ドイツ語

ドイツ語ってどんな言語?《言語編》「ドイツ語っぽさ」とは何か

ドイツ語とはどのような言語か、前回は社会や文化的な面からドイツ語を学習するメリットを考えましたが、今回は言語そのものについてです。英語とも古くからつながりのあるドイツ語ですが、どのような特徴をもった言語なのか、簡単に見ていきたいと思います。

言語の入門講座というよりは、「ドイツ語のここがおもしろい」ところを紹介するつもりです。英語しか知らない人向けです。

ドイツ語はゲルマン語

ヨーロッパの言語の中でも、ドイツ語はゲルマン語と呼ばれるグループに属します。同じゲルマン語としては、オランダ語、スウェーデン語、デンマーク語などがあります。

かなりざっくり言うと、ヨーロッパの真ん中や北の方に多く広がる言語です。

忘れちゃならない、英語もゲルマン語です。ただし、英語は中世以降、フランス語からの影響をかなり強く受けてしまった結果、見た目上はゲルマン語っぽさが薄れたような言語になってしまいました。

ゲルマン語の特徴はいくつかあります。

・アクセントは基本第1音節   
・動詞が現在時制・過去時制をもつ
・単語をくっつけて新語をつくる

などといったところが目につきやすいところでしょうか。

簡単に目につく、ドイツ語の面白さは、いろいろあります。

例えば、2桁の数字を言うとき、1の位から言ったりします。次のような感じです。(便宜上単語の切れ目にハイフンを入れています。)

21 → Ein-und-zwanzig(1と20)

以下では、ドイツ語の特徴について、より詳しく見ていきましょう。

ドイツ語の発音

アクセント

ゲルマン語ではアクセントは基本的に第1音節にあります。ドイツ語の多くの単語がそうです。

第一音節にある感じを味わうため、ドイツ語の音楽を聴いてみましょう。有名な、シューベルトの『野ばら』です。

Sah ein Knab ein Röslein stehn
 強  弱  弱   弱  

Röslein auf der Heiden
 強 弱  弱 強 

強弱強弱とドイツ語本来の音のリズムを生かした旋律です。アクセントが第一音節に基本あるからこその素朴なメロディーといえるでしょうか。

英語では、語彙面ではラテン語由来の語が大量にフランスから流入したので、ゲルマン語でありながら、アクセント第1音節の原則がかなり崩れています。

そのため、英語ではアクセントは1語1語覚えるしかありません。英語のセンター試験でアクセント問題が成立するのは、長い歴史の中でゲルマン語の特徴が薄れてしまった結果なのです。

一方で、ドイツ語のアクセントは一部の前綴り(接頭語のようなもの)や外来語を除いては、第一音節にあります。

アクセントどこだったっけ、みたいなことは、規則を覚えてしまえば基本的にありません。

発音

ドイツ語の発音は、これも慣れてしまえば英語より簡単です。

アクセントが基本的に一定なのは先述の通りです。

発音は多くのアルファベットを、そのまま、ローマ字読みのように読みます

英語   name(ネイム)
ドイツ語 Name(ナーメ)

英語になれてしまったら、単語末のeは発音せず、前の母音を長く読むことになれてしまうものですが、ドイツ語では「そのまま」というか、Nameは「ナーメ」です。(ドイツ語ではすべての名詞を大文字で始めます。これ、最初の衝撃。)

ちなみに、英語も古くはドイツ語のようにnameを「ナーメ」とそのまま読んでいたのですが、中世以降いろいろあって(ざっくり)現代のような読み方に変わっちゃいました。

あとは、ドイツ語特有の読み方をする文字をいくつか覚えれば、基本的にはドイツ語の発音はできるようになります。(今回は詳しくは踏み込みません。)

英語と違って綴り字と発音が一致しているので、初めて見た単語で意味は分からなくても、発音だけはできるということが多いです。

綴りを知らない単語でも、人に読んでもらったら、スペルを書き取ることが割とできます。音とスペルが一致しているからです。英語ではなかなか難しいですが、ドイツ語ではずっと簡単です。

格変化する名詞

ヨーロッパの言語には本来、名詞に「格」というものがあります。格とは、文中における名詞の役割のことです。

たとえば、主語なら「主格」、直接目的語なら「対格」という形がそれぞれの名詞にありました。同じ名詞でも主語のときの形と、目的語のときの形、前置詞のあとの形が異なったりするのがこの「格変化」の結果です。

ドイツ語はこの名詞の「格変化」を現代までとどめている言語です。名詞そのものはほとんど変化しませんが、名詞につく冠詞や形容詞はそれぞれ格によって独自の形をもつので、それをまず覚えないといけません。(これが多くの人がまず挫折するところ。)

現在でもチェコ語やロシア語など格変化をとどめる言語は普通にありますが、英語を始め、ロマンス諸語(スペイン語・フランス語・イタリア語)などの割と学習者が多い言語は格変化が失われてしまったので、あまり日本人にはなじみのない言語の機能です。

ちなみに英語では代名詞だけは格の違いをとどめています。「私」は私でも、主語の時はIで、所有を表すときは、myで、目的語のときはmeになりますよね。

ドイツ語では、一応、すべての名詞とそれにつく冠詞・形容詞にこの格変化が残っています。(一応といったのは、結構失われている語形や格もあるからです。)

ちなみに、日本語には名詞の格変化はありませんが、その代わり「は」「の」「を」といった助詞がその役割をになっています。(世界的に見てもまれな言語です。)

中国語では、同じ役割を語順が大きく担っています。現代英語も格が事実上衰退したので、「トムは」か「トムを」のどっちかを決定するのは語順になってしまってます。

つなげて新語

ドイツ語では、別の単語をくっつけて簡単に新語を造ることができます。

たとえば、次のような感じです。

Bus(バス)+ Halte(とまる)+ Stelle(場所)→ Bushaltestelle(バス停)

この単語なんかはよく使われる単語ですので、複合語の形で辞書に載っています。

一方で、辞書に載っていないような単語だって基本語を組み合わせて簡単につくつことができます。

Bar(素の)+ Fuß(足)+ Wandern(歩くこと)→ Barfußwandern(裸足ハイキング)

こういった、単語の「造語力」の高さはドイツ語の大きな特徴で、ドイツ語の文章にはやたらと長い名詞も割と頻繁にできてくるわけです。

英語でも実は、名詞をくっつけて簡単に複合的な名詞を作ることができます。

「クラス」の「部屋」だから、“classroom” であったり、「ノート」の「冊子」だから “notebook” であったりと、名詞をくっつけて新しい語を作ることができます。「月曜日の朝」なら “Monday morning” といった感じで、英語でも実はかなりの名詞をくっつけて使うことができます。

この造語力はゲルマン語の特徴です。特にドイツ語は、他の言語なら名詞の形容詞形や前置詞を使って表すようなことでも、名詞をくっつけて表すというなんともたくましい性質をもっています。

語順は自由かつ不自由

最後にドイツ語の語順の話をしておきましょう。この章はちょっと難しい話になるので、それほど言語に興味がない方は読み飛ばしてもかまいません。

ドイツ語の語順は、英語に比べると自由なところがある一方で、なんとも不自由なところもあります。これがドイツ語の大きな特徴である「枠構造」という文の形と関係してくるところです。

文頭の語は何でもいい

ドイツ語においては、文頭の語は英語に比べてかなり自由です。

次の文を英語とドイツ語で比べてみてください。

Mary saw the man at the station yesterday.
 メアリーは 見た その男を 駅で 昨日

Mary sah gestern den auf dem Bahnhof.
 メアリーは 見た 昨日 その男を 駅で

上の②の文は、文頭の語を入れ替えても問題ありません。

②-1 Gestern sah Mary den Mann auf dem Bahnhof.

②-2 Den Mann sah Mary gestern auf dem Bahnhof.

②-3 Auf dem Bahnhof sah Mary gestern den Mann.

このように、文頭の語は、主語の「メアリーは」が来ても、「昨日」でも「その男を」でも「駅で」でも可能です。

ドイツ語には先述の通り、「格」があります。“den Mann“ 形がすでに、この語は「男を」という形であるということを示している訳です。そのため、文のどこであろうとその語が目的語であることが識別できます。だからどんな語でも、文頭に持ってきて強調することができるのです。

格がほとんど失われた英語では、Mary saw the man → The man saw Mary となると、文の意味が全く変わってしまいますが、格をとどめているドイツ語では、Mary sah den Mann でも Den Mann sah Maryでも意味は同じです。(ニュアンスは多少違います。)

格の衰退と語順の固定

文頭の語は英語に比べて自由に入れ替えることができることが理解できたでしょうか。

ヨーロッパの言語には本来、格変化があったため、語順は比較的自由でした。古典語であるラテン語やギリシャ語は現代語よりもずっと自由な語順をもった言語です。

そんな言語では、形容詞が修飾する名詞が遠く離れているなんてことも普通にあります。英語では考えられませんが、格が役割を明示しているので、文のどこに出てきても主語か目的語かは識別できますし、形容詞の修飾関係も分かったわけです。

英語でよく見かける「並び替え」問題なんて、格変化がある言語では本来成立しない(答えが無数にある)問題です。

現代語では、格の違いがなくなってきた結果、語順が厳しく制限されるようになりました。

ドイツ語の不自由な語順

ドイツ語では格が残っている分、文頭の語は割と自由に入れ替えることができましたが、それでも語順の規定はやはりあります。

語順において一番大きな決まりは、「動詞は必ず文の2番目」という決まりです。

上の②の文を改めてみてください。

②   Mary sah gestern den auf dem Bahnhof.

②-1 Gestern sah Mary den Mann auf dem Bahnhof.

②-2 Den Mann sah Mary gestern auf dem Bahnhof.

②-3 Auf dem Bahnhof sah Mary gestern den Mann.

文頭の語は自由ですが、動詞sahは必ず、文の2番目の位置を占めています。

これは、ドイツ語の通常の文が必ず従わなければいけない規則です。2番目は必ず動詞なのです。

英語では、別にYesterday, Mary saw… といった感じで、文頭に副詞を持ってきても以降の語はそのままでいいですが、ドイツ語では、文頭に何を持ってこようが、動詞は2番目。これ、絶対。

分離動詞と枠構造

語順に関わって、もう一つ、ドイツ語ならではの働きをする語があります。

その名も「分離動詞」です。

もう、名前の通りですが、動詞が分離するのです。

たとえば、分離動詞に einkommen というものがあります。お金などが「入ってくる」という意味です。(英語のincomeとちょっと似ていいませんか。)

この語が、文中で使われると、ドイツ語ならではの働きをします。

Eine große Summe kommt ein.
(大金が入ってくる。)

einkommenという動詞が、分離して、先端のein-が文末に来ています。これが分離動詞の働きです。前綴り(接頭語の一種)であるeinが語幹のkommenから分離して文末に来るのです。

元は1つだった動詞が、文中では2つに分かれて書かれるというのが、ドイツ語ならではの「分離動詞」のはたらきです。さながらウルトラホーク1号のような動詞なわけです。(分からない方は「ウルトラホーク1号」で検索してみてください。)

ドイツ語では、動詞と最も強く結びつく要素は、文末に来ます。

元は1つの単語だったわけですから、分離動詞ein│kommenの、語幹部分kommenと最も強く結びつくeinは文末に来るわけです。

こうして、文の核となる「動詞」とそれに「一番強く結びつく語」は、それぞれ「文の2番目」「文末」に配置されるわけです。

通常の文なら、いつでもこの原則は変わりません。

さながら、「2番目」と「文末」に重要な語を配置して、文全体のフレームをがっちりと固めているかのようです。この文構造のことを、ドイツ語では「枠構造」といいます。

格変化と並んで、ドイツ語のもっとも大きな特徴の一つです。

まとめ

ドイツ語は、音にも単語にも語順にも、「ドイツ語っぽさ」みたいなのがあふれんばかりのおもしろい言語です。

日本人がドイツ語の初級文法を学習する時に、一番挫折しやすいところが「分離動詞」「形容詞の格変化」のところだと言っていた先生がいました。

(もう一つ、大変理解に苦しむ「接続法」という文法事項もありますが、初級文法ではあまり詳しく扱われないことが多いです。)

確かに、分離動詞も格変化も、仕組みを理解するだけはそれほど難儀なことではないのですが、それになれて自然と使いこなせるようになるには、かなりの時間をかけて練習をしないといけません。

ただ、そこを乗り越えるとドイツ語をマスターするまでの道が一気に近づいて感じるはずですので、これらの単元がでてきてもあきらめずに学習してみてください。

ドイツ語の基本的特徴を扱った書籍には次の本がおすすめです。著者の清野先生は、初級から上級まで、様々なドイツ語関係の書籍を出版されている有名な先生です。

これらの基本文法をある程度身につけた後は、後は、単語を覚えてドイツ語をより「使える」ようになりましょう。

単語をくっつけてまた単語をつくるドイツ語では、基本的な単語を覚えてさえしまえば、あとはかなり楽に語彙を増やしていくことができます。

語彙学習も文法と同じで最初が苦しいですが、そこを乗り越えると一気に視界が開ける感じがドイツ語では味わえます。

以上、ドイツ語とは、シリーズでした。

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