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【LEAP・学研英単語2300・新ユメタン】最新英単語帳徹底レビュー 斬新な内容を語り尽くそう

以前、「定番英単語徹底レビュー」ということで、キクタン・パス単・シス単などについて記事を書きました。今回は、比較的最近出た英単語集でおもしろいコンセプトだと思うものを紹介します。こんな人は、この単語集を、こう使おうということを書いていくので、参考にしてもらったら幸いです。

Contents

『新ユメタン』――1日100語だから、夢は叶う

『ユメタン』は灘校キムタツ先生が作っている単語集です。「夢を叶える英単語」で、「ユメタン」です。

『ユメタン』
①      日本語定義
②      発音記号
③      類義語・対義語
④      派生語
⑤      例文
⑥      音声
⑦      コロケーション
⑧      語源 ×
⑨      その他解説 ×
⑩      英語定義 ×

バリエーションは中学レベルの0から難関大レベルの3まで、全4巻です。

収録内容は結構シンプルで、単語、フレーズ、例文が、左側・英語、右側・日本語という組み合わせで掲載されています。類義語や派生語などの関連語の情報は最低限で、時折、反意語は?みたいな問題が左に載っていて、右に答えが載っています。

音声CDは、日本語が流れて一瞬の間を置いて英語が流れるようになっています。クイックレスポンスの練習になるように、間は短くなっています。曰く、「0.3秒の壁」を超えるための工夫だそうです。

紙面の掲載内容は割とシンプルでありきたりではあるのですが、この単語集を魅力的にしている点は、キムタツ先生のコーチングのもと、100語を1週間かけて毎日繰り返し学ぶことで、最終的にはその語彙が使えるレベルまでもていくように工夫されているところです。

1回につき100語学ぶようにレイアウトされた英単語集はほとんど見かけません。(植田一三先生の本を除いて…。)高校生からしたら100語を毎日見るのはしんどいかもしれませんが、そんなこともないように配置されています。7日かけて次のように学習していくように指示されています。

Day 1 : 単語の実力チェック(単語インプット)

Day 2:単語を書いて覚えよう!(単語アウトプット)

Day 3:単語のクイックレスポンス(単語口頭アウトプット)

Day 4:フレーズの実力チェック(フレーズインプット)

Day 5:フレーズを書いて覚えよう(フレーズアウトプット)

Day 6:フレーズのクイックレスポンス(フレーズ口頭アウトプット)

Day 7:単語とフレーズの最終チェック

各ユニットの終わりには、単語復習問題とフレーズ復習問題が掲載されていて、学習しやすいです。また復習問題は見出し語から単語の順番をシャッフルしています。順番に出てくるから分かってしまうと言う語彙学習にありがちな問題を回避しているあたり、仕事が丁寧だと思います。

レベルも全4巻と充実していて、このスタイルが合う人は、ずっと付き合える単語集になるでしょう。各ユニットの終わりには、復習問題に加えて、高校の先生が単語の覚え方についてコラムを寄せてくれています。モチベーションを上げたり学習法を工夫するのに役立つ内容です。

こういったこともあり、『ユメタン』は徹底反復という語彙学習の必須条件を最初から使い方に盛り込んだおもしろい単語集です。今使っている単語集でマンネリ化している時にはおもしろいかもしれません。

 

『学研 入試英単語2300』――かわいい顔してマッチョなやつ

「学研英単語2300」は、2016年に出版された単語集で、かわいらしいイラストとしっかりした内容が相まって、人気を博しています。

『学研 入試英単語2300』(名詞パート除く)
①      日本語定義
②      発音記号
③      類義語・対義語
④      派生語
⑤      例文
⑥      音声
⑦      コロケーション
⑧      語源
⑨      その他解説
⑩      英語定義 ×

バリエーションは熟語版や中学版・英検版など様々出ていますが、内容の充実度は通常版の「2300」が抜きん出ています。通常版は、収録語も充実していて、英検準1級に出てきそうな語もかなり収録されています。

この単語集を覚えていたらセンター試験で知らない単語にであうこともほぼないでしょうし、ほとんどの大学入試には対応できると思います。

音声や復習問題が無料アプリから出ています。学習もしやすくなっています。

この単語集の最大の特徴は、なにより、内容の充実度だと思います。takeやmakeなどの基本語は、各1ページにわたって、詳しいニュアンスの解説や使い方の解説、豊富な例文やイラストが与えられています。基本的な前置詞・副詞(out, awayなど)にも、それぞれ1ページを使って、イラストや例文でイメージを掴めるようになっています。入試向けの普通の単語集にはあまり掲載されていない情報だと思います。

品詞別に章立てされているのですが、各章は意味のまとまりごとに語をグループ分けしています。類義語を押さえつつ、似た意味の単語を区別できるような配列です。

例えば、「頼る・助言を求める」という項には、depend, resort, consult, inquire, oweという語がまとめられており、それぞれ意味を区別できるような解説がついています。

各単語の内容も充実していて、名詞を除くすべての語に例文と2つのコロケーションがついています。頻度順に一番多い意味には例文、その次の意味にはコロケーションという意味で、タイトルは「ランク順」となっているわけです。

この単語集の一番おすすめな点は、各単語に付されている説明が充実している点です。最近の単語集には各単語について「ひとことコメント」みたいなものをつけて無味乾燥なリスト感を薄くしているものも結構あるようですが、この単語集のコメントは、秀逸です。

まず、ラテン語由来のすべての動詞には語源が説明されています。それに加えて、より詳しい語義説明や、結びつきやすい語、類義語、類語とのニュアンスの違いなど、かゆいところに手が届く情報がいっぱいです。形容詞編では、類義語対義語の記述が中心です。

語源の説明は淡泊なところもあるにはありますが、そんなときは自分で語源辞典から補えば十分でしょう。いずれにせよ、従来の単語集ではあまりなかった意味で、英語について目を開かせてくれる説明がいっぱいだと思います。

この単語集はその内容の充実感から、私が今思うベストの単語集の一つなのですが、1つだけ大きな欠点があるとすれば、名詞の章では例文などが原則収録されていない点です。

名詞の章には、はじめに基本語や多義語について、動詞や前置詞同様、詳しめの解説と例文で説明したページがあって、そのあとイラスト辞典のようなページで現代英語の重要語を一通り掲載しています。そしてその後にはひたすら、日本語と英語だけが載ったリストが永遠つづくだけです。他の章のように一言解説などの情報はありません。残念。

名詞の分は、他の単語集で補うとしても、この単語集はおすすめです。かわいいイラストもなんとも言えません。かわいい顔して、かなり内容はマッチョな単語集です。無料アプリも使い勝手はいいです。

受験生でなくても、大人になって英語をやりなおしたい人にもおすすめできます。ただし、けっこう強めの色と小さめの文字もあるので、全体として若者向けという感じは否めませんが…。

 

『LEAP』――揺るぎない単語の知識をあなたに

出版されたばかりの単語集ですが、英語業界でも圧倒的に大きな話題を占めています。なにせ竹岡先生の単語集ですから。『必携英単語LEAP』です。発売は2018年11月です。

『LEAP』
①      日本語定義
②      発音記号
③      類義語・対義語 ×
④      派生語
⑤      例文
⑥      音声
⑦      コロケーション
⑧      語源
⑨      その他解説
⑩      英語定義 ×

帯には「理想的な英単語集ができました!」と書いてあります。まさに竹岡先生の単語知識と単語哲学が余すことなく、読者に向けて披露されています。

内容は、表紙の通り、わりときっちりしています。例文はほとんどありませんが、すべての語義に短いフレーズがつけられています。フレーズは瞬間英作文しやすいように左右に英語日本語で分けて掲載されています。たまに力の抜けるかわいらしいイラストが付されています。

タイトルの「LEAP」は “Learn English Vocabulary, both Active and Passive”(英語の発信語彙と受容語彙の両方を学ぶ)というところからきているそうです。同時に「飛躍」してほしいという思いもあるそう。

特徴はたくさんあるのですが、大きくは次の4点かなと思っています。

1.CEFR-Jに基づいた難易度表示

2.単語の正しい使い方について充実の解説

3.語源もできるだけ解説

4.英英辞典の語義を元に、単語の正確な意味を掲載

CEFR-Jは、最新のデータを元に作成された語彙頻度を表す基準で、欧州共通言語参照枠であるCEFRに習って単語のレベルを表示したものです。本書ではA1-B2までのレベルの語彙を収録しています。

入試に出るという尺度ではなく、普通のネイティブスピーカーが普通に使う頻度を考えるのに役に立つでしょう。画期的な点は、全体の語彙をActive Vocabulary(発信語彙)とPassive Vocabulary(受容語彙)の2つに分けた点です。

前者はスピーキングやライティングで、確かに使えるように、用法や誤りやすい点をしっかり指摘しています。後者は使えずとも意味が分かればいいという単語です。ある程度言語が使えるようになるには、どの単語をどの程度使えるようになるべきかということを示したという点で、この単語集は斬新な1冊になっています。

基本的にはCEFR-JのAレベルが発信語彙でBレベルが受容語彙になっていますが、Bレベルでも頻度が高くかつ、より簡単な語での言い換えがないような語についてはBレベルでも発信語彙の方に分類されています。本当に英語が「使える」ようになるという目標を立てやすい内容だと思います。

語源も単に単語を分解しただけの解説ではなく、背景にもう一歩踏み込んだり、同語源の意外な単語を挙げたりと、読んで記憶に残りやすい工夫があります。

例えば、temporary(一時的な)という単語の語源は、次のように解説されています。

tempo[(有限の)時間]+-ary[形容詞語尾]から 「限られた時間の」→「一時的な」 ☆tentative「(計画などが)仮の」(←「tentは仮の住まい」で覚えよう)

参考:『LEAP』竹岡広信・数研出版

語呂合わせや語源情報を最大限に活用して、記憶に残りやすい工夫がされています。

竹岡先生は英英辞典の語義にあたることの大切さを日頃から説かれていますが、それは何より英語の本当の意味をつかむためです。本書では、通常の単語集に慣例的に載っている日本語訳から一歩踏み込んだ本格的意味が掲載されています。

例えば、drawnという語には、「溺れ死ぬ」という訳語が載っています。解説で、「『溺れる』ではなく、『溺れ死ぬ』ことを表す。→単に『溺れる』と表現するときは、almostやnearlyを伴う」と説明されています。

こういった要素が組み合わさって、かなりしっかりした内容の単語集になっています。各単語について、単に意味を覚えるだけでなく、揺るぎない知識を身につけることができる単語集になっています。

まさに、揺るぎなき単語集という感じです。これから多くの学校で採用されていくのではないかと思います。


 

まとめ――書き手の顔が見える単語集たち

今回紹介した単語集は、最新のものも含めて、比較的新しいものばかりです。まだ、多くの学年・世代に愛されてきた定番商品とまではなっていませんが、これからそうなってそうなっていくであろう可能性を十分に備えた単語集たちではないでしょうか。

入試制度は改革の激流の中で確かな着地点を見失いつつある感が否めないのですが、制度がどうだろうと、単語集はいいものはいいし、悪いものはわるい。そのはずです。

その意味では、今回紹介した単語集は、どんな制度の下であろうと、確実に「いい単語集」といえるような単語集ではないかと思います

この3冊に共通するのは、「書き手の顔が見える」単語集になっていることではないかと思います。どの単語集からも英語の達人である筆者からの、熱いメッセージがとめどなくあふれてきているかのようです。

自分が高校生のときにこんな単語集があったらよかったのに、なんてうらやましく思うものばかりです。これからどんな単語集が出て、どんな評価を受けていくのかは分かりませんが、「単語集」の現代点としてこれらから学ぶことはまだまだありそうです。

英語の中上級レベルのインプット→アウトプットの練習に使える総合対策として、私のおすすめはEnglish Centralです。詳細は以下の記事で。



 

POSTED COMMENT

  1. 匿名希望 より:

    発売年から考えるとランク順はシス単の上位互換ですかね?

    • kazetori より:

      コメントありがとうございます。

      見方によれば新しい本は過去の単語種の上位互換とも言えると思います。
      ただ、ランク順もシス単もどちらも長所があるので、単純にどちらが上位とも言えない気もしますが…。

      本当に同系統の単語集というものはあまりないので、なかなか単純に上位互換と考えるのは難しいですね。
      ターゲットとパス単のように同じ出版社で同じようなレイアウトだったら考え安いのですが。

  2. 凛華 より:

    STOCK4500買った後に駿台の先生の単語帳知りました…泣きそうです。
    どっちが良かったのやら…。どう思われますか?ちなみに中高一貫新高一で、英検準二級です。

    • kazetori より:

      こんにちは。

      高一で準二級ということは、これから中上級へとステップアップする段階ですね。
      学習を続ければみるみる力がついてくると思います。

      単語集というのはとにかくどれかをちゃんと覚えたら効果はしっかり出てきます。
      後は好みも大きいのですが…

      私なら『LEAP』を普段使いにするかなーと思います。語義も多く、わりと「普通の」しっかりした単語集なので。

      Stockは補足用か、読んで知識を深めるようと割り切りますね。読んで面白いので。

      いずれにせよ、気に入った方をぼろぼろになるぐらいまで使い尽くすことです。

      ちなみに、Stock4500の方は、結構レベル高めです。Stock3000やLEAPの方が、誰もが知っておくべき単語を網羅しています。基本語をしっかり学習することは大事なことなのです。

      • 凛華 より:

        詳しく教えてくださりありがとうございます!4月に単語帳が配られるので(まだ何かは不明)、それで基礎的な単語を網羅しつつ、Stockで楽しく勉強しようと思います。
        これからも記事を楽しみにしています、頑張ってください(*´v`)

  3. ろってぃ より:

    こんにちは。僕は今学校で配布されたリープを勉強しています。リープは収録単語数が少ないと思うのですが、他に合わせて勉強するといい単語帳はありますか?

    • kazetori より:

      こんにちは。お読みいただきありがとうございます。管理人です。
      LEAPを学校で使用されているのですね。
      収録語数は何と比べるかにもよりますが、LEAPは入試向け単語集のなかでは特段語数が少ないという方でもないとは思いますよ。基礎的なものから国公立入試レベルまで無難に網羅している印象です。
      もう少し上のレベルがいいなら、人気なのは『英単語Stock4500』でしょうか。定番だと『DUO』『キクタンAdvanced』あたりですね。難関国公立レベルまで網羅するなら、この辺や、英検準1級向けの単語集が選択肢になってくると思います。このレベルでの私の好みはなんといっても『パス単英検準1級』ですが、この辺は結構人によりますね。2冊目の単語集としては『速読英単語 必修編』とかも結構有効だとは思います。単語と文章の中で出会うこともできますし。

      まあ、ただ、LEAPは1冊でも十分強力な単語集だとは思いますので、収録語は知り尽くしてるという段階まではじっくり付き合ってもいいのかなとは思います。

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