日本の英語教育界に、SVLというものがあります。日本の英語教育界を牽引してきたアルクが生み出した、「英語学習者にとっての重要度」と「ネイティヴの使用頻度」に基づいた12000語の語彙リストのことです。
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SVL(=Standard Vocabulary List)とは
SVLという語彙リストでは、各レベル1000語ずつ、全12レベルで、英語の基本語彙から上級語彙までを分類しています。
この単語って、どのぐらいの学習レベルの人が知っておくべきものなの、ということを考えるときに基準を示してくれるという点で、非常に画期的なリストです。
もちろん、英単語は12000語以上存在しますし、これを全部覚えたからといって、洋書を読んで知らない単語が全くないと言うことはありませんが、少なくとも12000語の語彙を知っていると言うことは、英検の1級だって十分合格可能です。
つまり、この語彙リストは、aとかaboutとった、よちよち歩きレベルの語彙から、上級レベルの語彙まで対応しており、多くの学習者にとって必要な語彙を、ほとんどもれなくカバーしているといってもいいでしょう。
各レベルの1・100・200・300・1000語目の単語を見てみましょう。
1 | 100 | 200 | 300 | 1000 | |
SVL 1 | a | book | dear | football | zoo |
SVL 2 | ability | bookstore | court | entrance | zero |
SVL 3 | absence | blank | conscious | evil | zone |
SVL 4 | aboard | bite | confession | discipline | youthful |
SVL 5 | abandon | bundle | cradle | edit | zipper |
SVL 6 | abortion | Buddhist | couch | eggplant | wrongly |
SVL 7 | abandonment | bracket | contemplate | duration | zip |
SVL 8 | abnormality | blur | coup | ecologist | zoom |
SVL 9 | abbreviate | boon | cult | evaporate | zigzag |
SVL 10 | abdomen | besiege | consign | eject | zoological |
SVL 11 | abbey | blatant | contemplative | drab | zinc |
SVL 12 | abate | beseech | copious | ecclesiastical | zodiac |
こうしてみると、SVL 1といったところは誰でも知っているような単語ばかりですが、真ん中ぐらいで大学受験レベルになってきて、後半はかなり語彙力が豊富な人でないと意味が分からない単語になってくるのではないでしょうか。
語彙の選定について、古くなっている、一貫性がない、重要度がもっと高い語が入っていないなどの批判があることがありますが、完璧なものなどもともとありません。
完璧な語学などありませんし、完璧な教材もありませんし、完璧な語彙リストなどないのです。「この単語よく使う」という語彙の頻度に関しては、個人の印象によるところが大きいものです。そんななかで、多くの学習者の基準となるリストを示したと言うだけでも、とても価値のあるものとだと思います。
SVL制覇への道のりから見える景色について…
知っている語彙レベルとして、まず基準となるのは5000語レベルです。これは高校までに習うとされている語彙レベルになります。センター試験はだいたいこのレベルの以上の単語は文脈から意味が明らかな場合を除いて出てこないことが多いです。高校生だったら、この数の英単語を知っていたら英語ができる方といってもいいでしょう。
次の基準は7000語レベルです。このレベルになると英検の準1級も十分合格を狙えるレベルになってきます。TOEICなら700点台後半、大学入試なら難関大学も狙える位置です。大学入試で、これ以上のレベルでないと合格できないような大学は国内にはありません。
次の基準は10000語レベルです。どんな言語でも、10000語知っているといえれば、その言語はある程度不自由なく使えるし、人に教えることもできるというレベルだと思います。よっぽど難しくない限り洋書も読めますし、映画やドラマを英語字幕で見ても楽しめるレベルだと思います。英検1級にもギリギリ届き出すレベルです。
次が12000語レベルです。このレベルになると、TIMEやThe Economistなど、英語の高級紙でも、知らない単語は意味を類推しつつ、楽しみながら読めるようになります。英検1級でも十分合格点を取れるようになりますし、語彙に関しては日本人数百人に1人の上級レベルにいるといってもいいでしょう。中高の英語の先生でも、このレベルの単語をほとんど知っているという人は、一握りになってくる、というレベルです。
単語のSVLレベルを知る方法
ある単語がSVLのどのレベルのものかは、簡単に調べることができます。アルクの辞書といえば「英辞郎」ですが、それで単語を検索したら「レベル」というものが出てきます。これがSVLのリストにななります。ネットでもすぐ出てくるので、手軽でおすすめです。スマホのアプリ版もあります。
ぼくなんかは、暇なとき、この単語はどんなもんだろうと適当にSVLを調べてみるなんてことをやったりします。しょうもない暇つぶしの一つです。ほとんど共感を得られたことはありませんね。
SVL完全準拠の単語集、あります。
SVLは単語リストなのだから、学習のために単語集にしてほしい、という声が聞こえてきそうです。
大丈夫、あります。
アルクが出している単語集『究極の英単語」シリーズがSVLに完全に準拠した英単語集になっています。
この単語集は全4巻からできていて、シンプルにSVL12000語を一冊3000語ずつ、一つも漏れることなく収録しています。つまり、第1巻にはSVLレベル1~3の3000語が収録されていて、第4巻にはSVLレベル10~12の3000語が収録されているわけです。
各巻はその中でもまたSVLレベル別に章立てされていて、第1巻SVLレベル1の章、SVL2の章、SVLレベル3の章と独立しています。
中身は(実は)これと言って大きな特徴のない単語集なのですが、この単語集の「究極の」に画期的な点は、(最後までやるとしたら)英語マスターに必要な12000語を最初の方から1語も漏らすことなく学習していくことができると言うことです。つまり、「究極の英単語」の収録語彙を覚えていくことがそのまま、英語上級者へのまっすぐな1本道になってくれているというところです。
単語集は無数にありますが、超基本語から難単語までを一貫して収録した単語集は他にありません。そのスケールの大きさという点でも、おもしろい単語集ではないかと思います。
まとめ――SVL=「すっげー、ぼきゃぶら、ロングロード」を突き進もう
ある程度の文法が身についた後は、語学=語彙学習、つまり、「知ってる単語、使える単語をふやすこと」に他なりません。もちろん、12000語を覚えたから即、言語マスターというわけではありませんが、12000語を覚えるという道のりは、決して短くはありません。とむしろ、果てしなく遠い道のりです。
アルクが作ってくれたこのSVLリストは、語彙レベルを参照するときにいろいろな場面で使われてきた指標ですし、多くの学習者を励まし、遙かなゴールに憧れを抱かせてくれたそんざいです。
CEFR基準の単語リストと言ったものも最近出てき始めましたが、そういったものがもっと一般的になるまでは、果てのないボキャビルロードにおける、貴重なランドマークとしてこれからも活用されていくのではないかと思います。歩んできた道のりが、そのまま英語学習の道のりとなるような学習ができるという存在であるSVLに、一英語学習者として、感謝したいと思います。