英語学習

おじさんが、英語版『君の名は。』を音読しようとして挫折した話。

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If I could at least…

語学をやっている人なら、書店で見たことがあるだろう。

バイリンガル版のコミックが最近は語学書コーナーに並んでいるものである。

「ドラえもん」「サザエさん」などは昔からあったが、「のだめカンタービレ」や最近では、ディズニーのものもあり、活況を呈している。

私は以前から、このコーナーに目はつけていた。

(おもしろそうだな~)

そうはいっても、なかなか行動することもなく、手に取ってもレジまでは持って行かない、といった日々が続いていた。

何せ、漫画であるため、1冊を読み切るのが普通の本よりは早いわけである。

つまりコストパフォーマンスという観点では、普通の学習書に劣るわけだ。

その上、漫画の中では終始砕けた口語表現が飛び交うため、英語で読んでもよう分からん表現が多かったりして、なかなかいい使い道が思いつかない。

せめて、うまくスピーキングにつながる練習教材になってくれればいいのだが…。

I guess it does look kinda funny, huh?

そんな中で、一つ目にとまったバイリンガル版のコミックがあった。

宝石をちりばめたような星空に、白熱の彗星――。
この女と あいつと 入れ替わっている~~~~!?

そう、その本の名は、ご存じのあれである。

この本を書店でパラパラとめくってみて、私は興味を持った。

この漫画では、登場人物が「普通の」高校生を中心としているので、なんだか会話が今風で、自然である。

私は逡巡した。

等身大の高校生の会話を通して、英語のスピーキングの練習になるかもしれないと思ってしばし考えた。

パラパラめくって、印刷された文字を見た。

文章は、本国のCOMICと違って、小文字を使って印刷されている。読みやすさは十分。

文字量はどうか。

まずまずである。絵だけでほとんどセリフがないということもない。

冒頭の方を見ていたら、会話の背景で、テレビのニュースが流れているシーンがあった。

なるほど、ただの会話だけではないというわけだ。

私は、それでも、なおためらった。

アラサー男がこんな漫画でときめきながら語学なんてやっていいのかしら。やっぱ変かな。

第一話冒頭、ヒロインの冒頭のセリフに私はもどった。

仮定法で “If I were a hot guy”(〔私が〕イケメンやったら)なんて言っている。

第二話のはじめ、同じヒロインのセリフ。
“When I woke up, I was a boy.”

第一話の間に、仮定法が直説法に変わっている。

なるほどこれは、ヒロインが仮定法から直説法へと跳躍する物語なのだ

おもしろいではないか。

決めた。

最初の巻を手に、私はレジへと向かった。

…before, you liked me a little bit, didn’t you?

早速家に帰って、読んでみた。

じっくり読んでみると、改めてストーリーをしっかり捉えることができた。

なるほどこういう話だったのか。

それより前に、映画は1度だけ見ていた。(ここ、過去完了ね。)

しかし見たと言っても、途中から酔っ払ってしまって正直どんな話だったかはほとんどまったく覚えていなかった。(私は意思が薄弱なところがあって、家で映画を見ると、だいたいいつも同じような顛末をたどってしまうのである。)

というわけで、今回コミック版を読んで、改めてストーリーをしっかりたどっていこうとしたわけである。

正直、話は私の得意な類ではない。

もっと若かったらこういったストーリーに親しみも抱いたのだろうが、ちょっと歳をとりすぎたのかもしれない。

何で、入れ替わるの~~~~?

という感想しか持てなくなった自分がいるのである。

そういう個人的な嗜好はおいておいて、私は当初の崇高なる目的を思い出した。

音読をするために買ったのであった。

さっそく、音読をしてみた。

When I wake up in the morning…
…I’m crying.

だが、これがうまくいかないのである。

音読がうまくいかない。

クリストファーベルトンの『知識と教養の英会話』を音読するのとは訳が違うのである。

冒頭、すぐに、ヒロインの友達(男1、女1)が登場してきて、会話になる。

これを音読してみても、どういうわけか、しっくりこない。

理由は単純だった。

登場人物の会話が――至って普通の会話が――あまりに瑞々しすぎるのである。

他愛ない会話に、もう、おじさん、恥ずかしい。

まったく困ったことである。

これは予想していなかった事態であった。

ものの数ページで、ヒロインと男の子と「入れ替わり(1回目)」勃発。ヒロイン側(中身は男)。

下着1枚(下だけ)の(たぶん)サービスカット。

もうこの辺で、音読とは別の感情が渦巻きすぎてしまう私。

それでも、ページをめくり、なんとか、あのセリフまではたどり着きたい思って続けた。

苦しい道のりだったが、2話の終わりにようやくやってきた。

まさか本当に?
本当に…?
この女と
あいつと…
入れ替わっ(以下略)

よし、終了。

これでこの名作を音読したと豪語してもいいだろう。

続く第3話では、いきなり体操服姿や下着姿の女の子たちが登場する(またもや)サービスシーン。

語学の道を究める音読者は、静かに本を置いた。

いま、この本は、静かに本棚に眠っている。

今となっては、「おっぱい」はboobsというということぐらいしか私は覚えていない。

時々、本棚のこの本と目が合うと、私に語りかけてくるようである。

“Don’t you remember me?”

庭訓 身の丈に合った教材を選ぶべし。

見出しと引用は上記の本から。
『君の名は。バイリンガル版01』原作:新海 誠・漫画:琴音らんまる(KADOKAWA)

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