなると、外国語学習の境地といえるレベルで、対応できない場面はないといってもいいレベルだと思いますが、正直ぼくもC2レベルに達してる言語はないので、なんともいえません。憧れの境地ですね。
この指標の画期的な点は、多くの言語が混在するヨーロッパにおいて、どの言語だろうと、共通の基準・尺度でレベルを測定できるようになってという点です。各レベルにおいて、何ができるかは、しっかり規定されています。
[ブリティッシュカウンシルの表]
熟練した
言語使用者C2 聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解することができる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。 C1 いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の、詳細な文章を作ることができる。 自立した
言語使用者B2 自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。 B1 仕事、学校、娯楽などで普段出会うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。 基礎段階の
言語使用者A2 ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純で直接的な情報交換に応じることができる。 A1 具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。
欧米では、自分がどの言語をどのぐらいできるかということを話すとき、ドイツ語はB2レベルで、フランス語はC1レベルだと言えば、どのぐらいできるかがわかってもらいます。多くの言語が混在し、共存しているヨーロッパにおいてはこういった尺度が必要だったと言うことは、想像に難くありません。
現在では、海外大学の留学条件には、ほとんどCEFRの基準が使われています。例えば、ドイツのある大学で、文学系の分野で留学するなら、ドイツ語C1、英語B2、フランス語かイタリア語でB2という基準になっていたりします。
英語でCEFRといえば「ケンブリッジ英検」
というわけで、ヨーロッパの主要言語にはCEFRの証明となる試験が各言語に用意されています。フランス語ではDELF/DALFという試験がありますし、ドイツ語にはGoethe Zertifikatという試験がCEFRのレベルを証明する試験として存在します。
英語ではどうかというと、事情は少し複雑です。英語でCEFRの試験として一番信頼されているものは「ケンブリッジ英検」です。ケンブリッジ英検は、日本ではあまり知られていませんが、英語4技能を詳細に測定する世界基準の英語検定です。日本の英検は海外での知名度はほとんどありませんが、ケンブリッジ英検は世界の最も多くの国と地域で実施されている、世界的には知名度の高い試験です。TOEFLやIELTSのようなスコア型の試験ではありませんので、合格・不合格がある試験になります。そのため、難易度は各レベルによって大きく異なります。
ケンブリッジ英検は、大学入試改革もあってか、少しずつ日本でも注目度が上がっている試験です。試験はイギリス英語が中心で、解答方法がすべて単語を大文字で書いたりと、日本人にはあまりなじみが持ちにくい試験かもしれませんが、試験の完成度や信頼度はとても高いので、受験するかは別として、ケンブリッジ英検の問題をやってみるのは、自分の英語力を見極めて、向上させていくのにとても有効だと思います。ネット上には無料の問題などもあるので、興味がある方は検索してみてください。
各種英語試験とCEFR対照表
とはいっても、英語の試験はほかにもたくさんあります。IELTSやTOEFLや日本の英検はCEFRのための試験ではありませんが、非常に受験者の多い試験であるので、CEFRとの対照表というものが様々なところから出ています。そのため、日本で主流の英語試験でもCEFRのレベルを判断することは可能です。各試験がCEFRの証明になるかは、受け取る機関によって違うので、実際にスコアがどう使えるかは考えおく必要があります。
各試験とCEFRの対照表は、いろいろなところから出ていて、出所によって結構違うのでなかなか信頼できるものを探すのは難しいです。検定試験というものは形式も違うので、なかなか同じ水準で比べることができるものではないです。
たとえば、全国通訳案内士の試験で、英語が免除になる基準は、英検1級、TOEIC900点となっています。だからといって、英検1級=TOEIC900点と考えるのは無理があるとだれしも分かると思います。ライティングとスピーキングがないTOEICと4技能を均等に配分している英検では、試験自体に違いが大きいので、なかなか比べること自体が難しいのです。
いろいろな対照表が出ているのですが、文部科学省が出している表が今は一番信頼度が高いと思います。
試とこういった対照表を活用することで、CEFRのどのレベルに自分がいるのか知ることも学習のモ験チベーションアップに役立つかもしれません。大学入試改革という話が出ていこう、日本でもよく耳にするようになったCEFRという言葉ですが、これからもっとよく見慣れた単語になっていくと思われます。
まとめ
ヨーロッパで生まれたCEFRと日本の英語学習文化との折り合い方を、今は文科省も巷の英語教員も模索している段階だと思います。なかには、CEFRという考えをくだらんものだとする先生もいるようですが、ぼくとしては、世界で一番言語学習が進んだ地域である欧州の言語観を輸入するという意味でも、いいことではないかと思っています。
最近はCEFRを参照した英単語集も出てきました。
竹岡先生の最新単語集も、CEFR表記をもとに、受容語彙と発信語彙を区別して学習できるように配列しています。
[…] CEFRの話をしよう――あなたの語学力はどれでしょう […]