センター試験まで、あと1ヶ月と迫ってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。kazetori( @kazetori2 )です。
センター試験には、「英語」がありますが、あれは正式には「外国語」という科目名です。そしてその「外国語」では、実際には英語以外にも4つの言語が選べます。聞いたことがあるかもしれませんが、英語よりも簡単です。今回はセンター試験の「外国語」の1つ「ドイツ語」を題材に、同じレベルの英語を再現しつつ、その難易度を考えてみたいと思います。
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センター「ドイツ語」の概要
センター試験の「ドイツ語」の構成は英語と同じようなところもあれば、違うところも結構あります。先に共通点と相違点をまとめておきましょう。
共通点
- 試験時間は同じ80分
- 発音→文法4択→並び替え→読解という全体のおおまかな流れは同じ
- 基本は4択で、並び替えや読解の1部は選択肢がもっと多い
相違点
- リスニングがない
- 解答数が少し少ない
- 読むべき量が大幅に少ない
- 選択肢が日本語だったりする
全体として、一言で言うと、ドイツ語の方が、簡単な試験です。ずいぶん簡単です。
共通点は、全体の問題構成が似ているというぐらいでしょうか。この順番は意味があるか分かりません。フランス語では並び替え問題が最後にあったりします。なにか理由があるのかは、分かりません。
一番大きな違いは、難易度の他に、リスニングがないということでしょうか。解答数も49問と、英語の54問(2018年)よりちょっとだけ少ないです。解答番号49までで200点勝負という感じです。
読むべきドイツ語の量は、せいぜい5ページ分ぐらいでしょうか。英語の大体半分ぐらいという感じです。最後の一番長い長文でも1.5ページ程度というところです。英語だったら、長文は2ページのものが2つあったりしますね。
英語では選択肢はすべて英語ですが、ドイツ語では、選択肢が日本語であったりします。これも、外国語を読む量を見た目以上に減らしています。
それぞれの2018年の問題の内容を簡単に見ておきましょう。
第1問 発音・アクセント(配点21点)
英語と同じような発音アクセントの問題です。活用に関する発音問題もあります。
第2問 文法(配点24点)
短文の空欄に入る語を4つの選択肢から選ぶという、オーソドックスな文法問題です。聞かれる文法は基本的な代名詞や動詞、助動詞・前置詞の使い方といった感じです。ドイツ語ならではの問題もいくつかあります。格変化や分離動詞の前綴りを選ぶ問題なんかはそうですね。
第3問 並び替え(配点25点)
並び替えは5問、文中の6つの空欄に入る語を6つの選択肢から当てはめていくという感じです。空欄は連続してるわけでもないので、まあ格好うめの部分英作文みたいな感じです。英語の並び替えだったら、空欄は基本的に連続しています。
第4問 会話問題(配点20点)
2人の人物の会話の途中が空欄になっていて、その空欄に入るセリフを4つのなかから選びます。
第5問 読解+会話問題(配点15点)
短いドイツ語を含んだ看板や広告が最初にあって、それについて会話している人物のセリフを補うという形です。少しだけ第4問の会話よりは1つの会話が長いです。
第6問 長文読解①(配点35点)
複数の人物が会話している文章(1ページぐらい)・それに関するメール文(0.5ページ)を読んで、あとの問いに答えます。選択肢はドイツ語のものと日本語のものが半分ずつぐらいです。
第7問 長文読解②(配点60点)
1.5ページぐらいの長文読解問題です。2018年のテーマはパーティに関する主人と客人のマナーについての日常的な文章でした。問題は単純な内容一致問題というよりは、個別の状況に合致する段落を選んだり、下線部の意味を選んだり、タイトルをつけたりと多岐にわたります。
問題の構成は以上です。1問あたりの得点は、大問1・2が各3点、大問7が各6点です。その他の大問は各5点となっています。見ての通り、最後の長文(大問7)が60点(6点×10問)と、一番大きな配点になっています。
ドイツ語の問題を英語で再現
以下では、出てくるドイツ語のレベルを考えるため、それぞれの問題をそれに対応する英語に置き換えて考えて見たいと思います。
できるだけ元のドイツ語に直接対応する英語を使いましたが、どうしても対応する語や言い方がないときは、別の言い方を使ったりしています。あらかじめご了承ください。
問題は、朝日新聞のページから見ることができます。
①発音問題
発音・アクセント問題には、普通に発音を聞く純粋な発音問題と、動詞の活用形の発音を聞く問題があります。
純粋な発音問題に出てきた単語は以下の通りです。( )内はそれにあたる英語。ちなみに、ドイツ語ではすべての名詞は大文字で始まります。
発音
Gast (guest)
Frühstuck (breakfast)
Restaurant (restaurant)
Obst (autumn)
Kugel (ball)
Zug (train)
Buch (book)
Mund (mouth)
アクセント
Vorlesung (lecture)
Seminar (seminar)
Professor (professor)
Student (student)
Studium (study)
Unterricht (class)
Lektion (lesson)
Prüfung (exam)
登場する単語のラインナップはこんな感じです。アクセント問題に出てくる単語は、なぜか大学で使うような語彙に統一されています。聞いているのはアクセントなので関係ないですが。
こうしてみてみても、言語を習い始めて最初のように学習するような基本単語ばかりが出てきていることに気づくと思います。さすがに英語のセンター試験ではもっと難しめの単語が多いですので、その違いは一目瞭然だと思います。英語の発音問題でball, train, book, mouthなんて語が1つの問題にあったら笑っちゃいますよね。
発音問題には他にもバリエーションがあるのですが、過去形で動詞の母音が変わってしまうものはどれか、みたいな問題もあります。不規則変化の動詞を選ぶという感じです。
他にも、会話の中でストレスをおいて発音する語を選ぶ問題などあります。(昔のセンター英語にもありました。)
②文法
第2問は所謂文法問題で、オーソドックスなドイツ語文法と、基本語の用法を聞いてきます。英語でいくつか再現してみましょう。(太字は正答)
1 The football player played not for [ ], but for his team.
①him
②himself
③they
④that
2 There is a nice cafe [ ] the corner of this street.
①by
②on
③over
④at
3 My sister [ ] already married when I was a student.
①is
②has
③was
④had
4 The weather is not good today. [ ] I will stay at the hotel all the day.
①For
②So
③Although
④Otherwise
これ以外にも、名詞の性や格を理解した上で正解を選ぶ、ドイツ語ならではの問題もあります。
③並び替え
並び替えは、全部で5題あって、基本的なドイツ語の文構造や語順が分かっているかを問います。
ドイツ語は英語に比べたら語順が自由ですので、並び替えといっても、文の所々の単語が抜けているところに選択肢の単語を補うという形です。
英語の並び替え問題と違って、ドイツ語文の日本語訳が最初からついています。その日本語に合うように空欄のドイツ語を選べばいいわけです。ドイツ語である程度基本的な文を書いたことがある人なら一瞬で片付きます。
英語で再現した文は次のような感じです。
- She called Peter before she visited him.
- It is not quite difficult to persuade to persuade Michael.
- If I had enough time, I would rather go by train than by plane.
- You can read this book much more easily than you believe.
もちろん、ドイツ語であるからこその英語と違った難しさみたいなのはあるのですが、どれもドイツ語としてはいたって単純な文です。日本語訳がついているというのも大きいです。
文法問題も並び替え問題も、ドイツ語文法の中でも基本中の基本しか出てきません。
初心者が躓きがちな、形容詞の活用などは暗記していなくても特に問題はありません。接続法は全問題を通して、非現実を表す接続法Ⅱ式のオーソドックスな形しか問われません。英語で言う仮定法の基本文型といったところです。(並び替えの3つめ)。
もちろん、上級者にとっても難しい、心態詞を尋ねる問題なんてありません。
せいぜい、分離動詞の仕組みと、再帰動詞の基本、接続法第Ⅱ式の非現実を表す言い方、受動態の基本、前置詞の基本用法ぐらいを知っておいたら問題なく正解できる問題ばかりです。
④会話問題
会話問題も早速英語で再現してみましょう。一部原文に直接対応する英語が思い浮かばなかったところは、勝手にそれっぽい語を使っています。
After the class
Charlotte: Are you tired?
Daniel: No, I have a slight cold. I think I should go home soon.
Charlotte: Oh, so, [ ].
①do your best
②good luck
③no need
④take care
A student comes to his professor.
Student: Hallo, I have an appointment with Professor Richter at eleven.
Secretary: He will be back in five minutes. Please [ ].
①Hung on
②pay money later
③go to the track 5
④wait for a moment
基本的な会話表現です。大学1年生のドイツ語の教科書にも出てくるような場面ですね。この問題以降は結構長めの文章を読む問題になっていきます。
⑤長文問題
長文問題の雰囲気を感じるために、第7問の長文から1段落を英語で再現してみましょう。
Guests should bring a small gift to the host. This is especially true for the guests who stay overnight. Overnight guests who don’t bring even a bunch of flowers or a bottle of wine with them will be seen as impolite. Even if it is just a present with a slightest value, it works as a sign of gratitude for the host who has additional works because of the overnight guests. Every guest should bring also a handkerchief and personal washing things with them.
英語にしたらどうしてもラテン語由来の難しめの単語を使わないと表せないのですが、実際のドイツ語はもっと素朴な感じです。
この文に出てくる英語の元になった語を挙げておきます。[ ]内は活用語尾。
impolite→unhöflich
gratitude→Dank[ens]
additional→zuzätzlich[e]
washing things→Waschzeug
この段落だけで見ると読解のポイントは次の点でしょうか。
・A gilt als B(=A is seen [regarded] as B)「AはBと見られている」
・nicht einmal (=not even)「~すら…ない」
・auch wenn(=even if)「たとえ~でも」
これらを知っていると、読解はまあ難しくありません。基本文法を抑えた上で、基本的な熟語や連語を知っておくことも必要なわけです。
ちなみに3つめのauch wenn(たとえ~でも)は設問でも問われていて、設問は下線部の内容と一致するものを選ぶようになっています。選択肢はドイツ語ですが、ここも英語で正答を再現してみます。
Even with a gift, which cost not so much, guests can express their gratitude.
他にも選択肢が3つ合って、合計4つのうちからこの文を選べたら正解です。原文のドイツ語は朝日新聞のサイトでご確認ください。
まとめ――センター「ドイツ語」を考えているなら
センター試験で第2外国語を受験するということを選ぶ人はごくごく少数だと思います。確かに見てきたとおり、第二外国語のセンター試験は英語よりレベルは低いですが、それでも普通の人が英語と同等かそれ以上に点数がとれるためには、それなりに時間がかかると思います。
私自身、第二外国語を選ぶことは、よっぽど事情がない限り、あまりおすすめはしません。「簡単そうだから」であったり、「英語が苦手だから」といった理由で第二外国語を選ぶのはやめておいた方がいいです。
やはりまず学ぶべきは英語だと思います。英語がある程度できるなら、他の言語の習得は割と(英語の時よりは)短くなりますが、英語もろくにできないのに他の言語が短期間でマスターできるはずはありません。
おそらく、ドイツに興味があって「ドイツ語を学びたい」「センター試験をドイツ語で受けるのも良いかも」なんて言う高校生がいたら、ほとんどの人は、やめておけと反対するでしょう。
ただ、中途半端な覚悟でやるのは論外ですが、もし本当にその言語やその国に興味があって、ちょっとだけでもその言語を学習してみたいという気持ちがあるのなら、その気持ちを否定するのもどうかとは思います。
英語はこれまで通り学習し続けるとして、それ以外の自由時間をその言語の学習に費やすというぐらいの覚悟があるのなら、(実際に1・2年後センター試験をその言語で受けるかどうかは別として)、自分が興味ある言語に手を出すことは、私なら全く反対しません。
興味があるとか、好きとかいうことは、学習においては最強の味方です。その気持ちを失わずに努力ができるのなら、してみたら良いと思います。
もしこの記事を高校生が読んでいるとしたら、自分の本当の気持ちと覚悟を今一度考えてみてほしいと思います。本当にその気があるのなら、ぜひともやってみな、と私なら言うでしょうね。
周りの大人や友達は反対するかもしれませが、その人たちは、第二外国語を使える人でしょうか。そんな人は、日本ではかなり少数派です。おそらくほとんどの人は、よく分からないけど、とりあえず一般的じゃないし、やめとけと言っていると思います。
本当にやりたいのなら、やったらいいです。実際にやったことのない人が、やめとけというのも(そんなことを言ってくれる人がいるというのはありがたいことなのですが、)どうかとも思うのです。
楽そうだから、なんて安易な気持ちで取り組むのはやめた方がいいでしょうが、本当に好きで、興味があるなら、苦労して茨の道を突き進むなんてこともありですよ。遠回りには、かならず遠回りなりの景色があるものです。
以上、「センタードイツ語のすゝめ」でした。