英語学習

単語を覚えられないと嘆くなかれ――人は、そもそも、単語を「覚える」ことなど…

英語に限らす、すべての語学にとって最も大切な学習が、語彙学習です。つまり、単語や熟語を覚えるという活動のことです。文法をある程度習得した後の語学は、もっぱら語彙を増やすことだとも言えるかもしれません。中級以上の学習者にとって、英語力=語彙力というところも結構あります。

ということもあって、語彙力は大切です。そしてそういうわけで、単語を覚えることが、語学の最大の喜びであると同時に、最大の苦しみでもあるのです

とくに、外国語学習の悩みの代表的なものは、いつだって「単語が覚えられない」というものであったりします。全然あたまに残らない、であったり、覚えてもすぐ忘れてしまう、という悩みは誰だって多少は抱いたことがあると思います。

では、単語を「覚える」ということはどういうことでしょうか。

単語を覚えることが苦しいなら、ぼくは、こう考えを変えたらいいのではないかと思います。

そもそも人は、単語を「覚える」ことなんてできない、と。

単語を「覚えている人」は、かろうじて単語をその時点でまだ忘れていない人、と考えるのです。

人間は、見たり聞いたりしたほとんどのことを忘れます。昨日の晩ご飯も思い出せなかったり、朝見たその日の運勢が、何位だったかも思い出せなかったり、今朝乗った電車の色も思い出せなかったり…

ほとんどのことは忘れる、と考えると、英単語も忘れて当たり前です。忘れて当たり前だけど、忘れたときにまた見て、ちょっとだけ思い出すことをしてみましょう。「覚えよう」としないことです。覚えられないのだから。

それでも見る。覚えられなくても、見る。次の日にまた見る。また次の日に見る。何日かたってまた見る。そうしたら、どういうわけか、頭の中に残って、意味が分かる単語がちょっとだけあるはずです。

でも「覚えて」はいない。かろうじて次見たときにはまだ完全に忘れてなかっただけ、という単語があるはずです。

そうやって、また見る。次の日も見る。何日かたってから、また見る。何週間かたってから、また見る。何ヶ月かたってから、また見る。何年かたってから、また見る…。

忘れるのは、人間、当たり前です。だから、忘れていいので、忘れたらまた見ましょう忘れる頃にまた見ましょう。数分後に忘れているなら数分後に見たらいいし、数時間後なら、数時間後、数日後なら数日後、数週間なら、数週間後。

忘れたときに、よし、忘れてるな、ぐらいの感覚で当たり前のこととして受け止めて、またもう一度単語を見てやりましょう。そうするうちに、忘れるまでの時間は少しずつ、少しずつ長くなっていきます。

そうやって、少しずつ単語を見る「回数」を増やしてやると、完全に「忘れる」までの時間が少しずつ、気づかないうちに長くなっています。

単語を覚えることが苦しいなら、そう考えたらいいのだと思います。

「2週間で2000単語を覚えた」などと言っている人がいたら、多分嘘です。テスト前に200単語一夜漬けで覚えたなんて言う人は、実際には覚えていません。たぶん、一夜漬けの記憶なんて、2日もたてば、ほぼ忘れています。だから、短期間でたくさん覚えた、などという言葉をあんまり真に受けなくていいと思います。

永久に何かを覚えることなんてない、あるのは、かろうじて忘れるまでを長くすることだけだ、と考えるのです。人間は、忘れるのです。忘れるから、死は悲しいし、初恋は切ないのです。

単語学習の最大の喜びと苦しみは、「忘れた」と「忘れてない」を行き来することの中にあるのではないかと思います。だから、語学が得意な人は、忘れることすら好ましいこととして受け入れます。

それだから、英語を読んだり、聞いたりしているときに、「忘れてない」単語に出会うことがどれだけ喜ばしいことかも、その道を究めた人は十分知っているだと思います。

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