思い立ったが吉日というわけで、私kazetori (@kazetori2 )は、韓国旅行に行ってきた。
普段は休日ともなれば、ほとんど家から出ることもなく過ごす私にとっては、ほとんど考えられないアドベンチャーである。今回は、そんな一日韓国旅行の話。
Contents
出発まで
出発までの2週間ほど、私は韓国語に手を出した。初めて習う言語であった。
アマゾンで評価が高かったテキストを購入し、早速ハングルを読む練習から始める。
ちなみに使ったのは、このテキスト。
新しい言語を習うなど、私にとっては5年前にイタリア語に手を出して以来である。新しい文字となると、もっと前にギリシア語を習って以来である。すこぶる新鮮な気持ちでテキストを開いた。
なるほど、文字は非常に体系的に作られていてすこぶる便利である。このパーツがどのおとで・・・、みたいなのが決まっている。あの独特のハングルの文字は、それぞれの部分で担うローマ字の音があるわけである。
日々それを私は学習したわけであるが、結論から言うと、あまり読めるようにはならなかた。韓国語の字母と音の関係はとてもわりやすいのであるが、やはり、アルファベットを使わない言語というのはなんというか、私の偏った言語脳にはしっくり来ない。
私にとっては、全く習ったことのないスペイン語の方がよっぽどわかりやすい。見た目上、英語やイタリア語から簡単に意味が予想できる語が多いからである。
ハングルは日本語と似ている性格もあるのだが、いかんせん、文字が全く違うので見た目はまったく違う言語である。未知の文字を使う言語を習う難しさがここにある。
なんていろいろと言っているが、私が韓国語を読めるようにならなかったのは、実際にはひとえに私の怠惰のせいである。なかなか読めるようにならない自分に対して嫌気が差して、も~いいや~ってなっちゃったわけである。
だから、ハングルが悪いなんてことはもちろんない。
「そこ違う」

そんな私であったが、土曜日、午後の便で出発した。
関空から午後1時過ぎの便であったため、割とゆったりした船出であった。
入国審査を過ぎて、いざ搭乗。飛行機に乗るのは2年ぶり、海外に渡るのはかれこれ6年ぶりである。
ちょっとだけわくわくしながらLCC機内の狭い座席についた。シートベルト締めて、準備万端。さあ、新たな世界へ出発だ。
そのとき、「あの、ここ私の席ですけど」と私は声を掛けられた。
「チケット見せてください。あの、これ、窓側ですよ。」
私は窓側の席を指定されたにもかかわらず、通路側に座っていたのである。声を掛けてきたのはいかにも旅慣れてますという感じの女性であった。「まったく、なにやってんの」とでも言いたげな感じであった。(或いは私の被害妄想かも知れない。)
私と言えば、消えるような声で「すいません」と言うのが精一杯であった。新たな世界の探求者は、そそくさと立ち上がり、窓側に移動した。(もちろん、真ん中に座っていた人には一度立ってもらった。)
まったく旅というものは、やりきれない思いをするものである。恥ずかしい。
そんな私を乗せて、飛行機は離陸した。
人生に迷い道に迷わず
着いてから何をしたかというと、正直たいしたことは何もしていない。
そもそもプランもなく行っただけであるので、あまりここで語れることもないのである。ちなみに、行き先は、釜山。
ソウルでなく釜山を選んだのは、航空券が安かったから。ただそれだけである。とにかく目的は家から出ない怠け者が外の空気を吸うことであったので、それだけで目的は達成されたわけである。
釜山の地下鉄・軽鉄道はとってもわかりやすいので、『地球の歩き方』だけをもった私でも十分快適に旅することが出来た。スマホのsimを買おうか迷ったが、結局無しでも十分だった。至る所で無料wi-fiが使えるので、それほど迷子の心配はない。
大阪や京都ではGoogle Mapが手放せない私でも、ガイドブックの地図だけで十分うろうろできるぐらいのわかりやすい街である。

食
ビビンバ
たいして語れることもないので、釜山で食べたものを振り返ろう。
まずは、釜山の繁華街エリアである西安でビビンバを食べた。食べたのはファストフードスタイルの店だった。
自動券売機で買えと指示され、自動券売機の前に私は立ち尽くした。全部ハングル。店員が愛想の欠片もなく「これ押せこれ押せ」と指示してきたので気の弱い私は素直に従った。
運ばれてきたビビンバの味は、まあまあ。(まあ、こんなもんか。)
サムギョプサル
釜山駅の近くのゲストハウスに泊まることになっていた。
チェックインを済ませ、しばし休憩した。9時ぐらいになって、やっぱり何か食べないといけないと思った私は街へと繰り出した。
釜山駅前もコンパクトな繁華街という感じで、市場や外国人街が広がっている。私はうろうろしていると、恐らくロシア人街と思われるところに迷い込んだ。
バーやクラブといった風情の店が並んでいて、入り口では何とも豊満なスタイルの白人女性が艶めかしく立っている。通り過ぎる私に「アニョアセヨ~」と声を掛けてくるが、別に危険なこともない。私は内心ちょっとびびりながら、足早にその通りを歩き抜けた。
ここで一句。
釜山にて ロシア人から アニョハセヨ~
どこかのお店の前で、韓国人のおばちゃんから妥協なき韓国語で話しかけられたが(おそらく「うちの店で遊んでけ」の類)、私は笑顔も見せず完膚無きまでの無視で返した。
私の目的はナイトライフをエンジョイすることでもなく、サムギョプサルを食べることであったからだ。
目当ての焼き肉店があったので、入店。
店員はすこぶる親切で、漢字と英語の表記されたメニューを持ってきてくれた。
国産豚肉のサムギョプサルとカルビを頼んだ。もちろんメクチュも。(ビールのこと。私が覚えたなけなしの韓国語の一つである。)
あっという間に、私の前には一連の焼肉のセットが運ばれてきた。
肉は高級感ある木の俎板みたいなのに載っている。
ニンニク、たれ、刻んだ野菜、キムチ、味噌、サンチュ、スープ、豆腐でテーブルは豪華に彩られた。

正直、これがこの旅の最高潮の瞬間であった。釜山にて、ひとりサムギョプサルを食す。これ、最高。
実を言うと、前日の仕事でちょっとばかり気の滅入ることがあったばかりであったので、旅の前半は気分も乗らなかったのであるが、このときばかりは、サムギョプサルに胸は高鳴った。
ずらりと豪華に食材が並ぶサムギョプサルは、人を元気づける食事である。
ビールも2本(500ml)飲んで、揚々とホテルに帰って寝た。
デジクッパ
翌日は雨模様。しかもかなり強めの。
本当は野外で行きたい場所があったのだが、雨のため諦め、釜山きっての市場をめぐることにした。なんとものんびりした午前を味わうのも悪くない。
釜山の富平市場にて、さて、次は何を食べよう。
できるだけ韓国っぽいものを食べたいという、ありきたりすぎる願望を満たしてくれる店を探しつつ市場をうろうろ。
その中に、何とも良い匂いが漂っている飲食店があった。ラーメン屋の匂いであった。
寒かったので、あったかい麺でも食べられるのかと思い、中を覗くと、中には地元民っぽい人しかいない。
ちょっと入る勇気が出なかったが、迷って何度か通り過ぎた挙げ句、入店した。
壁にメニューが掲げられている。もちろん全部ハングル。英語や漢字があるような雰囲気でもない。

メニューを見ながら、私は立ち尽くした。
おばちゃんが、何か言え、みたいな顔でこっちを見てくる。
一番人気のメニューを頼もう。あったかい麺がいいなあ。
私 “What is the most popular?”
おばちゃん「・・・」(何言ってんだお前?)
“The best food.”
「・・・」(もう帰れよ。)
“Noodle?”
「・・・」
私のお願いも何とも不躾ではあるが、おそらくこのようなやりとりがあった。テーブルで食べていた地元のおっちゃんだけが笑顔で私たちのやりとりを見守っていた。
挙げ句の果てに、おばちゃんは私の傘を奪い、一番上のメニューを一突き。
私は厳かに頷いた。それにしようではないか。
そうやって運ばれてきたのが、釜山名物デジクッパであった。図らずとも私は釜山のソウルフード(ややこしいな)にたどり着いたわけである。

落ち着いてメニューをもう一度見ると、私のなけなしの韓国語力でも、たしかに「デジクッパ」と記されていることがわかった。
幸運に感謝して食した。おばちゃんは最後まで1ミリも愛想は見せなかった。
わたしは心の中で一言。
うまいやんけ。
まとめ
食べ物の話だけになってしまったが、以上が私のささやかな週末エクスカージョンの顛末である。
九州出身で関西在住の私からすると、釜山に行くというのはほとんど里帰りと変わらない道のりである。(フライト時間も同じ。)
しかし海を越えるだけで、そこには全く知らない人が違った文字を使って生きているのである。なんとも手軽なこの旅行を糧にまた日々言葉を学んでいくばかりである。
最後にお金の話をしよう。
今回ピーチで取った航空券は往復で15000円ほど。ホテルは3000円ほどのもツインルームを予約した。
このホテルはとてもきれいで個室を使えたので不満はまったくない。挙げ句の果てに、チェックアウトの時、「デポジットだ」といって、2000円分ぐらいお金が返ってきた。

いいの? と思いながらも私は受け取った。実際には1000円ちょっとであの部屋に泊まれたわけである。いまでもあれ、もらってよかったのかと思う。
食費・ホテル代・現地交通費を合わせても10000円はいかなかった。なんとも安く済んだ旅であった。
気軽に行ける「外国」の良さを実感する旅になったわけである。
その結果、私が一回り立派な人間になれたかというと、まったく遺憾ながらそんなことはなさそうであるが、まあ楽しかったので良しとしよう。
