フランス語は第2外国語としてとても人気の言語です。そのため、書店に行けば(英語よりは少ないですが)たくさんの教材が並んでいます。今回は、仏単語学習をする心構えと、おすすめの仏単語集を紹介します。
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仏単語集は必要?
そもそも、単語帳とは、単語をならべた本です。ほとんどの人は、中高で何らかの「英単語帳」を暗記したという経験があるのではないでしょうか。
英単語帳は数も多く、書店に行くとどれを選んだらいいのやら・・・、となることもしばしばです。
一方で、フランス語の単語帳となると、一気に数が減ってしまいます。第2外国語としては最も学習者の多い部類であるフランス語ですらそうなのです。英語に比べると教材の選択肢は随分少なくなります。
中には単語帳は不要と言う人もいて、それも私は理解できます。結局、辞書を覚えたり、長文を読んでいて出てきた単語を覚えるという学習も十分可能です。
そもそも、世界にある言語の中で、書店に「単語帳」が並ぶ言語なんてほんの一握りです。ほとんどの言語は、単語帳のない中で学習しないといけないのです。
とはいっても、単語集はやはり学習において重要な単語を効率よくまとめてくれています。上手く使うと学習をうまく効率化してくれるのは確かです。
仏単語の覚え方
仏単語帳の使い方に特に決まりはありません。基本的には英単語帳を使ったときに自分がやっていた学習方法でいいと思います。
ただ、新たにフランス語を始めたばかりの人は以下のことに気をつけて学習することをおすすめします。
- 名詞の性
- 動詞の活用
- スペルは書く
性・活用
まず、名詞は性をセットで覚えないといけません。これは後回しにせずに、必ず意味・発音と一緒に最初から覚えておくことをおすすめします。
性を覚えていないと見て意味が分かったとしても、自分でその単語を使うことはできません。どんな簡単な単語でも、性を覚えておかないと特にライティングやスピーキングでは使えないと思ってください。
動詞の活用は出てくる度に覚えておくことをおすすめします。少なくとも、活用表を参照して余白に活用をかき込むなどしておくといいです。-er, -irなどの規則動詞以外は最初のうちはすべてこれをやっておくと後々楽です。
もちろん、全時制でなく、とりえあえずは直説法現在の活用と過去分詞だけでも書き込んでおくといいでしょう。これも、各活用形を覚えておかないと動詞を使うことはできません。
慣れてくると、何となく活用のパターンも掴めてきます。そこまでは面倒でもいちいち活用を身につける方がいいです。

書いてみる
単語を覚えるとき、単語帳をとりあえず「見て覚える」という人は多いと思います。
もちろん、それで意味は覚えることができると思うのですが、仏単語の場合は、スペルを書いてみることも大切です。
単語を見ながら書く。発音しながら書く。聞き取りながら書く(ディクテ)。
いろいろな手段で、単語を書く練習をしておく方がいいです。特に入門や初級の段階では当てはまります。
というのも、フランス語には発音しない文字やアクサン記号などがたくさん含まれます。ライティングで単語を使うには、これらの黙字やアクサン記号をしっかり覚えておかないといけません。英語とスペルが「似てるけど違う」という単語は特に注意しないといけません。
初級レベルで習う単語は、ライティングやスピーキングで「使いこなせないといけない」単語ばかりです。最初のうちは書いてみて、しっかりフランス語の「リズム」や「音とスペルの関係」を身につけていくことが必要です。
おすすめ「仏単語帳」
以下では、私が気に入った仏単語帳を紹介します。
第2外国語の単語帳は基本的には初級(A1-A2レベル)のものが最多です。中級レベル(B1-B2)はかなり数が少なくなります。
上級向け(C1-C2)ともなると、そもそも教材がほとんどありません。(英語でもこのレベルの教材はかなり数が減ります。)
『キクタン フランス語』
- 英語版とは結構違う
- リズムに乗った音声CDが人気
英語でもおなじみのシリーズです。アルクの『キクタン』です。
フランス語版は、「入門編」「初級編」「中初級編」の3つが出てきます。
英単語帳と同じタイトルを冠していますが、中身はかなり違います。英語版『キクタン』と似ているのは、ほとんど音声CDだけです。リズムにのって単語を発音するあのキクタンスタイルの音声はフランス語版でも健在です。
『キクタン フランス語』には、仏単語と対応する日本語の訳語が1,2個載っているだけです。後は例文とその訳という感じです。
発音記号が載っていないのはかなり苦しいところです。CDを並行して使うのが前提だとしても発音記号は付いておいて欲しいところです。
例文は割と堅めの格言や引用で作られています。そのため、例文は何となく格調高く、初級用としては好みが分かれるところだと思います。文自体もある程度フランス語が読める人でないと理解できない文も多いです。
私は好きな例文ですが、結構嫌いだという人も多いようです。
ただ、基本的な単語や文法語や日常語を手っ取り早く身につけるには便利な単語集ではあります。薄いので最初の1冊として使っても挫折率はそれほど高くないはず。
『ゼロからスタートフランス語単語』
- 基本語の理解が進む
- 類語の意味の違いが分かる
- 語法にも詳しく言及
入門用の仏単語集として、私が一番おすすめなのは、この本です。
この本では、フランス語の基本語を中心に、用法や意味の類語との意味の違いを解説した数少ない本です。
私は初級段階でこの本を何度も熟読しました。実際にフランス語の本を読む段階になっても何度か参照することもありました。
前半は、être, avoir, faire, tenirといった超基本動詞、前置詞などの機能語を学習できるようになっています。初級段階で基本語の広がりをある程度体系化しておくと、その後の学習がかなりしやすくなります。
その後は、英語との比較で覚えたり、類語との比較で覚えたりできるようになっています。基本語の意味の重複具合や差異がわかりやすくまとまっています。この部分が私は一番後の学習に役に立ちました。
後半は日常語を割と普通の単語集という感じで並べています。
フランス語をマスターしたいなら入門段階でじっくり学習しておきたい単語集です。
『解いて力がつく久松式ドリル』
- 例文が豊富
- 学習しやすいレイアウト
- 基本語・熟語を徹底練習
- 機能語の用法を徹底練習
次に紹介するのは、フランス語学習界では人気の先生である久松健一先生の本です。
タイトル通り、これは「単語帳」というコンセプトの本ではありません。
これは基本語・熟語・前置詞などの機能語の用法を徹底的に練習するためのドリルです。
後半はレファレンス用にも使えるよう、基本語の意味や用法を解説しています。
ドリルを解いていく中で例文中の単語を身につけていくという方式ですので、「基本単語や前置詞の単語帳」としても使うことができます。
例文数が多く、それぞれには解説や英訳もついているので、初心者にも十分学習しやすいです。
この例文を瞬間英作文出来るまで練習したら、フランス語のアウトプット力はかなりついてきます。このレベルの文は中・上級者からすると簡単すぎるかもしれませんが、意外な見落としもあるものです。瞬間英作文の練習には中級者でもちょうど良いです。
仏検2級以上やDELF B1以上のスピーキング・ライティングの基礎固めにも効果的だと思います。
すべての例文に2つの速さの音声がついているのもありがたいです。
『仏検3・4級必須単語集』
- 例文1つに複数見出し語
- 見出し語の解説が詳しい
- 関連語も豊富に紹介
仏検用の単語帳で、最も人気の本の1つです。著者は上記の本と同じく、久松健一先生です。
一つの例文に複数の見出し語を収録する形は、さながら英単語の『DUO』のような構成です。
この単語帳は、そのスタイル上、例文を暗記するのがやはりもっとも効果的な学習法だと思います。例文は全部で200あります。初心者からすると大変でしょうが、これらが書ける、瞬間英作文できるとなると、フランス語で表現できることもかなり広がります。
私はこの単語帳を使って、毎日40例文ずつノートに(殴り書きのような字で)書きまくりました。初心者のころの懐かしい思い出です。
また、この単語帳は、それぞれの語義説明も詳しいです。
各語について、非常に充実した数の例文と用法、連語の指摘があります。また、派生語や類語のまとめなど痒いところに手が届く記述です。
『仏検準1級・2級必須単語集』
- 読解力と語彙力を鍛える
- 見出し語の解説が詳しい
- 関連語も豊富に紹介
この単語集は、先ほどのものの上級版です。上級版と言っても、実際には仏検2級ぐらいのレベルだと思ってください。
この単語帳だけで準1級を乗り越えるのはなかなか厳しいです。見出し語数は529で相当数の関連語、補足語が収録されていますが、準1級語彙を網羅的に身につけるもう少し多くの単語を知るが必要がなります。
単語の解説や関連語の豊富さは先ほどの『3・4級版』と同じです。こちらは「3・4級版」ではカタカナ発音がついていますが、こちらでは発音記号が表記されています。
単語集のスタイルは違います。
「準1級・2級版」では、短いフランス語の文章があって、それに出てくる単語を次のページで並べているという構成です。
先ほどのが『DUO』スタイルだとすれば、こちらは『速読英単語』スタイルということになりますね。
読解文の後にはちょっとした文法の解説がついています。また、文章の日本語訳には見出し語にあたる単語だけフランス語が表記されているなど、学習しやすいようにデザインされています。
こちらは瞬間英作文するにはテキストが長すぎるので、シャドーイング用として使うのがベストですね。ちなみに私はこの本と『耳が喜ぶフランス語 !』のシャドーイングを4ヶ月ほど毎日続けて、TCFのリスニングB1を取得しました。
『クラウンフランス語単語』
- シンプルなレイアウト
- 中級レベルの語彙を学べる
- 見出し語を含んだ文章つき
こちらは最近発売された仏単語帳です。レベルとしては初級から中級にステップアップするレベルの人(A2-B1)向けという感じです。
こちらも「仏検準1級・2級対応」となっていますが、やはりこの薄い単語帳で準1級単語を網羅するのは不可能です。準1級の足がかりをようやく作れるぐらいのレベルだと思ってください。
こちらも、上の単語帳同様、見出し語の約半分は短めのパッセージの中に収録されている「速単」スタイルです。
長文中に入りきれなかった単語は個別に例文がつけられて、羅列されている感じです。見出し語数は1058語で、類義語・派生語などの指摘は最低限です。(この数では準1級レベルの語彙は網羅できません。)
見た目としては、今回挙げた単語集の中でも最もシンプルな部類です。左ページに例文(日本語)と例文(フランス語)があります。フレーズや例文で作文練習もできるようにレイアウトされています。
右には見出し語(発音記号付き)、日本語訳、類義語・派生語などが記載されています。
インターネットで無料音声を聞くこともできます。
長文や単語の例文の音声はナチュラルスピードとディクテ用があります。ナチュラルスピードといっても、正直かなりゆっくりです。仏検2級以上のリスニング対策用とするならもう少しスピードが欲しかったところです。ディクテ用は、かなり長いポーズを取りながらゆっくり読まれます。
ディクテには結構ありがたいスピードです。スペルを文中で音と関連させながら身につけるににはもってこいですので、じっくりとりくみたいところです。
まとめ
仏単語帳は数が英語に比べたら少ないですが、それでも多い方です。
単語集があるということはそれだけでありがたいことですので、その存在に感謝して最初のうちはせっせと単語を覚えていくのがいいでしょう。
中級の後半(B2以上)になってくると、日本語で書かれた網羅的な単語集はまあありません。ここからが第二外国語の本当の語彙学習の始まりとも言えるかも知れません。
辞書と正しく付き合いながら、真のボキャビルをしていかないといけません。私はドイツ語とフランス語の単語を覚える時は、初級~中級初期のときしか単語帳は使いませんでした。
後はひたすら辞書を覚える日々です。これについてはまたいつか記事にして方法などを紹介したいと思います。