英語のスピーキング力をつける練習のひとつに「瞬間英作文」というものがあります。その草分け的な教材に新たな仲間が(結構前ですが)加わりました。ようやく私も1周できたので、レビューしたいと思います。
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「基本動詞」トレーニング
「瞬間英作文」といって真っ先に思いつくのは、こちらです。
瞬間英作文を掲げた本は今でこそ多いですが、本書はその元祖のようなものです。現在でも英語教材のベストセラーとしていろいろなところで紹介されています。
このシリーズにはいくつか種類があるのですが、その最新刊が11月に発売されました。
その名も、『バンバン話すための瞬間英作文「基本動詞」トレーニング』(森沢洋介・ペレ出版)です。
このシリーズのコンセプトは、次の通りです。
繰り返し練習することで英語を話す回路を頭の中に生み出す
言ってしまえば、左が日本語・右が英語の例文集という見た目なのですが、これが英語のアウトプットの練習にとてもよいわけです。
元祖の青い本は、文法事項別に英文を配列していました。ある言語の基本的な「しくみ」をマスターするには最も効果的な配置だと言えます。(多くの類書がこの配列に従っています。)
今回発売された「基本動詞」版は、文法にはほとんど全く重点が置いていません。
その名の通り、「基本動詞」を使いこなすために設計されているわけです。
基本動詞は、次の15個が扱われています。
get, give, put, take, go, come, make, have, do, keep, let, see, say, be
見ての通り、中学生でも全部知っているような動詞です。基本動詞なのですから当然です。
本書では、最初の100ページにわたって、基本動詞の用法・意味の広がりが解説された後、80課に及ぶ瞬間英作文のページが続くわけです。
これが身につく!
この本を使うメリットは以下にあります。
・使えそうで使えない表現が身につく
・基本熟語・句動詞が使えるようになる
・学校ではあまり習わないが、よく使われる口語表現が学べる
「基本動詞」というものは、知らない人はいませんが、「使いこなせる」という日本人はあまりいないものです。
理由としては、学校であまり基本動詞にフォーカスした授業は展開されないからというのが考えられます。
『瞬間英作文』最新刊、基本動詞に苦戦。
発表する
尽きる
へたばる
洩らす
崩落する
譲る
放出する
叱る
降伏する全部で使う動詞…
そう
giveです。なかなかぱっとは出てこない。だから話せない。だから練習。
(『バンバン話すための瞬間英作文「基本動詞」トレーニング』134ー135ページ参照)
— kazetori「やるせな語学」 (@kazetori2) 2018年12月10日
基本動詞を使った句動詞や熟語はどちらかというと口語表現に多いです。必然、受験のために必要な言い回しとして教科書ではあまり扱われません。
次の例を見てみましょう。この『瞬間英作文「基本動詞編」』に出てくる例文です。
①私たちの息子の命が他の何よりも大事です。
②このセーターは全サイズあります。
(『バンバン話すための瞬間英作文「基本動詞」トレーニング』(森沢洋介・ペレ出版)p.174-175)
この日本語文を英語にするならどのような表現が思いつくでしょうか。
恐らく、普通に日本の学校で英語を習った人なら次のような書き方をすぐに思いつくはずです。
①Our son’s life is more important than anything else.
②This sweater is available in all sizes.
文法の授業で「比較」を習うとき、①は「比較級を使って最上級の意味を表す表現」とでも紹介される言い方です。一方、②では、単語の小テストを経験してきたような人なら、availableという単語を思いつくのではないでしょうか。
本書では、こういった文を「基本動詞」を使って徹底的に話す練習をしていくわけです。
『瞬間英作文「基本動詞編」』では、先の例文は基本動詞comeを使って次のように表現されています。
②This sweater comes in all sizes.
(『バンバン話すための瞬間英作文「基本動詞」トレーニング』(森沢洋介・ペレ出版)p.174-175)
英語が分かる人なら、こういった文の意味を理解するのにはほぼ苦労しません。一方でいざ「自分で口を突いて出てくるか」というとなかなかそうはいかないものです。
そしてこういった「基本動詞」を使った言い回しは、映画を見たり小説を読んだりすると頻繁に目にするものです。
『瞬間英作文「基本動詞編」』では、そういった基本動詞を使った様々な表現を、会話で「使える」レベルまで訓練することを標榜しています。
また、同じような言い回しを使う文を、少しだけ語をかえて繰り返し練習できるようになっています。語学において不可欠な反復練習という要素もしっかり含んでいます。

使い方
使い方はオーソドックスに、まずは1周することがおすすめですね。
①動詞の説明を読む
②日本語を見ながら瞬間英作文
③反復(瞬間的に・止まらずできるまで)
④音声CDで瞬間英作文
⑤出来なかったところを練習
本書では、見開き4ページで、同じ表現だけど違うバリエーションの文を練習できるようになっています。そのため、動詞の使い方や句動詞の意味は割とすぐに覚えてしまえると思います。
あとは、反復あるのみです。
あまり使う練習はしてこなかったけど、実際に使えたら格好良いという表現ばかりです。どんな難単語を知っていている人でも、「基本動詞」を練習する価値はあるでしょう。
まとめ
私がこの本を使って練習するときは、筆記試験に出てくるような高尚な表現を、口語的にあえてパラフレーズしているような感覚を覚えていました。
確かに、本書に出てくる表現は(すべてではありませんが、)俗っぽい言い方が多いです。句動詞やイディオムを使うとどちらかというとカジュアルな印象になりがちだからです。
当然、試験のエッセイライティングや面接で使うと減点されてしまうような表現もあることでしょう。ただ、高尚な文章に使われる英語だけが英語ではありません。
本章を使っている間、私は学校文法を「使える口語表現」の中で解体して再構築しているような気持ちで練習しました。(学校文法不要論を唱えているわけではありませんよ。)
どれだけ難しい構文を解釈できても、難単語を知っていても、難関資格を所持していても、簡単な英語が「使えない」では虚しいものです。
ネイティブなら子どもでも言えることを普通の日本人が言えないのは、ある意味当然です。そういった「ネイティブ的」表現が実は一番難しく、一番練習が必要であるからです。
本書は、そんな「ネイティブ的」表現の手堅い学習教材になっています。
「瞬間英作文」の練習は、(特に日本人が西洋の)言語の壁を乗り越えるのに最も効果的な練習だと私は思っています。
それ故、《基本動詞×瞬間英作文》の存在意義はとても大きいものではないでしょうか。