こんにちは。kazetori( @kazetori2 )です。いつも「やるせな語学」をお読みいただきありがとうございます。
このサイトは、ご覧の通り英語学習を中心に扱っています。その一方で、英語の周辺の外国語についても多くの記事を書いてきましたし、これからも書いていくつもりです。
私は世に言う「多言語学習者」というものだと自覚しているのですが、今回は、「どうして私が多言語をやるのか」という話をしてみようと思います。
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好きだから
一つ目の理由は、単純です。
あまり大きな声で宣言するのははばかられるのですが、たぶん私は外国語学習そのものが好きなのだと思います。ええ。きっとそうです。
やっぱり知らなかった「ことば」の意味が分かるということは、私にとってはいつだって楽しくて、魅力的なことなのです。
語学が好きだから今まで多くの言語を学習してきたし、してこれたのだと思います。
思い描く理想は楽しそうな光景ですが、語学のほとんどは苦しみの連続です。「どれだけやっても・・・」なんて思うこともしばしあります。
それでもやっぱり、誰かの何らかの「声」をキャッチできることで、ちょっとだけ自分の世界はおもしろくなるのではないかと思っています。だからやめられません。結局好きなのだと思います。
英語の「万能性」の外に
英語は年々「万能」の武器となってきていますが、それでも英語以外の言語の価値は減りません。
21世紀になっても、フランス語にはフランス語の価値が、少しも損なわれることなく厳然と刻まれています。
私が学生時代にあるカフェでバイトをしていたときのことです。外国人観光客の多い場所でしたが、フランス人のお客さんには(不自由きわまりない)フランス語で話しかけるようにしてました。
もちろん英語の方が遙かに使えるのですが、フランス語を話す喜びはそれでも必ずそこにあるのです。そして、フランス語で話しかけると、多くの観光客は、驚いて、そして笑顔になります。
その瞬間を味わうだけでも価値があると思っています。英語だけが話せてもこの感覚は味わえません。
絶対化される英語
日本の実情
世の中に「語学」を経験したことのなど、ほとんどいません。
では、英語以外の語学を経験した人だとどうでしょうか。我が国では一気に数が減ってしまいます。
大学では第2外国語というものが通常は必修化されています。しかし、日本の大学で第2外国語をある程度使えるレベルまで到達する人は相当稀です。
最高学府なんて呼ばれるような大学でもそうです。「きみは○○語勉強してるんだ。偉いね~。(自分は単位さえもらえればいいや)」という人は随分多いです。
大学の4年間で、第二外国語を使ってある程度の意思疎通ができる(B1~B2)レベルぐらいになって卒業した人、みなさんの周りにどれぐらいいるでしょうか。
ほとんどいませんよね。
これがヨーロッパの大学生ともなると、3カ国語(自国語+英語+もう一つ)ぐらいは当然のように話せる人ばかりです。4、5カ国語だって珍しくありません。
陸続きであるということは要するにそういうことなのかも知れません。
英語の絶対化
英語以外の言語を知るメリットは、英語を「客観的に」見ることが出来るということです。
私たちが外国語として知っている言語が英語だけなら、《外国語=100%英語》ですね。
英語はこういう言語だ。こういう語順だ。語彙だ。
学校ではこのように習います。そして、受験において、英語は最重要科目とされます。
私たちは、英語の語順・文法・語彙を、よく考えれば「英語はこんな言語だから・これをよく使うから」という理由で盲目的に覚えるわけです。
中学校では、「英語の動詞には3単現の-sがつく」と習います。「なんで?」と疑問を持ったとしても「そういうもんだ」と習うことがほとんどではないでしょうか。
そしてそのうち「なんで?」とも思わず普通に規則を受け入れるようになります。
ほとんどの語学は、絶対化された英語の世界の話です。だからこそ、日本の大学では(面目上は)第2外国語が必修となっているのでしょう。
「点」が増える
世界を見る視点
一つの言語を知るということは、その言語を通して世界を見る方法を手に入れるということです。
英語がわかれば、トランプ大統領のスピーチが理解できます。それに批判的なCNNの報道が理解できます。コメディードラマを見て一般家庭の生活を垣間見ることが出来ます。
英語を知ることで、「英語的なるもの」が私たちはなんとなく分かるわけです。そしてそこから世界を見つめる視座を手に入れるわけです。新たな視点というやつです。
英語が分かれば、日本語しか分からない人よりも1つ多くの視点をもつことになるわけです。(だから偉いというわけではありません。単に視点の数の話です。)
「そういえば、この件について、英語圏のメディアや一般人はこう言っています」みたいなことも言えるようになります。
最近の例では、日本の新元号についての英語記事がSNSのタイムラインをに賑わせていませした。英語が分かれば、「世界はこう見ている」ということに対して、英語を通してアクセスできるわけです。
それでも、それは、「英語を通して見た世界」に過ぎません。
そこで、もう一つ外国語を知るとどうなるか。そうすると、英語を通して見た世界を相対化できるわけです。
「英語の世界は絶対ではない」
これに気づけるだけでも第2外国語を学ぶ意義はあります。それほど高いレベルでなくても、英語の絶対化が解かれるぐらい他の言語を知っていれば、物事には多様な見方があるという基本を忘れないはずです。
当たり前ですが、「海外の反応」のすべてが英語圏の人によって形成されているわけはありません。しかし、私たちは、ともすれば英語だけを読んで、「海外では・・・」みたいな意識を生み出しかねません。

「点」が増えるということ
世界を見る視点が2つあると、それらをつなげて線が出来ます。
もし3つの視点があったら平面ができますし、4つあったら空間が出来ます。古典語を知ったらそこに時空のようなものが生まれます。
1つの「ことば」には、(時間的にも空間的にも)広がりや奥行きがあります。多言語を知ると、それらをちょっとだけ意識することが出来るようになります。
たとえば、この文。
They regarded her suspiciously.
高校時代に必死に英語を覚えた経験が人なら、この文の意味は分かるはずです。
多言語を知ると、語順、語彙、単語の形にちょっとだけ奥行きをもって捉えることが出来るようになります。
theyは古くに北欧からやってきた代名詞です。文法語が外国語から入ることは非常に稀なのですが、英語の柔軟性がそれを可能にしてしまいました。英語の懐の深さを考える語です。
regardは、単語帳にはregard A as Bで「AをBとみなす」という意味が載っているでしょうが、ここでは意味が違います。ここでは単に「見る」です。フランス語では「見る」はregarderですので、当たり前すぎる意味ですね。
gardは、guardとも関連していて・・・、みたいなことも見えてきます。
言葉の時空間に既知の単語を位置づけることが出来たら、言語はもっと豊かに、時に違った表情をもって目の前に迫ってきます。
いろいろな言語を知るということは、そういったメリットがあるのだと思います。
まとめ
いろいろ書きましたが、多言語で手に入る視点はとても価値のあるものだと思います。
特に、日本ではバイリンガルはまだしも、3カ国語以上を使えるひとは非常に数が少ないため、それだけでとても価値ある存在です。(というか、そうであってほしい。)
もちろん、私だって、知っているのは日本語とヨーロッパの言語だけです。
韓国語はほんのちょっとだけかじったことはありますが、アジアの諸言語はほとんど知りません。ロシア語もアラビア語も分かりません。
だから、自分は広い視点を持っていると自信をもって豪語できるほどの人間ではありません。
それでも、普通の人よりはいろんな言語から物事を見ることはできているのかなあと思います。
点、線、空間、時空間・・・
そうやって言葉の世界を広げながら、学習をしていきたいと思っています。そうして、ちょっとだけ、届かぬ人の声に耳を傾けることができたらいいななんて思っているのですが・・・。
はじめまして。記事を興味深く読ませていただきました。
私は10年ほど前から韓国語を学習し、今は1年ほど前から英語を学習しています。
Kazetoriさんが多言語学習の理由の1番に「好きだから」と書かれていますが、私も同じです!(>それが嬉しくて、コメント残します!)
韓国語は、ヨン様ブームもあり、仕事(書籍編集)がきっかけで始めたのですが、よく「なぜ韓国語を勉強しているのか?」とか「何か目的があった方が伸びるよ!」とかたびたび言われ、正直それが本当に苦痛でした。「何か理由がないとダメなの?」「目的がないとうまくならないの?」と、いつも思っていました。
結果的には7年ほどで韓国語能力試験では最上級を取得し、話す方は機会がなくて中レベル(旅行先で使えるくらい)ですが、仕事でも数多くの韓国語関連の本を編集できました。
やっぱり私には「好きだから」しかありません。知らない言葉を知っていく過程が楽しい!からやるだけ。「語学のほとんどは苦しみの連続」というのには激しく同意!!(笑)ですが、世界がめっちゃ広がりますよね、点が線になって面にって、空間になっていく感覚、これはハマります。
これからも単純に「好きだから」学習を続けていこうと思います!
Kazetoriさん、はじめまして。ますこと申します。
多言語について語っている日本語のブログを見るのはかなり珍しいと思うので、見つけることができて嬉しいです!わたしも多言語話者のひとりです。(英語・フランス語)
この記事にすごく励まされました。わたしたちは島国の日本に住んでいることもあるのか、ざっくりと海外諸国を「外国」と捉えてしまいますよね。今までわたし自身もそうだったのですが、かなりバイアスもかかる部分もあるなーと最近気づきました。英語に加えてフランス語に手を出したらもっと色々な国の文化について知りたくなり、それをまた英語で調べたり日本語で調べたりしています。フランス語ももっとできるようになればまたオリジナルのイメージで捉えられることが増えるかなと楽しみです!
思えば幼い頃、英語では苗字と名前が逆転すると知って「おもしろい!」と思ったところからこの道は続いていたのかも知れません。周りの英語学習者のように明確な目標も必要性もないことが悩みでしたが、ただ「好きだから」で落ち着きましたw
フランス語はまだまだ初級レベルですが、英語で話しながらフランス語を教わったりもできるのでまた楽しいです。こちらのブログをゆっくり拝見して、次に学ぶ言語を考えます^^(イタリア語かスペイン語の雰囲気が好きです!)
これからも応援しています^^