英検1級は言わずと知れた、国内の英語資格として最高峰のものです。合格率は10%前後、合格者は年間3000人ほどと言われています。今回は、そんな難易度の高い試験に、5000円以下の投資で合格する方法を考えてみました。(受験料は除きます。)
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英検1級用の教材――やっぱり少ない…
英検一級がどのぐらいのレベルであるかは置いておいて、とりあえず、1級を持っていたら、英語が相当できる人だと認識してもらえます。
そんな1級ですが、受験者数がほかの級よりも遙かに減ってしまうことから、国内で販売されている1級用の教材は数が非常に限られています。最近は増えてきましたが、それでも準1級以下と比べると選択肢の少なさははっきりしています。
現在は、大学入試改革の影響もあり、英検関係の書籍は次から次に新しいものが出版されるようになっており、英検市場自体は空前の活況を見せているのですが、ほとんどが高校生以下の需要を想定したものであるため、1級の新たな教材は他の旧に比べると激増とは言えません。
教材が少ない=買う人が少ない、ということになるのですが、その分、1級用は既存の教材は値段も高めに設定されています。ニーズが少ないので仕方がないとも言えます。
市販されている、英検1級用の主な教材の値段を調べてみました。
- 『英検1級 でる順パス単』(旺文社) 1836円
- 『2018年度版 英検1級 過去6回全問題集』(旺文社) 2484円
- 『2018年度版 英検1級 過去6回全問題集CD』(旺文社) 3348円
- 『英検分野別ターゲット 英検1級英作文問題 改訂版』(旺文社) 2052円
- 『最短合格! 英検1級 英作文問題完全制覇』(ジャパンタイムズ) 2376円
- 『最短合格! 英検1級 リスニング問題完全制覇』(ジャパンタイムズ) 2592円
- 『英検1級総合対策教本 改訂版』(旺文社) 2700円
- 『英検1級 二次試験・面接 完全予想問題』(旺文社) 1944円
以上の教材は、どれも数少ない英検1級の貴重な教材として人気のものです。アマゾンで「英検1級」と検索したらいずれも上位に表示されるものばかりです。ラインナップを見てお気づきだと思いますが、旺文社のものが多く、ジャパンタイムズの教材がそれに次いでいるという感じです。
いずれの教材も、ページ数や情報量の割に、値段が高めの印象を受けてしまいます。旺文社が出している過去問なんて、問題とCDを合わせると6回分で5832円もかかります。過去問1回でおよそ1000円弱です。英検は問題の質もしっかりしているので、過去問はそれだけですごく価値のある教材ではあるのですが、お高い印象が否めません。
所持金5000円 でも楽しく学習したい
そんな英検1級に5000円以下で、かつ、できるだけ楽しく学習しながら合格を目指せる教材を考えてみました。
まず、前提ですが、この方法が実行できる学習者レベルは準1級にある程度余裕をもって合格できるぐらいだと思ってください。1級の語彙問題はまだまだ歯が立たないけど、長文読解は6割ぐらいは正解できるというレベルです。
さすがに中学レベルから5000円だけかけて英検1級に合格できるなんてことはありません。一方で、準1級に、ぎりぎりではなく、概ね問題を理解しながら解くことができる人なら、十分お金をかけずとも1級に合格できると思います。
1級合格のために買うべき教材は次の2つです。
①『パス単 英検1級』
②『最短合格 英検1級英作文問題完全制覇』
合計しても4000円ちょっとといったところです。
これだけで? と思う方もいると思いますが、工夫次第ではこれだけで十分です。それでもなかなか半信半疑の方は多いと思います。
英検史上最強の問題にこれだけで合格できるとはなかなか信じられないかもしれません。そもそも語学というのは1級近いレベルになると、じっくり時間をかけて、ようやく少しずつレベルアップしていくという段階になります。教材にもそれなりに投資が必要なのは確かです。
しかし、英検はそれほどお金をかけずとも学習できる試験であることは確かです。TOEFLやIELTSなどの試験に比べて、英検は高額な教材にお金をかけずとも合格できるような環境が整っている試験なのです。
といっても、やっぱり無理でしょ、という疑問にお答えします。
それでは、ここでは5000円だけで合格できるという考えに対して、想定される疑問にお答えしてみましょう。
①「過去問は買わなくていいの?」
A:過去は必要です。どのような試験でもそうですが、特に英検のようなしっかりとした機関が作っている信頼度の高い試験は、過去問以上の教材はないと言ってもいいでしょう。
各出版社が出しているその試験をまねした問題集は本家の問題に勝ることはありません。じゃあなおさら過去問を買わないといけないじゃんという疑問が聞こえてきそうです。
しかし,英検はありがたすぎるぐらいありがたいことに、過去3回分の過去問が公式ホームページで無料公開されています。
英検1級の過去問を出版しているのは旺文社だけで、リスニングCDをつけると6000円近くかかってしまいます(6回分収録)。
一方、英検公式サイトで無料公開されている過去問は最新3回分です。そして、この過去問は年3回の英検実施日の直後に更新されます。学習に4ヶ月かけるとすると、そのうちに1回は過去問は更新されるので、4回分の過去問が手に入ることになります。1年かけるなら6回分が無料で手に入ることになります。
もちろん、公式サイトではリスニング音声も再生できますし、リスニングスクリプトやライティングの解答例も公開されています。こういった事情もあって、英検は優れた過去の問題を、お金をかけず利用できるのです。
②「面接の対策教材はいらないの?」
A:英検1級の2次試験は広く社会性のあるテーマについて2分間のスピーチをその場で作り上げるという難易度の高いものですが、専用の対策本は必要ないと思います。
理由は2つです。1つめは、そもそも面接対策本は現状2種類しか出版されていないこと。どれも値段を考えるとちょっと物足りない内容であることは否定できません。
もう1つの理由は、英作文対策本を使って2次対策も十分練ることができるということです。面接では基本的に英作文で書くような内容のことを口頭で話せるようになっておく必要があります。そして、英検1級の英作文対策はそのまま2次の面接対策となるぐらいテーマは似通っています。
そのため、英作文の学習をするときに、2次試験までを見据えて対策を進めておくと、面接向けの教材を選ぶ必要は特段ありません。
鍵は、2つの書籍を無料教材と組み合わせることにあり
それでは、買うべき教材はどれかというと、この2冊ということになります。
①『パス単 英検1級』(旺文社)
①のパス単に関しては、英検1級の代名詞である語彙問題を突破するために必ず必要なものです。パス単は英検1級専用に作られた単語集ですので、1級に最短合格するには避けては通れない単語集です。
これを使って単語をしっかり覚えましょう。お金がどうだろうと、覚えるのはもう自分でどうにかするしかありません。覚える効率をあげたいなら、『英単語mikanパス単1級』というアプリもかなりおすすめです。600円でダウンロードできます。これを含めても合計5000円を超えることはありません。
②『最短合格 英検1級英作文問題完全制覇』(ジャパンタイムズ)
英作文対策は、英検1級の貴重かつ高品質の教材を多数出版しているジャパンタイムズの商品です。1級英作文対策としては、旺文社のものもありますが、使い勝手や2次試験を見据えた学習がしやすいという点で、このジャパンタイムズ版が優れていると思います。
③無料教材(過去問+YouTube動画)を書籍と組み合わせよう
過去問は先述の通り、無料で手に入ります。最低2回は解きましょう。何度も復習することも大切です。過去問は、解いた時間の何倍もの時間をかけて、とき直すことを当たり前だと思いましょう。答えを覚えてしまっても、まだ解きましょう。そのたびに新たな発見があるはずです。
そして、英検全般の学習としておすすめなのが、YouTubeの動画を使った学習です。もちろん音声があるのでリスニングの対策になるのですが、最近の動画素材は、単にリスニング対策になる以上の、充実した教材になっています。
一番おすすめなのが、TED-Edの動画です(公式サイトはこちら)。この動画は科学・文学・歴史・政治・経済・数学など現代社会をとりまくあらゆるテーマを5分程度のアニメーション動画にまとめてくれています。
この動画のおすすめの点は、動画のジャンルが非常に幅広いことと、考えを深めながら学習しやすいように公式ページで様々なトピックやディスカッションが用意されている点です。
英検のライティングやスピーキングに必要な背景知識を楽しく身につけることができます。そして、この動画サービスは、すべて無料です。過去問と並んで、これを利用しない手はないと思います。英検のために作られたのではないかと思ってしまうぐらい英検向きの教材だと思います。

まとめ――英検を取り巻く環境に感謝
今回紹介したやり方は、実際に私が実践したやり方にかなり近いものです。
英検のありがたい点は、無料で学習しやすい環境が整っているという点にあります。もちろん最低限の投資は必要なのですが、それらをうまく活用することが、いろいろな教材を買いまくるよりもずっと大切です。
他に教材をお金を出して購入したとしても、大きな効果がある書籍は今のところないように感じます。定番教材をいかにうまく使うかが大切なわけです。
語学は工夫次第です。特に今のようにネットがある時代は無料でもかなり高品質の学習素材があります。うまくそれらを利用しつつ、自分の学習スタイルを確立していくことも、1級を取るぐらいの語学人間なら必須のことだと思います。
[…] 英検1級用の教材は、他の級に比べて数が非常に限られます。そのなかで以前は、5000円でできるだけ楽しく合格する方法や、YouTube動画を使って楽しく背景知識を身につける方法を紹介しました。 […]