英検

2018年第2回英検準1級レビュー――解答のポイントと対策を考えよう

10月7日(日)に行われた2018年第2回英検準1級について、詳細をレビューしたいと思います。解答のポイント、学習するときの心得を考えていきましょう。試験問題は公式サイトで公開されています。

語彙問題(単語)――基準は8000語

英検準1級には、英検の代名詞とも言える語彙問題25題出題されます。形式は短文の空欄に入る適切な語彙を4つの選択肢から選ぶという形です。

単語の語彙を訊く問題は21題で、選択肢には合計84単語が登場することになります。

今回の英検試験で登場した単語の難易度を考えるため、選択肢の単語すべてをアルクのSVLで参照しました。

SVLというのはアルクが作成している段階別学習語彙リストで、レベル1から12まで、各レベル1000語ずつ、合計で12000語の学習語彙を網羅したリストです。SVLレベル1は基本の1000語、SVLレベル2はその次の1000語となっています。

単語の分布は次のようになりました。

レベル 総語数 うち正答数 単語(下線は正答の単語)
SVL3 1語 0語 twist
SVL4 14語 2語 fasten, pioneer, primitive, digest, inspire, smash, briefly, misery, fundamental, accord, estate, vain, drift, tame
SVL5 11語 2語 objective, consent, doubtful, cautious, irony, abundance, stubborn, damp, pierce, awkward, despise
SVL6 12語 3語 attentive, applaud, successor, thrust, plentiful, gasp, curse, penetrate, authorize, inclination, ascent, unfold
SVL7 14語 2語 gratify, embark, dictate, projection, petition, reluctance, dose, riot, creek, witty, comprise, revelation, confer, incidence
SVL8 13語 10語 misleading, defective, recede, pending, unconditional, notably, bribery, habitat, endorse, stroll, uplift, enlist, allegation
SVL9 6語 1語 sanction, deceptive, generic, crave, sanctuary, tasteless,
SVL10 3語 0語 venue, predator, eject
SVL11 1語 0語 sprint
SVL12 1語 0語 smudge
SVL外 8語 2語 occupancy, innovator, bystander, unfaithful, artistry, inconsiderate, blockade, blissful

この表を見て、注目すべきは次の3点です。

  • 基準はSVL8(8000語レベル)
  • 正答になっている語彙はSVL8の単語が半分を占める
  • SVL外の単語は8語だが、派生語から意味はほとんど類推できる

英検の語彙問題は、選択肢の4語はまったく違う語彙なので、4つの選択肢のうち3語を知っていたら正答できます。3つとも正答ではなさそうな場合は、残りの1つが正答になるわけです。そう考えると、全体84語のうち4分の3に当たる、63語を知っていると合格点に達するのは難しくないと思います。

単語の分布を見ると、SVL8(8000語レベル)の語彙がこのラインになります。また、正答になっている単語の10語(21問中)、実に半分近くがこのレベルの単語になっています。今回の結果を分析すると、8000語レベルの語彙まで知っていることが、英検準1級合格に必須になってくるところだと思います

英検2級の語彙問題の合格基準ラインはSVL4(4000語レベル)でした。そう考えると、準1級の合格には、2級までに必要な語彙の、2倍の単語を知っておく必要があるというわけです。

もう一つ忘れてはならないのは、準1級ともなると、SVL10以上の単語やSVL外の単語も登場するということです。これらの語彙は通常1級レベルと分類されるようなものです。ただし、SVL10~12の難単語は計4語で、いずれも正答にはなっていません。

SVL外で正答になっている、bystander, inconsiderateという語は、stand by (~の味方でをする), considerate(思いやりのある)を知っていたら容易に意味が想像できるものです。

以下の語彙は、知らない人が多かったであろう単語です。

venue, eject, sprint, smudge, artistry

これらのレベルの語彙を知っていることは、準1級レベルでは必須ではありません。(1級では知っておかないといけない単語です。)

解答番号(2)の問題は、misleading(誤解を生じさせる)が正答ですが、defective(欠陥のある)と迷った方もいるかもしれません。主語がthe ratesであることを考えて、次の文意を考えると、misleadingのほうがしっくりきます。

語彙問題(熟語)――核となる動詞をおさえる

熟語を尋ねてくる問題は25問の語彙問題中、最後の4問です。登場した熟語は次の通りでした、

解答番号(22)
act on (~に基づいて行動する) ※正答
fix up(~を取り付ける;取り決める)
throw off(急いで脱ぐ)
clean out(きれいに掃除する)

解答番号(23)
grow on(だんだん気に入られるようになる)
hold off(~を近寄らせない;阻止する)
give away(秘密などを明かす) ※正答
fall for(~に惚れ込む)

解答番号(24)
lift off(地面から飛び立つ)
rule out(除外する)
come before(~に先立つ) ※正答
hold over(延期する)

解答番号(25)
roll up(どかどかやってくる)
stay off(入っていくことを慎む)
miss out(省略する)
set aside(脇に置く;取っておく)※正答

熟語は数は無数にあるので、対策がなかなか難しいところだと思います。選択肢に入っている熟語の中には1級で過去に出題されているものもあります。地道に単語集や、長文の中ででてきた熟語を覚えていくことが大切です

英検の場合は、過去問で出た同じ熟語が出てくることも多いので、準1級・1級の過去問にできるだけ当たっておくのも必要です。

単語の語彙問題は、準1級と1級では大きなレベルの差があるのですが、熟語ではその差が少ないような印象を受けます。口語的表現にも頻出する熟語は、なかなか難易度というものを設定しにくいのではないでしょうか。

解答番号(22)と(24)は文脈からなんとなく正答を選ぶことは難しくないと思います。一方で、熟語問題を全問正解するという人もなかなかいないのではないでしょうか。

読解問題――パラグラフ1問が基本

読解問題は、2級以上は同じような構成です。大問2は長文2つで、形式は長文の空欄補充です。大問3は長文3つで形式は長文の内容一致問題です。いずれも選択肢は4つです。

大問2―A Airplanes and Germs(飛行機と細菌)
飛行機の内部で細菌の広がりをどのように抑えるかという内容。難易度は易しめ。本文が読めていたら選択肢には迷う要素はほとんどありません。

大問2―B Young People and Sports(若者とスポーツ)
特定のスポーツに若いうちから専念することに対する弊害を述べた文章。難易度は易しめ。文章全体のテーマが掴めていたら、選択肢に迷う要素はなし。

大問3-A Medical Voluntourism(有志による医療サービス提供旅行)
途上国へと旅をしてボランティアとして医療を提供する医者のあり方について。難易度は普通。そのような医療のあり方については、批判もあるけど、適切な課程を踏むと効果的であるという論旨を読み取ることができたら難しくありません。すこし話が行ったり来たりする文章な印象ですが、準1級以上の英文ではよくあることです。

大問3-B Pollution in Portland(ポートランドにおける汚染)
汚染物質とその発見方法、そして汚染物質を排出している工場の反応についての文章。難易度は普通。大一段落はコケ植物をつかった汚染物質の検出方法について。その後話は環境団体と企業の話になっていく。科学の話題から始まり、法律などの話も入りつつ、最終的には社会の話になっていく、とっても英検らしい文章ではないでしょうか。2つの工場の顛末について最後は述べられますが、オチがちょっとぼやけた文章という印象を受けます。3つめの問いは最後の文についての問いです。narrow down, arsenic, furnaceといった語彙は難易度高いですが、解答に直接の影響はありません。

大問3―C The Marielitos(マリエルからの難民)
キューバからアメリカへの難民についての話。難民がアメリカ社会に与えた影響について、一般的な認識と、2人の専門家の分析を踏まえて考察しています。難易度は普通。結論から言うと、難民の影響について、確固とした結論を導き出すのは難しいということ。最終問題は最後の段落の内容についてであって、文章全体に関する問題ではありません。準1級ではすべての問題が、1つの段落についての問題として独立しています。難しそうな語彙をあげるなら、embassy, unrest, inmate, psychiatricなどですが、準1級レベルの学習者なら知っていてもいいレベルです。

ライティング――まずは基本文法を自由に使いこなせること

テーマは「歴史的景観を守るために、日本はより多くのことをなすべきか」というもの。

準1級のライティングでは、理由を書く際にポイントとなる点がすでに与えられています。4つのポイントのうちから、2つを理由として用いなければいけません

与えられたポイントは、Cost, Development, Education, Tourismの4点でした。準1級の場合は、序論・理由①・理由②・結論という風に、段落を分けて書く必要があるので、一つのポイントで1段落をつくることになります。理由を述べる1段落の長さは40-50語ぐらいになるでしょう。2~4文ぐらいで、一つの段落を作る感じです。

たとえば、Educationというポイントを用いて肯定派の理由を組み立てるなら、次のようになります。

「歴史的遺産を保存することは、教育においても有用だ。」

→「歴史を学ぶとき、本物の遺産に触れることができる。」

→「教科書を読むだけでなく、実物に触れる学習の機会が与えられる」

→「学生は歴史への興味が深まる」

字数に余裕があるなら、原爆に関する場所を保存することで、実際にその恐ろしさに触れることができ、より深い学習ができるなどの具体例があってもいいでしょう。原爆に関する場所を保存していなかったら、オバマ大統領が広島を訪れたこともあれほど大きな出来事にはならなかったはず、といった例を挙げてもいいでしょう。

いずれにせよ、英作文の問題としては、難易度は標準的です。高校で習う基本的な文法事項はほとんど考えずとも使えるようになっていたら、解答を作成するのはそれほど難しいことはありません。

準1級の英作文は、英語がある程度自由に「使える」かどうかを判断するためには格好の材料です。ぜひ練習して、どのような題材でも一通りの解答をまとめることができるように練習しましょう。

まとめ――準1級=英語できる人

見たとおり、英検の準1級は、2級のおよそ2倍の語彙力が必要です。高校生で取得できたらほとんどの大学入試の英語は軽々と合格点を取ることができるでしょう。

現状、日本では、ほとんどの英語学習者は準1級レベルに到達することなく英語学習自体をやめてしまいます。これは本当に残念なことだともいます。もっと多くの高校生・大学生・社会人がこのレベルの英語資格の取得をめざすようになると、日本人の英語力も大きく変わるはずです。

準1級の先には1級しかありません。そして、英検準1級リーディングは1級と問題構成・回答数など全く同じです。1級は同じ形式のなかでさらに洗練された、高レベルの問題が出題されるわけです。

1級と姿を同じとするためか、準1級の問題には、2級までと違い、明らかに問題冊子から風格のようなものがただよってきます。上級レベルから吹いてくる風を感じつつ、確実に語彙を身につけて、その壁を乗り越えていくと、残すは最後の難関1級のみです。

そうやってどこまでも終わらずに英語の学習に向かい合う苦しみと喜びをもっと多くの人と分かち合いたいものです。

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