2019年2月2日におもしろい趣向の英単語集が発売されました。ジャパンタイムズから出たその単語帳の名は、『英語を英語で理解する 英英単語 上級編/超上級編』というものです。その名の通り、英語の上級者を対象としたレベル設定になっています。
今回は、その中でも英検1級レベルの語彙を多く含んだ『超上級編』の1冊についての記事になります。英検1級用の他の単語集などとも収録語を比較しながらおすすめの使い方について考えていきましょう。
Contents
『英英英単語 超上級編』
基本情報
この『英英英単語』という単語帳の基本情報は以下です。
見出し語数・・・1000語
収録内容は以下
- 単語
- 発音記号
- 単語の日本語訳
- 英語定義
- 類義語対義語
- 派生語
- 例文
- 例文の日本語訳
- 章末問題
本の大まかな構成は以上になっています。
単語によっては2つ以上の定義が載っていることもあります。その際はそれぞれに例文がついています。
収録語のレベルは「20000語レベル」と謳われています。いわゆる「英検1級レベル」の単語を多く含んでいることになります。語の性格はまさに「英検っぽい」という語が多いです。社会や政治・法律に関する語が中心になっています。
ただし、見出し語の1000語というのは、このレベルの単語集としては少ない方です。
この本は難単語を網羅したというコンセプトではないようです。むしろ、難単語の中でも特に重要な語やニュアンスに気をつけるべき単語を集中して学ぶように設計されています。
単語の説明も英語で読まないといけないので、普通の単語集よりも時間がかかると思います。その分、単語の細かなニュアンスまで手が届く単語もあります。そう考えると、この1000語という収録語数はかなり考えられた数字だと思います。
英語定義がメインになっているという以外は、割と普通の単語集と変わりません。類義語や派生語、時折ニュアンスや使用場面の解説がつくぐらいです。
この本は、100語で1ステージとなるように章立てがされています。各ステージの終わりには章末問題があります。
章末問題では、英語定義と単語の最初の文字が与えられており、単語を答えるようになっています。順番は見出し語とは違う順にシャッフルされています。これも使いやすい工夫がされていると思います。
以下ではこの本のメリット・デメリットを考えていきましょう。
メリット

- 表紙が格好いい
- 英語定義でニュアンスを学べる
- パラフレーズの練習になる
- 章末問題が使いやすい
この本は全体としてかなり質の高い教材に仕上がっていると私は思います。ジャパンタイムズの英語教材はユーザーフレンドリーでかつ高品質の教材が多いですね。
表紙がなにより格好良いです。これはモチベーションを保つ上では結構大切なことだと思います。カバーをとった中身もシンプルでスタイリッシュな感じになっています。
中身のレイアウトもきれいにまとまっており、学習がしやすいです。
この本の最大の特徴である英語定義は、英語の語感をつかむにはうってつけです。ほとんどの語は1つの定義しか付いていないので、確かに時折言葉足らずのところはあります。それでも、そこは各自で英英辞典を引くなどの工夫で十分補うことが出来ます。
英英辞典の定義に当たることは、時間はかかりますが、その分確かなメリットがあります。たとえば、sparseという単語の定義を『英英英単語』と『パス単英検1級』で比べてみましょう。
パス単 | sparse | まばらな |
英英英単語 | sparse | small in amount, often thinly spread out (まばらな、希薄な) |
「まばらな」とだけ覚えていたら、「点在している」イメージはできても、「量が少ない」というところまで考えが及ばないのではないでしょうか。(量が多くても点在はできますよね。)
英英の定義にあたると、まず《small in amount》と「少量」が説明されます。「点在」はどちらかというと後付けの情報になりますね。
なぜこの例を挙げたかというと、私があるとき、TOEFLのリーディング問題をやっていたときに、この単語の定義を選び間違えたことがあったからです。英英辞典の《small in amount》というニュアンスをつかんでいたら防げた間違いでした。
TOEFLの語彙問題は、長文の中の単語の正しい定義(言い換え表現)を選択するというものです。単語の意味を知っているだけでなくある程度正確なニュアンスも頭に入っておく必要があります。英英英単語ではそういった単語の「深い」意味にあたることができるわけです。

デメリット
もちろん、デメリットもあります。思いつくデメリットとしては、以下のことが挙げられます。
- 値段が高い(泣)
- 収録語が少ない
- 語源情報が皆無
収録語は先述の通り1000語と少なめです。
紙面の都合で仕方ないのは理解できますが、値段が2500円以上することを考えると、なんだか物足りない数である感じは否めません。
その分、内容は充実しているので十分元はとれるという考え方もできます。
収録語は1000語程度で、『パス単英検1級』や『究極の英単語』との重複も多いです。知っている単語の理解を深めるための本だという位置づけをしておかないと、もったいない買い物と思ってしまうかもしれません。
また、語源情報は一切載っていません。
別に語源は必須だとは思わないのですが、せっかく英語定義でニュアンスにあたるようになっているので、私はこの本には語源が欲しいと思ってしまいました。難単語は語源を知ることで、より語感やニュアンスを理解できるからです。
他の単語集との比較
以下では、『英英英単語 超上級編』を英検1級レベルとされる他の単語集と比較します。対象は『英検1級 でる順パス単』(旺文社)と『究極の英単語 vol. 4 超上級の3000語』(アルク)です。
特に収録語の重複について比較していくので、どちらかを『パス単』・『究極』→『英英』の順で学習しようと思っている方は参考になると思います。

vs『パス単英検1級』
英検1級の定番単語集といえば『でる順パス単英検1級』です。
『パス単』は2100語を収録しています(熟語除く)。『英英英単語』の倍以上の見出し語数になります。
収録語の傾向は結構両者は似ている印象です。どれもいかにも英検っぽい単語を扱います。
その中で、『パス単』と『英英英単語』の見出し語の重複は608語でした。(※ 形容詞にlyをつけただけの副詞や動詞から出来た過去分詞も別語と扱っています。派生語を考慮すると実際に「意味が分かる」語はもっと多いでしょう。)
『パス単』→『英英』と進んだ場合は、4割の語は既に知っている単語と言うことになりますね。これをどう考えるかは学習者次第ですが、先のsparseの例にあるように、知っている単語でも英英で学び直す意義はあるはずです。
『英英』の各ステージ中で、『パス単』には収録されていない語は次のようなものがありました。参考までに。
ステージ1 | retrograde, primordial, awry, extraneous etc… |
ステージ2 | quibble, arable, reverie, puny etc… |
ステージ3 | glaring, bash, fawn, ludicrous etc… |
ステージ4 | pesky, aghast, unkempt, cuddle etc… |
ステージ5 | punitive, reconnaissance, bustling , makeshift etc… |
ステージ6 | incarcerate, swab, atypical, arid etc.. |
ステージ7 | brash, bane, compendium, assent etc… |
ステージ8 | philistine, brazen, enthrall, ensconced etc… |
ステージ9 | mercurial, elated, spate, tacit etc… |
ステージ10 | jittery, lassitude, panache, lugubrious |
いかがでしょうか。『パス単』には未収録の語ですが、英検1級に出てきたこともある語がならんでいますね。
ステージ8にある《ensconced》なんか、最新の2018年第3回英検1級に正答の選択肢として出ていましたね。知らなかった受験者も多かったであろう単語です。(私も知らなかった。)
vs『究極の英単語vol.4』(SVL)
『究極の英単語』はアルクの学習語彙リストであるSVL12000語を全4巻にわたってすべて収録した 単語集です。
英検1級レベルとされる『vol. 4 超上級の3000語』には、SVLの最後の3000語、つまり9001~12000語レベルの単語が収録されています。
『英英』と『究極の英単語 vol. 4』の重複は584語でした。『パス単』同様、ほぼ6割の単語が重複していることになります。
ちなみに、このうち3つの単語集すべてに掲載されている語は398語でした。
以下は、『英英英単語 超上級編』の単語をSVLで参照したものです。
SVL1~9 | 『究極の英単語 vol. 1~3』 | 86語 |
SVL10~12 | 『究極の英単語 vol. 4』 | 584語 |
SVL外 | 12000語レベル以上の語 | 330語 |
以上より、『英英英単語 超上級編』には、SVL外の単語が330語(全体の3分の1)含まれていることが分かります。
英検1級の語彙問題ではSVL外の単語も全選択肢84のうち、毎回20語ほどは出てくるのでこのレベルの語彙を収録している『英英英単語』のような単語集は貴重なわけです。
実際の英検の問題をSVL参照しています。詳しくは以下の記事を参照ください。
2018年第2回1級
2018年第3回1級
『パス単』と『究極の英単語』の比較はこちら。
【英検1級】2大単語集(パス単・究極の英単語)を徹底比較 収録語から何が見えるか

まとめ
今回紹介した、『英英英単語』についてかなり長々と書きました。
結論は、とてもおもしろい単語集であるということです。
収録語もしっかり選定されているので、『パス単』など他の単語集を終えてから学習しても十分に効果があるでしょう。
いきなり『英英』を使う際には、1つ下のレベルである『上級編』と合わせて使うと『英英英単語』だけを使いつつ網羅性も上げることが出来るでしょう。
パラフレーズの練習にも英英定義にあたることは役立ちます。
ライティングやスピーキングで課題や知らない概念を適切かつ瞬時に言い換えるには英英辞典にどれだけ触れていたかもけっこう重要です。
従来の単語集にあまりないコンセプトの教材としてとても価値のあるものだと思います。
1000語×2冊で各2500円は結構上手く商売しているなあなんて思ってしまいますが、その価値は十分にあるといっても良いでしょう。