英語の歴史を知ると、ことばはまた違った表情を持って見えてきます。英語史についてざっくりとまとめた記事は以前書きました。今回は、英語史について、もっと詳しく知りたい方に向けて、おすすめの書籍を紹介します。専門書というよりは、気軽に読める本をラインナップしました。
Contents
『knowのkはなぜ発音しないのか』
- 手軽に読める
- 興味深い内容をコンパクトに
- 難しい説明はなし
英語史について、いちばん手軽に読める本は、これです。
タイトルは『語源でわかる』と謳っていますが、中身は英語の歴史に関することになっています。
この本は、英語の基本文法や語彙の疑問について答えるという構成になっています。たとえば、「三単現の-sはなぜ付くのか」であったり、「childの複数形はどうしてchildrenなのか」といったことがわかりやすく解説されています。どの項目も英語史の基本的な知識を身につけるにはちょうどいいです。
英語の疑問に英語史の観点から答えるというコンセプトの本は実は結構数が多いです。本書はそのなかでも一番気軽に読める新書サイズです。文字も大きくイラストも多いのであっという間に読んでしまえると思います。
最初に読むならむしろこのくらいの本の方がいいです。
この本については以前の「英語学」についての記事でも紹介しています。
『ベーシック英語史』
- 少しだけ本格的な内容
- 文法や語彙の項目別に記述
- わかりやすい解説
次に紹介するのは、少しだけ本格的な本です。大学の英語の授業でも採用されたりしているような本ですので、しっかり学びたい人向けといったところでしょうか。
とはいっても、タイトルの通り、英語史について「これは知っておきたい」といった内容をわかりやすくまとめてくれています。専門書の入り口に位置するような記述だと思ってください。
基本的にはとてもわかりやすく、普通の英語が得意な人ならこれぐらい知っておけば十分ということを解説してくれています。中には難しい章もあって、特に私は関係代名詞の項なんかは難しいという印象をもちました。
それでも英語史の観点から英語の各文法現象について「しっかりとした」知識を身につけるにはベストの1冊だと思います。
『英語の歴史』
- 新書版で読みやすい
- わかりやすい解説
- 深い知識も身につく
こちらは中公新書から、『英語の歴史』という本です。副題は「過去から未来への物語」となっています。
この本は、新書版であるためサイズ的にも読みやすいのはもちろん、ところどころイラストや図表が入っていて理解しやすくなっています。
形式としては、ゆるやかに英語の歴史を時代順に語りつつ、各時代に起きた出来事とその影響をまとめていくという形になっています。
「まえがき」でも述べられていますが、決して言語学者や英文科の人向けというわけではありません。むしろ、すべての英語学習者向けになるように、常に「今の」英語との接点を意識できるような記述になっています。
私は以前このサイトで「英語史入門」というエントリーを書いたときは、この本を参考にして書いた部分が結構多いです。
この本は、最初に現代の英語について概観し、古代からまた現代へと続く一つの物語として英語の歴史を語っていくという構成になっています。所々には挟まれたコラムもおもしろく、読み飽きません。
新書とあって値段も手頃なので、手に取りやすくなっています。
『英単語語源ネットワーク』
- 内容重視の語源本
- 単語の語源に特化
- ギリシア語・ラテン語起源の語について体系的に整理
この本は、英単語の語源を扱った本です。著者は、多くの英語教材を世に出しているクリストファー・ベルトン先生です。
英単語の語源を紹介する手の本はいまや書店に無数にありますが、本書はそのなかでは非常にしっかりした内容だと思います。
めちゃくちゃ深い内容を扱っているというわけではないのですが、一般的な語源中心単語集よりは英語の語源と各単語を「体系的に」整理しています。
この本は単語集というよりは、語源について「読む」本です。覚えた単語の知識を深めるでもいいですし、場合によっては知らない単語を類推する力もつくでしょう。
ところどころ、英語の歴史についてコラムがあって内容がおもしろいです。
『The English Language』
- 英語で書かれた英語の本
- ネイティブの英語の見方が分かる
- データ・イラスト共に充実
最後に紹介するのは英語で書かれた英語の本です。この本は、実は先に紹介した『ベーシック英語史』の読書案内にあったので私は読みました。
全体としては英語史に特化した内容ではありません。前半は英語という言語内で起こる諸現象をまとめ、後半は英語史に関する話になっていきます。
内容は他の本同様、専門的すぎることはなく、一般の学習者でも楽しみながら知識を深めていくことが出来る内容です。もちろん英語で書かれた本ですので相応の英語力は必要ですが、言語学の専門用語をかなり知っていないと読めないという記述でもありません。
ネイティブが書いた本ですので、日本人の私たちはあまり意識しないような問題が取り上げられているところが新鮮です。イギリス人はこの文法現象をこう思っているのか、ということが分かるのは結構おもしろいところだと思います。
内容的にも今回紹介した本の中では一番ボリュームがあるので、じっくり英語という言語のおもしろさと付き合いたい人にお勧めです。でもペーパーバックとあって値段は手頃です。コスパ良し。
データやイラストも多いので、読むのはそれほど苦になりません。英語もどちらかというと平易な方ですので洋書を読むのに慣れている人は苦もなく読めるでしょう。
まとめ
今回紹介したのは、英語史に関する本の中でも、とりわけ入門レベルの本です。
専門家でもない限り、これらの書籍で記述されているレベルの内容が分かっていれば十分かなとも思います。
各書を読んで見て、もっと興味がでたら、そのときは専門書にステップアップしていくといいでしょう。これらの本の多くには読書案内としておすすめの本が紹介されているので、それを参考に次に読む本を選んで知識を増やしていくのもいいですね。
英語史のことを知ると、英語学習はちょっとだけ楽しくなると私はいつも思っています。英語は周辺語との深い関わりとのなかで発達してきた言語です。英語史について分かると、英語以外のヨーロッパ言語を学ぶときも大きなアドバンテージになります。
これらの本で英語史のおもしろい世界へと踏み出してみてはいかがでしょうか。
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