英語試験としては、様々なものがありますが、世界で最も広く認知されている試験にIELTSというものがあります。4技能試験として、最近では日本での知名度もずいぶん上がってきました。
主要都市だけでしか受けることができないなどの制約はありますが、北米以外の英語圏に留学するならまず受験しておかないといけない試験ですし、留学以外でも就労、移住などで英語力の証明として必要になる試験です。
Contents
IELTS概要――いったいどんな試験?
IELTSという試験はどんな試験かというと、英語4技能を満遍なく測定する試験です。試験時間は次のようになっています。
LISTENING 30分
READING 60分
WRITING 60分
SPEAKING 15分程度
問題にはジェネラルとアカデミックの2つのモジュールがあり、リーディングとライティングはこの2つで別の問題です。
問題はジェネラルがより日常的な内容に即しているのに対して、アカデミックがより専門的な内容です。
リーディングはアカデミックの方が難易度は高く設定されていて、少ない正答数でも高いスコアが出るように調整されています。リスニングとスピーキングはどちらのモジュールでも同じ問題です。
IELTSの教本として、一番おすすめのは、なんと言ってもケンブリッジが出している公式ガイドです。各セクションの詳しい説明や得点のコツ、そしてジェネラル・アカデミック両方の過去問が多く収録されています。これ1冊でも十分対策として完結できるようになっている充実の内容です。
IELTSのスコアとレベル
IELTSのスコアですが、各技能で0.5刻みのバンドスコアで表されます。9.0が最高です。問題の難易度や平均点からバンドスコアの基準は変動します。そのため、同じ正答数であっても、バンドスコアが必ずしも同じとは限りません。
各技能の平均がオーバーオールスコアとして、所謂IELTSスコアになります。大学などの出願条件として《IELTS7.0以上》といった文言があったら、オーバーオールで7.0以上のスコアが必要だと言うことです。
各技能の平均がちょうど0.5刻みの真ん中(○, 25とか○, 75)になったときは、オーバーオールスコアは切り上げた数字になります。
CEFRレベルとIELTSの対応表は以下の通りです。
C2 IELTS 8.5-9.0
C1 IELTS 7.0-8.0 英検1級
B2 IELTS 5.5-6.5 英検準1級
B1 IELTS 4.0-5.0 英検2級
実際にはIELTSを受験するという人はほとんどがBレベル以上だと思われます。AレベルではなかなかIELTSの問題に対応するのは難しいというのが現実です。おそらく日本で一番受験者が多いと思われるそうはB2のあたりでしょう。
ちなみに、ハーバード大学など名門大学へと留学する基準はIELTS7.5以上となっている場合が多いです。英検1級は楽々合格できるレベルですね。
B2レベルの人がはじめてIELTSをやってみるとときは、とりあえず、リーディング(アカデミック)とリスニングの40問中、25問ぐらい正解するのを目指してみるといいと思います。C1レベルなら、とりあえず30問ずつ正解を目指しましょう。
リーディング(アカデミック)とリスニングは大体次のように正答数からスコアを換算しておけばいいでしょう。
25問程度正解…スコア6.0
30問程度正解…スコア7.0
英検1級レベルの人なら、練習すれば30問ぐらいは簡単に正解できると思います。そこからいかに正答数を挙げてスコアを上げていくかという話になってくるわけです。
IELTS試験の特徴
問題の難易度は、簡単なものから難しいものまでありますが、IELTSならではの特徴もあります。ILETSのリスニングとリーディングの問題の特徴は次の通りです。
- イギリス英語が中心
- パラフレーズ力が問われる
- 単語レベルの記述式が多いため、スペルも知っておく必要がある
- 極端に難易度が高い問題は出題されない
1.イギリス英語になれよう
リスニングもリーディングもイギリス英語が中心です。そのため、イギリス英語に慣れていない人は、違和感を最初覚えるかもしれません。
とくにリスニング試験の問題文が読まれるときのイントネーションなど、アメリカ英語に親しんでいる人には結構なまって聞こえると思います。イギリス人からしたらなんの違和感もない、ゆっくり丁寧な読み方だそうですが、ちょっと面食らうかもしれません。
You will hear a number of
この文を普通に英語の授業で習ったようなイントネーションで発音してみてください。そのあと、実際のIELTSのリスニング音声を聞くとちょっと慣れ親しんだ英語の発音とは違うと言うことが分かると思います。
じゃあリスニングは難しいのかと言われたら、しっかりポイントを押さえると、それほど難しいわけではありません。どちらかというと日本人には得点しやすいですし、対策したらその文だけスコアもアップしやすいセクションです。
というのも、IELTSのリスニングには、単語レベルですが、選択式でない記述の要素があります。一般的にはリスイン試験の解答法は、センター試験だろうが英検だろうがTOEIC・TOEFLだろうが、選択式のものがほとんどですが、IELTSには一部単語のスペルを書き込む問題があります。
そういう事情もあってか、読まれる音声はめちゃくちゃ早いということはありません。むしろ、ところどころ、しっかりキーワードを聞き取らせるために、かなりゆっくりになったりします。そういったキーワードが答えになることが多いので、丁寧に聞き取る練習をしていったらそれほど、苦労せずにある程度はスコアを上げることができるわけです。
同じイギリス系の試験でも、ケンブリッジ英検のリスニングなどは容赦ないスピードで難しいのですが、IELTSはそこまで恐れるべきセクションではありません。
2.パラフレーズ力
パラフレーズというのは、言い換えのことです。リスニングでもリーディングでもこのパラフレーズ力がものをいいます。IELTSの特徴である空欄補充型の記述問題は、本文をうまく言い換えたものになっています。
リーディングでもそうですが、そして特にリスニングでは、読まれる英文を瞬間的にパラフレーズする必要があります。
これに関しては、過去問を使って何度も練習するのが一番効果的です。なかなかパラフレーズ専用の練習問題問いのはないので、過去問が一番練習として役立つでしょう。
ほかの対策としては、普段から語彙学習をするときに、同義語を意識して単語や熟語を覚えておくことです。特に、2語以上の連語は1語動詞で瞬間的にパラフレーズできるように用意しておく必要があります。
call on = visit
ask for = demand
などといった感じです。
3.スペルもね
スペルはしっかり知っておく必要があります。IELTSはイギリス英語が中心ですが、記述はどの国の英語で書いてもかまいません。ただし、スペルは一つの種類に統一されておかないといけません。
たとえば、ライティングの問題で、アメリカ英語のスペルとイギリス英語のスペルを両方とも使うことは減点の対象になるようです。日本人は学校英語で慣れ親しんだアメリカ英語のスペルですべて記述するのがよいでしょう。
ライティング以外にもリスニング・リーディングでもスペルを書く必要があります。このためスペルが曖昧な単語が多い人は、ライティングのみならず他のセクションでも点数を落とす危険があります。そのため、普段の学習からしっかりと手を動かして各練習をしておくことも、IELTSの場合は重要になってきます。
試験の難易度
問題の難易度は、極端に簡単な問題もなく、難しい問題もないという印象です。英検で言うと、準1級から1級レベルの問題だと思っていれば大丈夫です。
IELTSは合格不合格のある検定試験ではなく、スコア型の試験ですが、問題の難易度はそれほど極端な振れ幅はないように調整されています。もちろん、数問は非常に難しい問題もありますが、そういった問題はよほどの高スコアを目指さない限り正答できなくてもよいものです。
リスニングは英検で準1級を取得できるぐらいのレベルだと、40問中25問以上ぐらいは正解することを目指したらいいと思います。逆に言うと、このぐらいのレベルでないと、IELTSのリスニングは結構苦しいかもしれません。
試験で半分ぐらいしか正答できないレベルでは、なかなか実力に見合った学習ができないからです。英検1級レベルだと、30問正解を目指していきたいところです。このレベルはかなり難しいですが、上を目指すなら、正答したい問題数です。
リーディングはアカデミックとジェネラルで難易度は異なります。アカデミックは英検で言うと準1級から1級レベルの間ぐらいでしょうか。ただし、3つの英文はどれも2ページほどあるので、各英文の長さはIELTSのほうが長いと言えます。
内容はめちゃくちゃ専門的というわけではないですが、ある程度アカデミックな一般向け読み物といった感じです。日本人にはこちらの方がなじみがあるのではないかと思います。日本の大学入試や英検準1級以上の文章とも通じるところもあります。
問題は内容一致問題や、段落のタイトル付け、本文の要約の穴埋めなど、いくつかのパターンがありますが、しっかり本文が読めていたら解答できるはずです。
ジェネラルのリーディングは、難易度は一段階下がります。内容はイベントの案内や、求人の案内など、日常生活に即したものが多くなります。最近のセンター試験とも共通するような題材が見られます。各問題文も1ページ程度のものが多く、読むのに忍耐力が必要という感じも少なくなります。
ライティングPart2やスピーキングはこちらも日本の英検準1級以上と傾向が似ているところがあります。社会問題などを扱ったテーマについて意見を書いたり話したりすることが要求されるので、英検を経験した日本人には対策がしやすいのではないかと思います。
IELTS勉強法
B2レベル以上のスコアを取得するのが目的なら公式問題集は必ず手に入れておいた方がいいでしょう。毎年のように発売されますが、現在はジェネラル・アカデミックともに13まで販売されています。
過去問ですが、練習問題としてもしっかり使える内容なので、じっくり取り組みましょう。
おすすめの使い方ですが、最初は時間を計りながら解いて、あとは復習だと思って、何度も読み返してください。リスニングは何度も聞いて、1語も逃さず聞き取れるまでシャドーイング、ディテーションなどで練習しましょう。イギリス英語に慣れるには、とにかくシャドーイングするのが一番です。
最初に解いたときの何倍も時間をかけて復習をしましょう。そうするなかでスコアは少しずつ上がっていくはずです。
ライティングは参考の解答例を見て、どのようなポイントが挙げられているかをよく考えましょう。どういった書き方が適していて、逆にどういった書き方がまずいかは、分からない場合は、分かる人に聞くというのが一番の近道です。
ライティングはなかなか独習しにくいところだと思うので、日本語で書かれた教材を使うのもありかと思います。日本語で書かれた対策本は、日本人向けに基本の話の組み立て方から紹介されています。
ライティング・スピーキングは英検など、より認知度の高いの試験用のものを利用するのも可能です。
IELTS対策としては、英検1級用の教材が一番向いています。1級レベルでなくても、作文の対策本だけは1級用を使ってみることは十分可能です。おすすめは断然、ジャパンタイムズの本です。
この本に出てくるアイディアのボディーをしっかり身につけておくと、IELTSのライティングやスピーキングにも大いに役に立つはずです。
IETLSのライティング・スピーキング課題は英検(準1級以上)のものと共通するような話題も多いので、日本の英検を受けたことある人は結構要領よく学習を進めることができると思います。
まとめ
IELTSという試験について紹介しました。こういう試験についていろいろ読んだところで、実際に試験問題をやってみる以上のことはありません。
なにはともあれ、ILETSに興味がある、もしくは興味がなくても英語学習についてなにかヒントをもらいたいというときは、IELTSのような優れた試験の問題をやってみることは有意義なはずです。
数年前までは、IELTSに関する本なんてよほど大きな書店に行かないと出会うことなどあり得ませんでしたが、最近は知名度も少しずつ上がり、少しずつ対策本も出てきました。
まだまだ、TOEICやTOEFLほどの知名度は日本ではありませんが、これからおそらくもっとメジャーになっていくものと思われます。現在のところ、IELTSはイギリス・オーストラリアに留学・就職する人が受けるという形が圧倒的に多いですが、英語試験への関心とともにより多くの人が受験するようになっていくでしょう。
世界的にはIELTSはかなり名の通った試験なので、一度取り組んでみるのもおすすめです。(実際に受験するかどうかは別として。)
日本では英検協会が試験を運営しているので、英検と同じサイトから申し込むことができます。
ちなみに、受験にはパスポートが必要です。身分証として使えるのはパスポートだけです。それだけでなんかただならぬ試験という感じですね。試験の時も忘れず持って行きましょう。忘れたら受けられません。泣いても。