ドイツ語とはどんな言語か。そして、ドイツ語を学ぶ意義は何か。今回は、これらの点について、社会的、文化的な視点で考えてみたいと思います。日本人がドイツ語を学習する意義や動機も見つかるかもしれません。
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ドイツ語を使う人
ドイツ語は、ドイツ・オーストリア・スイス・ベルギー・リヒテンシュタイン・ルクセンブルクなどで話されている言語です。
日本では英語に比べたら当然学習者数は遙かに少ないですが、英語以外の言語としてはかなり人気の言語だと言えます。特に、ヨーロッパの言語としては、フランス語やスペイン語などと並んで、最も学習者の多い言語です。
意外に思うかもしれませんが、ヨーロッパで母語話者がいちばん多い言語はドイツ語です。
ドイツを代表する週刊誌 “Der Spiegel” は、ヨーロッパで最も発行部数の多い雑誌と言われています。
もちろん、ヨーロッパのどの国でも使える言語として英語に勝る言語はありませんが、それでもドイツ語は、欧州のみならず、世界的にも依然大きな影響力を持った言語だと言えるでしょう。
ドイツ語を学習する動機
ドイツ語を学習する人の動機は様々ですが、環境・エネルギー先進国や欧州を牽引するドイツという国のイメージに惹かれる人も最近は多いです。勤勉、かつおおらかな人がいるイメージや、バカンス・ビール・ソーセージを愛する国民性に魅力を感じてドイツ語を学ぶ人もいるでしょう。
ドイツの経済大国としての地位は揺るぎないもので、GDPは欧州1位、世界では日本に次ぐ4位です。EU圏の中で最も経済的に安定している国だと言えるでしょう。
先述のドイツを代表するニュース週刊誌の “Der Spiegel” ですが、内容も非常に充実しており、アメリカのTIMEやイギリスのThe Economistよりも一回り、分厚いぐらいのボリューム感です。経済大国としてのしっかりした土台がここにも現れている、のかは分かりませんが、欧州の政治・経済・文化について、国民の関心は大きいのでしょう。
サッカーに興味があるという人もいるでしょう。日本人も多くプレーするブンデスリーガの記事が原文で読めたり、試合のインタビューが理解できたりします。
西洋音楽に興味がある人にとっては、ドイツ語は最も重要な言語の一つです。
ベートーベン、ブラームス、マーラーなど、名だたる大作曲家たちが音楽史における傑作を残しています。これらの大作曲家の歌曲や合唱曲は、ほとんどがラテン語かドイツ語で歌われます。楽譜の指示はイタリア語と並んで、多くはドイツ語で書かれています。
文豪としては、ゲーテ、シラーから、カフカ、トーマス・マンなどが有名です。子どもの頃に読んだかもしれない、『飛ぶ教室』のケストナー、『モモ』『果てしない物語』のミヒャエル・エンデなどはドイツ語で執筆しています。
他にも、ニーチェやカントなどの哲学者、アインシュタインなどの科学者が執筆した言語もドイツ語です。
出版大国としてのドイツ
語学ファンとしては、忘れてはいけない、出版大国としてもドイツは有名です。
翻訳大国などとも言われますが、たくさんの辞書やドイツ語以外の文献の翻訳などがとても充実していると言われています。海外の少しマニアックな文学作品では、日本語訳や英訳はないけど、ドイツ語訳ならあるなんて作品も結構多いです。
日本で最初の文庫である岩波文庫のモデルになったのは、ドイツのレクラム文庫です。ポケットサイズの本が日本でこれだけ広く出回っているのは、レクラム文庫のスタイルを取り入れたからです。
ドイツを代表する辞書の会社DudenやLangenscheidtやPONSの辞書の品質は、世界的に見ても最高クラスです。
私が好きな点は、それに加えて、本の装丁がきれいであることです。
英語やフランス語などの洋書と和書の決定的な違いは、使われている紙や印刷の質だと思います。洋書では、日本で言う、電話帳や漫画週刊誌のような紙に小説などが印刷されていることも珍しくありません。(それはそれで味があるのですが。)
ドイツ語で書かれた本は、他の洋書と比べて低品質の紙や装丁であることが少ないです。ペーパーバックをネットで買っても外れが少ないのはありがたいです。
著作権切れの作品などを、格安で提供している出版社もあります。anaconda社の本なんかは、超高品質のハードカバーでも1冊1000円以下の値段で買えたりします。活版印刷が世界で最初に開発されたドイツが、いかに出版というものを大切にしているかを知ることがでいますね。

まとめ
大学生では、「簡単そう」という理由でドイツ語を選択する人もいます。これは確かに一面では真実であり、一面では間違っています。
確かに、時制や文法上の語の機能などは英語と共通するものも多いです。語彙も基本的な単語は英語と似ていたりしますが、実際にドイツ語を学習し始めると、英語と全然違うという印象をもつ方が多いと思います。
ドイツ語を学習する動機は様々でしょうが、学習して大きな恩恵が得られる言語であることは間違いありません。
欧州のほぼ中央にあるドイツは、ヨーロッパでも最も大きな影響力を持つ国の一つです。
移民問題やテロの問題などでここ数年はドイツ国内の事情も揺れていますが、依然世界はドイツが現在の国際問題に対してどういった動きを取るか関心を寄せています。世界はドイツという連邦国家の動向をある程度の敬意を持って見ていると言うこともできるかもしれません。
フランスやイタリアなどの華やかな遺産がある国々ほど観光で訪れる人はいませんが、それでも、ロマンチック街道や荘厳な大聖堂などは多くの訪問者を魅了しています。
ドイツ語学習者は依然に比べたら減っているそうですが、それでも、学生も社会人も、一定数の学習者がいます。
英語は、おもしろいことに、古くなればなるほどドイツ語に似た姿になっていきます。そういった事実もドイツ語を知って始めて分かるものです。
辞書・翻訳・格安の書籍が充実しているので、語学マニアにはありがたい言語です。欧州の言語で多言語をやるなら、是非とも身につけたい言語でもありますね。
あなたも興味深いドイツ語の世界を旅してみてはいかがでしょうか。