英検1級は言わずと知れた、実用英語技能検定(英検)の最高級です。今回はそんな英検1級の英作文(ライティング)について、簡単に紹介したいと思います。
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英作文の概要
英検1級英作文の概要は以下の通りです。
語数…200-240語(5段落)
配点…全体の25%
英検の英作文はわりときっちり構成が決まっています。
試験時間はリーディングと合わせて100分です。リーディングには十分時間を確保することを考えると、ライティングに使える時間は30分程度と思ってください。
書くべき語数は、200-240語と、このレベルのライティング試験にしては少ない方です。同レベルの他の英語試験は、もっと書くべき語数は多いです。ケンブリッジ英検CAEでは500語程度、IELTSでは400語、TOEFLでは500語以上を書かないといけません(いずれもライティングで2題。)
そう考えると、英検のライティングは、かなりコンパクトです。配点が25%ある割りに30分で220語程度は軽量級です。
もちろん、ライティングにもっと時間をかけることもできます。ただ、英検筆記はどちらかというとリーディングがメインの試験だと思います。英検の代名詞である語彙問題や、抽象度の高い読解問題に十分時間を使うのが得策です。
そう考えると、ライティングは必然、いかに時間をかけずにしっかりした解答を書き上げるかが問題になります。
1級ライティングの特徴
英検1級のライティングは次のような特徴があります。
・理由は必ず3つ書く
・採点は割と甘い(個人差あり)
テーマ
英検英作文のテーマは社会性のある問題が扱われることがほとんどです。環境、政治、文化、国際関係、テクノロジーなど、幅広く「社会」に関する話題が一般的です。
こういったテーマは背景知識があると格段に書きやすくなります。そのため、普段からニュースを見たり新書を読んだりしておくことは英作文にはとても有利にはたらきます。
もちろん、後述するような英作文対策本で背景知識をおさらいしておくことも大切です。その上で、英語でどのように表現するかを考えていきましょう。
段落構成
1級英作文は、エッセイの構成もすでに問題で指定されています。introduction, main body, conclusionで構成し、かつ理由は3つ書かないといけません。そう考えると、必然的に次のような5段落構成になります。
理由①
理由②
理由③
結論
このように英検英作文では構成は割とはっきり指定されています。1段落あたり、せいぜい50語になってくるので、はっきり言って「たいしたことは書けません」。
ある程度決まった書き方にその都度アイディアを当てはめるだけなので、慣れてしまえばそれほど難しい英作文ではありません。
(このように、英検英作文はパターンとテンプレートで案外書けてしまいます。これは英検英作文を批判するときによく指摘される点です。)
採点は甘め
英検英作文は割と採点も易しめという印象があります。こればっかりは個人の感想なので、なんとも言えません。
ただ、調べてみた感じ、英検英作文の採点は甘いという印象をもっている方は多いようです。
IELTSの英作文で満点の9.0なんてまあ出るもんではないですが、英検1級英作文では満点かそれに近い点数は割と簡単に出せます。
私も初受験で30/32点でした。
だれがどうやって採点しているかは分かりませんが、普通に決まりを守って、それなりの語彙を使って書いていたら、合格に十分なスコアは出てくると思います。
英作文対策本
英検1級英作文には定番の対策本があります。
それは、ジャパンタイムズの『英検1級 英作文問題完全制覇』です。
内容
ジャパンタイムズの英検教材は使いやすく、かつ充実した内容の教材が多いです。この英検1級英作文教材も例外ではありません。
この教材の構成は次のような感じです。
2章 コンテンツブロック
3章 実践問題
1章では、1級英作文の概要、時間配分、傾向などが説明されます。その際、序論結論の書き方についても教えてくれます。
さらに、よく使う語句のパラフレーズ(言い換え)表現なども指南してくれる章です。ここは必読です。
2章では、解答のbodyになる部分の具体例「コンテンツブロック」が、ひたすら212個並んでいます。
この本のコンセプトは、この「コンテンツブロック」なる塊を組み合わせて、いろんな内容に題材に対応できる解答力をつけるというものです。
3章ではそれを踏まえて30題の実践問題が並んでいます。それぞれの問題に、賛成派と反対は両方の解答が用意されています。
実践問題の解答例の3分の2は、第2章の「コンテンツブロック」を使用しています。残りの3分の1は実践問題で新たに提供されている段落ブロックです。
いろいろな情報を「組み合わせて」幅広い題材に対応できるように設計されています。
使いかた
この問題集の1章・2章は読んでおいて、3章ではとにかく実践問題を自分なりに解答を作成して見ましょう。
2章は時間がないなら読み飛ばしても良いと思います。ただし、3章の解答例は自分が賛成派だろうと、逆の立場の解答例も読んでおくことをおすすめします。
その方が深い議論が組み立てられますし、新たな発見があるものです。
英作文に限りませんが、自分と異なる立場の意見というものは必ず触れておくことが重要です。その下地があると、いざというときに独りよがりの議論にならずに済みます。
3章の実践問題は30題ありますが、できたら全部1度は自分で解答を作っておきましょう。これでほとんどの作文問題に対応できるはずです。
また、この経験は2次試験で面接をするときにもダイレクトに生きてきます。
面接では英作文で書いたような事柄を1分間で用意し、2分のスピーチを組み立てないといけません。そのためにも、英作文ではつねにスピーキングを意識しておきたいところです。
まとめ 「日本人的」英作対策
1級に限りませんが、英検の英作文は、パターンさえしっかりしていればそれなりに高得点をとることは難しくありません。
まずは、量を書いてみて、パターンになれることです。
回数をこなしていくと、「こんなときは、こんな議論を組み立てる」ということが分かってきます。そうしていく中で、どのような問題が出ても対応できるようになっておきたいところです。
英検の英作文は、パターンだけで乗り越えられるとよく批判されます。
この批判はもっともです。1級だろうと割と決まり切った作文である程度は乗り越えられるのは事実です。
先ほど紹介した『英作文完全制覇』は、まさに「型」を身につける本です。
私はこの教材は、とても「日本人的」な教材だと思っています。
まず1章では、語句単位で解答の書き方を教えてくれます。その上で2章では段落単位で解答の部品を羅列してくれています。そして、3章でその部品を1つの解答に組み立てるわけです。
この、部品を組み立てて全体にもっていくという姿勢がなんとも日本人らしいと感じます。全体のバランスに当てはめる前に、とにかくそれぞれのパーツを磨き上げる。そしてそのパーツの品質がしっかりしているからこそ、どの製品にも使用できるわけです。
全体の論理を重視するアカデミックライティングでは、「コンテンツブロック」なる材料の羅列をみにつけたところで対応できない問題も多いです。実際、IELTSのライティングでは、英検1級で高得点がとれる人でも、高得点はなかなかとれません。
中学校の音楽の時間のようにパート練習→全体練習という流れはまさに日本人的です。海外のオーケストラや合唱団ではパート練習などあまりしないそうです。全体のアンサンブルのなかでパートを磨いていくことを重視しているからでしょう。
どちらがいいという訳ではありません。
英検英作文は「パート練習」に磨きをかけることで乗り越えられる試験であることは確かです。IELTSのTask 2やTOEFLの2問目はそうはいかないかもしれませんが、だからといって英検の学習が無駄になるということでもないと思います。
とりあえずは、英検で書き方や段落の構成を身につけておいて、より高度なライティングにつなげるという姿勢も必要だからです。
忘れてはいけないのは、英検の英作文で高得点がとれたからといって、学習をやめないことです。そうしたら、着実に真の意味での「ライティング力」はついていくでしょう。