単語の覚え方をどうするか。どの単語集を選ぶか。いろいろな英単語の覚え方をぼくも試してみて、いろいろな失敗をしてきました。今回は、自分が失敗した経験について紹介したいと思います。
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中学生の頃
中学生の頃、2年生の終わり頃だったと思いますが、人生ではじめて英単語集を買いました。学研の『例文で覚える中学英単語・英熟語』という本です。この本は表紙は変わっていますが、いまもありますね。
1つの例文に単語や熟語が複数埋め込まれているという形の単語集ですので、構成は『DUO』の中学生版、とでもいったところでしょうか。なにせはじめて単語集を買ったもので、使い方もあまりわからず、とりあえず、例文を覚えるようにしました。毎日ノートに書いて1日5文ぐらい覚えるようにしていました。
中学の英語の先生は、とにかく教科書の文を覚えてしまえ、というスタンスだっため、当時から文を覚える=英語の学習だという認識がありました。文を覚えてしまうと、単語や文法事項の使い方がそれだけで頭に入りますし、冠詞とかも丸暗記を重ねるとなんとなく中学レベルでも感じが掴めるものだったので、この学習法は悪くなかったと思いますし、高校に進んでも、文章を覚えるまで頭に入れるというのは基本的な考え方になりました。
そういうわけで、『例文で覚える中学英単語・熟語』も毎日ノートに例文を書いて、その日の文と、前日の文を復習するという学習をしていました。単語集のレベルは高校入門レベルぐらいはあったので、例文を丸暗記することでそのレベルの単語の使い方まで徹底的に頭にたたき込んだのは、その後の学習でもとても力になりました。
当時は音読などはあまりせず、ひたすらノートに文を書いていました。もう、とにかく書きました。ノートの左側に日本語を書いて、右側に英語を書いたり。英語だけ何回も別の紙に書いたり。
書いて、書いて、書いて覚えました。今もし過去の自分にアドバイスをするとしたら、スピーキング対策として、もっと瞬間英作文を意識して口頭で英語をアウトプットしながら例文を覚えていくといいと言ってあげますね。ただやっていること自体は中学生としては立派な学習をしていると褒めてあげます。
『キクタン』でミミタコ
中3の途中から高2までは、ぼくにとっては『キクタン』の時代でした。当時販売されていた黄色の『Basic』から『Advanced』まで3巻すべてを2年半ほどかけてやりました。
学習法も自分の中で確立されていなかったので、いろんなやり方を試し、今から考えると結構時間をかけて覚えていきました。逆に言うと、あまり効率のよい学習ができていなかったともいえるかもしれません。
『キクタン』は一日16単語を覚えるようにレイアウトされているのですが、律儀にそれに従って1日に16単語、学習していきました。
『キクタン』は、CDをとにかく聴きましたね。CDデッキを机において、1日分を毎日10回ぐらいは聴いていました。
前日の分も聴いて、前々日の分も聴いて、最後に1回翌日の分も聴いて…という感じで、とにかく聞いてました。もちろん、聴きながら一緒に音読もしていました。『キクタン』の特徴は、訳語数・コロケーション・例文が充実していることです。
それらに聴きながら目を通していました。
- 1回目 英語見ながらキク
- 2回目 英語と日本語を見てキク
- 3回目 もう一回英語と日本語を見ながらキク
- 4回目 ついでにもう一回英語と日本語を見ながらキク
- 5回目 念には念を入れてもう一回ぐらい見出し語を見ながらキク
- 6回目 右側のコロケーションの1つめを見ながらキク
- 7回目 コロケーションの2つめを見ながらキク
- 8回目 例文を見ながらキク
- 9回目 例文は長いし、もう一回ぐらい例文を見ながらキク
- 10回目 最後にその単語への愛を感じつつ、自分のそれまでの人生に反省しながらもう1度キク
こんな感じで、とにかく『キクタン』の「キク」を最大限に活用していました。今、そのときの自分にアドバイスをするとしたら、いくらなんでも同じ単語を一日に10回も聴かず、もっと分散させて、長い期間をかけて何度も聞くようにしなさいや、とでも言うでしょう。
そして1日で全部覚えようとせず、1回で全部覚えるのは無理だと割り切って、何周かする中で覚えていくようにと言いたいですね。それでも、リズムに乗って聴きながら、ひたすら発音していた日々は、ぼくにとって、語彙学習の原風景で、恥ずかしくも懐かしい取り組みです。
背表紙では、「1日2分 3ヶ月で重要単語をマスター」と謳われていますが、使い始めて3日もすれば、「1日2分」で単語覚えるわけないやんという事実に気づきました。当時はまだそんなことも知らなかったわけです。
『シス単』は受験生を救う?
受験の定番、『シス単』は、高校の副教材として使っていました。高2で毎時間4章まで小テストがあり、高3で2周目の小テストがありました。
単語学習の友は中学時代からの『キクタン』だったので、『シス単』はほとんど小テスト前の休み時間に見て、小テストはとりあえず満点を目指すという感じで学習していました。家での『キクタン』の学習が大分進んでいたので、学校で使う『シス単』に出てくる単語で知らない単語はほとんどありませんでした。
そのため、学校の休み時間以外で、『シス単』は正直あまり真面目に学習はしませんでした。いまでもよく高校生が電車の中で使っているのを見かけますが、あんまり懐かしい気持ちや愛着のある感じがわかないのは、そういったこともあるのかもしれません。
受験特化の感が強い『シス単』は、当時からあまり好みの単語集ではなかったのですが、やはりいい単語集ではあると思います。ぼくは『シス単』に感謝しているところもあります。
大学入試の時、センター試験が終わった後、大学の2次試験までの1ヶ月半ぐらいの間で、それまであまりちゃんと学習していなかった『シス単』の後半の章を、はじめてしっかり学習しました。すると、入試本番で、それらの単語が結構出てきたのです。
『キクタンSuper』のほうがレベルの高い語彙を含んでいましたが、その学習だけではカバーできていなかった受験によく出る語彙を振り返っていたのは大学入試のためにはとても大きかったと思います。
ということで、大学合格後、『シス単』ありがとう、やっぱあんたはすごいよ、とそれまでの自分の有名単語集への失礼な態度を反省したものでした。
英語暗黒時代
大学入学後はほかの外国語に手を出しまくって、英語学習を完全におろそかにしていたので、ペーパーバックなどはたまに読んでいましたが、あまりちゃんと英語を学習することがなくなってしまいました。
従来の恋人である英語から、ほかの言語へと浮気を繰り返していた日々でした。思い立ったように『キクタンSuper』を復習したりすることはありましたが、細々と散発的に学習するだけで、全体としては英語にって暗黒の時代となったわけです。
(一方で、ドイツ語、フランス語、ラテン語、ギリシア語など、ほかの言語はむさぼるように勉強しました。英語の学習は停滞しましたが、この期間は語学の世界を大きく開かせてくれた、とても大事な準備期間だったといまでは思っています。)
ただ、英語の学習をほとんど完全にやめてしまったことは、やっぱり後悔していますね。少なくともこの時期に英検やTOEFLなどの試験を受けようと思い立っていれば…と思います。この頃の自分にアドバイスをするとしたら、ほかの言語もいいけど、語学ができるっていう人間になりたいなら英検1級ぐらいまずとってみなさいや、と言うでしょうね。
英語ルネサンスは未だ来ず
学生時代は、ふと思い立ったように(英検を受けるともなく)『パス単準1級』を買って勉強したりすることはありましたが、長続きしない散発的な学習が続きました。
そんな中、あるきっかけで、英検1級をとってみたいと思うことがありました。でもこれは、とろうと思ったというより、とれたらいいなぐらいの中途半端な決意で、なかなか学習へと結びつきませんでした。
何事でもそうですが、「できたらいいな」から「実際にやろう」の間は結構大きいものです。「やろう」と決意して、それなりに取り組み出すと、案外上から見る山は、下から見上げる山よりも低かったりするのですが、その決意までいくのが難しいのです。
英検1級とれたらいいな、とか、英検自体一回も受けたこともなく、どんな試験かも知らずに思っていたのです。
当時のぼくは、1級ともなると、英語のことはなんでも知っていないといけないし、洋書は何でも読めて、映画は字幕なしで観ることができて、外国人ともジョークを飛ばしまくりながら世の中のあらゆる問題について語り合うことができるぐらいのレベルだと勝手に想像していました。「何でも知っていないといけない」なんて思ってる時点で、なんともレベルの低い発想だったなと今では思いますね。
どんな試験でもそうですが、受けるとなると、まずその問題をやってみることをおすすめします。特に語学の試験においては、問題をやってから目標を立てるというのが、どう考えても学習の方針が立てやすいですし、当然のことだと思います。まあ当時のぼくは、そんなこともしなかった訳です。
と言うわけで、英語のことを「何でも知ってやろう」と夢を見て買った本が、達人、植田一三さんの『英検1級 英単語大特訓』という恐ろしい本でした。
植田一三氏の書籍は、先生自身があまりに超人的な方であるため、凡人が簡単に使いこなせるようなレイアウトになっていないという点です。
この本は、おそらく書店に並んでいる「単語本」の中では、最も難しい単語を収録した本で、似た意味の単語をマニアックといえるレベルのものまで難易度順に表にして並べているというのが特徴です。
1単語1単語に訳語や発音記号もついておらず、一部の語にコロケーションと類語とのニュアンスの違いの解説が付されています。さらに一部の語は、「驚異のスーパー語彙力加速的UP例文」という、ほとんど変態チックな名前の例文の中に埋め込まれています。
この例文、名前負けすることなく、中身も十分、変態レベルの内容になっています。例えば、こんな感じです。
A ravishing blonde with an engaging personality and a seductive voice offered tempting food and exquisite wine with a tantalizing smell.
(魅力的な人柄と色っぽい声を持つ非常に美しい金髪の美女は、食欲をかき立てる匂いのするおいしそうな食事と極上のワインを出した。)
出典:『英検1級英単語大特訓』植田一三著 ペレ出版
難単語を入るだけぶち込んだという感じの例文で、凡人にはちょっとしためまいを覚えてしまうような例文だと思います。
ちなみにwordでこの文を売っていたら、《修飾語の連続》(!)という注意がWordから出てきました。マイクロソフト社の文書入力ソフトもいかがわしいと思うくらいの例文を平気で提供しているわけです。
この本は、言うならば、「さあ、単語は思いつく限り載せておいた。あとは好きに料理しな」と言われているような本です。当時のぼくはこれをどう料理しようとしたかというと、リストに載っているすべての単語を辞書で調べて、ノートに意味と発音記号を書いていくというものでした。
このやりかた、やり方自体、的外れなものではないと思うのですが、どう考えても、時間がかかりすぎるのです。1課分を調べるだけでも1時間はかかりますし、覚えるのはそれとは別の作業です。
超人レベルについていこうとしたのですが、所詮、ぼくは、凡人でした。というわけで、その学習も長続きすることなく、形容詞編をすべて終えたぐらいで、永久に頓挫してしまいました。
この本は、内容は本当に素晴らしいのですが、素晴らしすぎて、なかなか使いこなせないというのはこういうためです。英検1級を取得したいまでも、この本は倒すべき強敵としてぼくの本棚に静かに開かれる時を待っています。
たまに取り出してぱらぱらめくるのですが、やはり手強いな~という印象をいつも持って、そっと元の場所に戻します。超人レベルに達するには、超人的な努力が必要だと教えてくれる本として、これ以上のものはないのではないでしょうか。
ただ、当時のぼくの学習は、そんな本との出会いがあったにもかかわらず、結局は挫折し、やはり暗黒時代から抜け出すことはなかったのです。
英語ルネサンスは『パス単』とともに
学生時代は終わり、働き始めてからも、英語の学習は停滞していました。そんななか、職場で英語試験の助成制度があることが分かり、英検の準1級を受験することにしました。
これもほとんど思いつきで決めた受験でした。準1級なら今の実力で大丈夫だろうと、特に対策をすることもなく、試験に臨みました。そのとき、試験本番で、はじめて英検の問題というものを目の当たりにした訳です。
本当に遅ばせながら、英検の問題の、非常にバランスよく配分され、レベルがコントロールされた問題の素晴らしさにその時はじめて気づいたわけです。1級をとろうと本当の意味で決意したのはそのときでした。筆記試験の翌日、本屋にいって、1級用の『パス単』を買って勉強を始めました。
『パス単』を勉強しだして最初に気づいたのは、その学習のしやすさです。それまで全単語辞書を引いてノートに書いていた学習があほらしく思えるぐらい、すらすら覚えていくことができます。
(決して、辞書から単語集を自作することを否定しているわけではありません。実際、英語以外の外国語学習ともなると、辞書を語彙学習に使うのはほとんどあたりまえのことでもあります。)
『パス単』のもう一つ優れている点は、『英単語mikan』という非常に優れたフラッシュカードアプリがサポートしている点です。覚えてない語やうろ覚えの語だけを繰り返しだしてくると言うスタイルは、「Anki」アプリが有名ですが、そういった学習ができるアプリで、単語学習の効率を格段に上げてくれます。『パス単』の学習は、次のように行っていきました。
- 通勤退勤の電車の中でひたすら読む。
- 通勤退勤の電車の中で、ひたすらアプリ版をやる。
- 家では1日200語は発音する。
- 1日100語はスペルを書いてみる。
- 暇なときはとにかくパラパラ見るかアプリをやる。
とても単語学習としてはオーソドックスなやり方に戻った気がしますが、そのやりかたで、毎日100語を覚えることを自分に課して、1ヶ月で『パス単1級』をすべて覚えきりました。
『パス単』をやるまえは、Weblioの「英検1級語彙力診断」では「合格多難」と出ることが多かったのですが、『パス単』を終えてからは「合格安全圏」が毎回出るようになり、1級の語彙問題を解いても20/25問は正解できるようになっていました。
合格ラインは見えてきましたが、まだ万全ではないと思ったので、1級用の単語集として、『パス単』の次によく使われている『究極の英単語vol 4 超上級の3000語』をやることにしました。
この単語集は、『パス単』より収録語が多く、『パス単』にはあまり収録されていない日常語も多く収録されているので、より取りこぼしを減らせるようになったと思います。
『究極の英単語』をやることで、洋書もさらに楽しめるようになりましたし、映画を英語字幕で見ても、より楽しめることに気づきました。まだまだ、知らない単語を覚えると世界は面白くなるのだなと気づけたという点で、この単語集はありがたい存在でした。
ただ、この『究極の英単語』シリーズには、類義語対義語などの関連語は収録されていないので、特に類義語については、自分でネットの類語辞典で一単語一単語引いて書き込みました。
時間はかかりますが、その分単語を見る頻度も増えますし、結果的に覚える時間を短縮できたと思います。こういった、一見遠回りに見えるような工夫も、単語学習には不可欠だと思います。
『究極の英単語』も覚え方は、『パス単』と同様でしたが、書籍ベースで地道に覚えていきました。アルクが出しているアプリ版(有料)は、単語だけまとめて発音してくれる「まとめて聴く」機能が便利だったので活用しました。
アプリ版には別で語彙力確認テストなどもあるので、復習にも便利かもしれません。ただ、『パス単』の「mikan」アプリのように学習を高速化してくれるような機能ではないので、ぼくはほとんど使いませんでした。
そうやって市販の王道単語集をしっかり学習することで、初受験の英検1級では語彙問題23/25問正解することができ、無事に合格できました。
まとめ――語彙学習だって失敗の連続
いろいろ遠回りをしなかったら、もっと早く英検1級も取得できたとは思いますが、失敗もうまくいかない経験もやはり語学では大事だと思うので、いまは自分がやってきたことに概ね満足しています。
おそらく語学ができる人は、多かれ少なかれ、なんらかの失敗、ともすれば、大失敗を重ねてきた人だと思います。そしてそれを克服するための努力をしてきた人だと思います。
特に留学や語学学校に頼らず独学で学習してきた人は、ほとんど、失敗の経験値が普通の人より高いはずです。
この経験値は、努力しようとした人しか得られない貴重なものです。そういう方に話を聞くなら、「どうやったら英語ができるようになりますか」と聞くのもいいですが、「今までどんな失敗がありましたか」と尋ねてみるのもいいかもしれません。
そんな失敗の話でした。
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