北海道大学の入試問題(英語)は、英語の基本的な読解力と表現力を試す非常にバランスのとれた試験です。問題は旧帝大の中では簡単な方ですが、それゆえに英語の基礎体力がしっかり問われる良問が多いです。今回は、そんな北大英語の特徴と、最新2019年の入試問題を振り返りたいと思います。
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北大英語の特徴
先述の通り、北大英語は、基礎を非常に重視したバランス型の問題です。
阪大京大のように極端に精読に特化したわけでもなく、4つの長文問題の中で英語の基本的な文法力、文脈把握力、語彙力、表現力を満遍なく問われるようになっています。
そんな北大入試は、テキストや設問は旧帝大レベルでは最も簡単な部類です。センター試験と比べても、少し難しいぐらいのの素材のときもあります。(学部によっては英語の合格者平均点は9割近くなるそうです。)
設問は基本的かつ最小限の和訳問題に加え、空欄補充や要約完成など、オーソドックスな問題が並びます。日本語での記述量は、他の難関国公立大学と比べても少ない方です。
英作文は、数年前から和文英訳が廃止され、読解を踏まえた英問英答と自由英作文だけになりました。
このことから、難解な語彙を知っていたり、複雑な構文の長い英文を日本語訳できる能力よりは、平易な英文の内容を時間内でしっかり理解できる能力を重視していることが分かります。
とはいっても、問題はしっかり精選されており、本文をしっかり理解していないと解答できないか、解答にかなりの時間がかかってしまう問題ばかりです。その点で、読みやすいからといって表面的な読解では合格点にはなかなか届きません。所々、背景をしっかり理解していないと解けない問題も含まれます。
問題の構成は、ここ数年、以下に固定されつつあります。
1 長文読解(総合)
2 長文読解(総合)
3 長文読解(英問英答・英作文)
4 会話文読解(要約完成)
いずれも、読解と内容理解をベースにした問題です。記述量は、難関大学の中では少ない方で、客観問題が占める割合はけっこう多いです。
英問英答では本文を簡単にパラフレーズできる語彙力と表現力が必要になります。自由英作文の語数は100語程度で、テーマは入試としてはありふれたものが多いです。
会話文読解でもパラフレーズ文を短時間で完成することができる、速く正確な読解力が要求されています。
2019年の問題
2019年の問題も例年とほとんど変わらない構成でした。
試験時間は90分で、読むべき英文量は9ページと結構多めです。それなりにスピードも要求されるのは確かです。(90分で9ページというのは、リスニングを除いた東大入試の読解量と同じぐらいになります。国公立では多い方です。)
説明問題も含めて、和訳をして解答する英文量は大問1・2合わせて5行分ぐらいです。
あとは客観式の選択問題が多いですが、少し選びにくい問題が去年よりは増えた印象です。
大問1の《内容一致+並び替え》の問題は、通常の内容一致よりは、一段階上の英文理解が要求されます。パラグラフの内容を整理しながら読解出来ているかが時間短縮のカギになりそうです。
英作文も書きやすいテーマです。
最後の会話問題は内容的には去年より深く、素材として随分おもしろい英文になったと私は思いました。(去年のハロウィーンのやつはどうでもよかったな~)
解答のポイント
以下では、各設問を振り返りましょう。問題と解答例は各予備校のページで見ることができます。
大問1
気候変動と健康問題についての英文です。難しい単語や表現もなく、とても読みやすいすっきりした文章になっています。
diarrhea, heat stroke, dengue fever, bone-break feverなどの病名は知らない受験生もいるでしょうが、解答に影響はありません。2行目に出てくる “buzzword” なんて今時の単語だなと思いました。単語集には載ってないでしょうが学生は知っていますね。
問2の代名詞が指すものは、20字以内という指定なので、要約の要素がある問題になっています。
問4の和訳問題は付帯状況のwithの訳し方がすこし悩むところでしょうか。日本語にするときは、with以下をかみ砕いて、 “and more people are killed (by heat waves) than (by) hurricanes, earthquakes, and other disasters combined” ぐらいに考えるといいでしょう。
問6の内容一致は新形式で、「本文で述べられている順に」という指定がついています。難しくはありませんが、各パラグラフの内容をしっかり整理できてないと本文を読み返さないといけないので時間がかかることになります。漫然と意味だけを取っていては対応できないという点で、良問だと思います。
大問2
先入観に縛られる危険性とその回避方法について述べられています。大問1よりは1段落が長く、ちょっとだけアカデミック色が強くなっています。
設問は標準的ですが、odd number, even number がそれぞれ「偶数」「奇数」という意味だと分からないと、問2は戸惑うかも知れません。
問4の和訳問題は、割と本文の核心になる文ですので、読み違いをすると英文理解が苦しくなります。questionが動詞であるということは見抜きたいところ。英語の名詞はそのままで動詞として使われることもある(ゼロ派生)と分かっておく必要があります。
問6は要約文完成です。選択肢の単語は意味・用法ともにしっかり抑えておきたいところ。
大問3
英問英答と英作文を扱う大問3はSNSがテーマでした。
2019年の入試にはかなりSNSの話題が多かったですが、北大のこの問題も、絵に描いたぐらい典型的なSNSの利点と問題点についての文でした。
英作文もそのままSNSの利点や問題点について述べるというものでした。テーマとしても定番のものなので、しっかり100語以内で考えをまとめる練習をしておきたいところです。
英問英答は、Qustion Aではパラフレーズ、Question Bでは英文要約のテイストがある問題です。いずれも本文の該当箇所は一瞬で見抜けるでしょう。
前者では指定文が冠詞で終わっているので、なんらかの名詞構文で空欄を補充するのがポイントです。
大問4
最近の大学入試では難関国公立でも会話問題が増えてきました。名大や東北大でも会話問題が出題されています。
北大英語では会話文を読んで、その要約文を空欄補充で完成させるという形式です。
会話文は3ページほどと長めで、要約文は1ページぐらいでした。選択肢はA~Zまで24個あります。このなかにいろんな品詞の単語が混在しているので、各設問4択式よりも選ぶのが面倒くさいです・・・。
英文の内容は、言語による色の表現の違いに始まり、言語が変わると世界の見方が変わるのかという命題について、実際の研究例などを引用しながら語られていきます。
会話文にしてはかなりおもしろい英文だと私は思いました。日本語の「みどり」と言う単語は「あお」に比べて随分新しい単語だったとは、目から鱗でした。(設問にはなっていませんでしたが。)
選択肢数は多いですが、各空欄に入る品詞は明らかですのでそれほど迷わず正解を選べると思います。正直、本文を読んでなくても埋まりそうな空欄もあるような気もします・・・。
まとめ
北大の問題は、難関国公立大学入試の基本要素が詰まっています。
難関大を目指す英語が得意な高校生なら高1や高2など、早い段階で取り組んでみても参考になると思います。
大人が練習問題として取り組むにも北大入試はちょうどいい素材だと思います。英検準1級よりは英文自体は少し易しいぐらいですが、正確な読解が必要です。外部試験対策だけでは気づけない英語の基礎事項について考えるきっかけにもなります。
大学入試は、英語のプロである大学の先生が考え抜いて作問する試験です。そんな試験から学ぶことも多いです。まして、北大のようなオーソドックススタイルの試験から得られる知識は大きいです。