英検準1級の英作文を一言で言うと、コンパクトかつ真面目なエッセイライティングです。限られた語数で現代社会を取り巻く身近な問題について論じることができたらそれほど苦しい試験ではありません。今回は、そんな英検準1級英作文の内容と、おすすめの参考書、そして私が満点を取った解答例を紹介します。
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準1級英作文とは
英検準1級の英作文の概要は次の通り。
配点・・・試験全体の25%
試験時間・・・およそ25分
語数・・・120-150語
試験時間はリーディングと合わせて90分です。語彙問題や読解問題の時間を十分に確保することを考えると、英作文にかけられる時間は25分ほどと考えておきましょう。
書くべき語数ですが、準1級では120-150語となっています。この語数は、このレベルの試験としては実はかなりコンパクトです。
同レベルとされるケンブリッジ英検FCE(B2)のライティングでは、80分で170語程度のエッセイを2つ完成させないといけません。そう考えると、25分で150語程度という英検準1級の英作文はかなり「小さくまとまった」試験だといえます。
トピックと書き方
準1級では社会問題につながるようなトピックが選ばれます。
多くは「賛成反対」を問うような問題です。準1級では1級ほど高尚な議論を要求してこないので、それほど深い背景知識が必要なテーマはそれほど採用されません。
しかし、英検の問題の常として、やはり普段からニュースや時事問題に触れていると書きやすさが格段に違ってくるような問題ではあります。
英検英作文は、語数もコンパクトですが、書き方もある程度指定されています。
意見に対する理由は2つあげるということは指定されています。さらに、その際理由を組み立てるのに必要な観点がすでに4つ与えられています。
解答するときは、4つの観点のうち2つを選んで意見をサポートする理由を書くわけです。
必然、序論、理由①、理由②、結論の4段落構成になります。エッセイライティングとしては、とても書きやすく指定がなされている方だと思います。
準1級満点解答を公開
試験全体としては、準1級は難しいです。日本人で英検準1級を持っていたら、それはほとんどの日本人よりずっと英語ができるということを意味します。
準1級をもっていたら、大学入試ではセンター試験を事実上の満点として扱ってくれる大学も多いです。
それほどの試験ですが、英作文や二次の面接に関しては、けっして英語が完璧に使いこなせることを要求しているものではありません。
確かに、基本文法は不自由なく使えるレベルまで身についていないといけません。しかし、語彙問題で出てくるような難しい単語を駆使したり、複雑な文型を使いこなしたりするほどの英語力は不要です。
合格するだけなら、基本文法を使いこなし、自分の意見をしっかり書くことができたら十分です。高得点で合格するなら、さらに語彙や文法を幅広くしていくという作業が必要です。
私は英検準1級を2回受けたことがあるのですが、そのうち1回は満点をもらうことができました。ここでは、せっかくなので、その答案を公開します。
このときの問題(2018年第3回)のトピックは「日本企業は外国人労働者をもっと雇うべきか」というものでした。
私が書いた解答がこちら。
I am of the opinion that Japanese companies should employ more workers from abroad. Japan’s aging population will decrease workforce. Also, globalization is compelling companies throughout the world to reconsider their employment policies.
The current aging society in Japan will soon suffer a serious problem: a lack of workforce. The number of young workers is declining and there are, on the other hand, wider variety of tasks to be performed. Without relying on industrious workers overseas, Japan’s whole economy could not get over this situation.
Moreover, companies need to adjust to today’s globalized world economy by introducing different ways of thinking. If the entire personel in a company were Japanese, the company would be less competitive without new ideas offered by people with completely different backgrounds.
Considering these points, Japanese companies should put more emphasis on hiring foreign people. This is an inevitable change for companies to survive in this era of globalization.
(153 words)
試験中にすべて問題用紙に解答を書き写したものです。スペルミス含めて完全再現になっているはずです。
この解答では、語数が指定を少しオーバーしています。語数が点数に影響されるのかを知りたかったので、あえてそうしました。結論、語数オーバーは減点にはならないということがわかりますね。
準1級に合格するだけなら、もちろんこれほど書く必要はありません。
この解答にもいくつか細かい文法・語法のミスはあります。それでもスコアとしてはMAXがでてくるということがわかりますね。
準1級英作文の対策
英検準1級英作文に特化した対策本としては、現在おもに3つが出回っています。
- 『英検分野別ターゲット 英検準1級ライティング問題』(旺文社)
- 『英検準1級ライティング大特訓』(アスク×植田一三)
- 『最短合格! 英検準1級 英作文問題完全制覇』(ジャパンタイムズ×ロゴポート)
どれも2年以内に出版された最新の教材です。そして、これらは書店にある語学教材の中でもかなりの良書といえる部類の教材です。
どれを使っても準1級合格にとどまらない、使える英語力をしっかり鍛えてくれる学習ができると思います。
練習問題や、よく使う語句の様々な言い換え表現はどの本にも収録されています。個人の弱点やスタイルにあわせて、気に入ったものを選びましょう。
『英検分野別ターゲット 英検準1級ライティング問題』
英検書と言えば旺文社、その準1級英作文対策本は2018年に改訂されたばかりで、最新の傾向を反映しています。
3冊の中では一番オーソドックスな内容です。前半は英作文の内容、解説で後半が練習問題という構成です。
練習問題は全部で13題あり、すべてに賛成・反対両方の立場から意見が書かれています。解答例の英語も準1級レベル相応の表現を使っているので、いいお手本になるでしょう。
しかし、この本の一番の目玉はそれではなく、別冊のトピック集だと思います。この冊子では、20のトピックについて考えられる論の立て方や、使える語彙を紹介しています。
書くことが思いつかないという人にはとても役立つものになるでしょう。分量自体もスマートにまとまっているので、読むのにそれほど時間もかからずアイディアを整理することができます。面接にも役立ちます。
『英検準1級ライティング大特訓』
英語の達人植田一三先生も、準1級英作文本を出版されました。ほかの教材に比べてすこしだけ個性が強い感じですが、とても有益な教材に仕上がっています。
この本は、類書の中ではいちばん、「英語そのもの」についてページが使われています。
重要なつなぎ表現(ディスコースマーカー)やよくある間違いなどが例とともにまとめられています。英語を使い始めて間もない人で、まだ高校基礎レベルの文法ミスが「ないとはいえない」という人にはとても有益です。
基本的だけど、よく間違えるという項目も多数指摘されています。そのため、高校生が大学入試に向けて学習するのにも十分使えるような情報が多いです。
英語の基礎を見直しつつエッセイライティングにつなげていくならベストの1冊です。
著者の植田一三先生は、多くの英語学習本を出している、業界では有名な達人です。英検1級や通訳案内士にステップアップするつもりのある人なら、知っていて損はない著者です。
『最短合格! 英検準1級 英作文問題完全制覇』
最後に紹介するのは、ジャパンタイムズ×ロゴポートの対策本です。
この本は、3冊の中ではいちばん、書くべき「内容」に重点が置かれています。
この本のスタイルは、200以上の段落のかたまり「コンテンツブロック」を組み合わせて様々なトピックに対応する力をつけるというものです。理由を組み立てる際に使える「コンテンツブロック」を一つ一つ学んで、最後に練習問題に使うという構成になっています。
練習問題は24題あり、いずれも賛成・反対両方の立場から解答例が示されます。解答例のボディーには、学んだ「コンテンツブロック」の文章がまるごと使われています。
部品をこしらえて全体を組み立てていくというプロセスを、じっくり取り組みたい人にうってつけの教材になっています。
この本は、コンテンツブロックが扱う分野が幅広く、かつ使いやすいので、二次試験や1級の英作文にステップアップするときにも大いに役立つはずです。
まとめ
英検準1級の英作文を仕上げるには、高校1年で習うような文法の基本事項はある程度考えることなく使いこなせないといけません。
その上で、準1級が英作文で合格点がとれるということは、自分の意見をなんとか伝えることができるということになります。難しいことや高尚なことはいえなくても、社会問題や日常的な話題について、とりあえずは「どんなことでも」考えを伝えることができると、準1級は合格できます。
準1級の英作文はコンパクトかつパターンがかなり決まっているので、批判されることもあります。しかし、この英作文問題に向けて練習することは、真に英語を使える人になるためにとても有効です。
スピーキングやその先の1級を見据えて学習していくと、とても有意義な学習になると思います。