6月に実施された2019年第1回英検1級(筆記)を振り返ります。語彙問題の基準や、読解問題・英作文のポイントを考えていきましょう。
語彙問題(単語)
1級の語彙問題は25問で、そのうち21問が単語の問題です。
単語のレベルを考えるため、全選択肢の84単語をアルクのSVLで参照しました。
SVL1=1000語レベル、SVL2=2000語レベル・・・、SVL12=12000語レベルと考えて下さい。
※形容詞に-lyをつけただけの副詞は、もとになる形容詞形のレベルに入れています。
SVL | 語数 | 例 |
SVL 5 | 1 | prudent |
SVL 6 | 1 | obscure |
SVL 7 | 3 | waver, eloquent, discard |
SVL 8 | 2 | repel, indulgent |
SVL 9 | 4 | eclipse, ordeal, dreary, overt |
SVL 10 | 14 | groove, chic, lax, fumble, enigmatic, huddle, envoy, etc… |
SVL 11 | 16 | cartel, smirk, ambivalent, fluolescent, fraudulent, drab, alleviate, etc… |
SVL 12 | 17 | epitomize, ectricate, fussy, imbue, sequester, stench, brunt, vouch, flinch, etc… |
SVL外 | 25 | maim, figment, abduct, adjoin, irreparable, disputable, prescient, derail, etc… |
今回はSVL外の単語が25語という結果でした。ちなみに前回(2018年第3回)はSVL外が16語だったので、SVLを基準にしたら難易度が上がったということになりますね。
ただ、SVLは基準としては有用ですが、あくまで基準のひとつに過ぎません。単語の難易度というものはそう簡単に判定できるものでもないというのが本当のところです。
毎度のことですが、SVL外の単語でも『パス単英検1級』に収録されている語は多いです。
ちなみに1級用の単語集として定番の『パス単英検1級』に収録されていた語は39語(全84語中)でした。
実際のところ、『パス単1級』と、SVL10~12の単語をすべて収録した『究極の英単語vol.4』を覚えていると今回の語彙問題で分からない問題はほぼなかったでしょう。これについて詳しくは、以下の記事をどうぞ。
以下の単語は、SVL外で『パス単1級』にも未収録の語です。知らなかった人も多かったと思われます。
maim, figment, entwine, stench, subservient, blurb
ちなみに、この中では figment だけが正答になっています。正答の語を知らなくても、その他の3語を知っていると消去法で選べるようにはなっています。
語彙問題(熟語)
熟語問題は4題で、形式は単語と同じく短文の空欄補充です。
出てきた語は以下。(下線は正答)
(22)
hail from
whisk away
bolt out
tear into
(23)
shake off
belt out
hunker down
tap into
(24)
smooth over
waste away
butt in
peter out
(25)
hole up
ward off
choke up
rattle off
(22)は、文脈的に from が含まれているものが正答に見えてくるのは自然かと思われます。
(23)の tap into は『パス単1級』に収録されていますね。こちらも、なんとなくintoが入りそうな感じが文にあります。
(24)は「口を挟む」という感じの意味だろうと文脈から分かるでしょう。正答はbutt inです。似た意味のcut in といった基本熟語を知っていたら類推は難しくないはず。
(25)の正答rattle offは『パス単1級』に収録されていますね。これについては、rattle(ガタガタいう)という単語を知っていても、rattle off(すらすら暗唱する)という熟語を「熟語として」知っていないと厳しいですね。
読解問題
読解問題は5題で、前半は長文の空欄補充、後半は長文の内容一致問題です。
大問2-1
Gentrification
流れ込む上流階級
都市における貧困層居住区に対する中・上流層の人々の流入について。ジャンルは社会・経済といったところ。タイトルのGentrificationという単語は私も初めて知りました。この現象を定義するのが第1段落、別の側面を指摘するのが第2段落、その代替案について語るのが最終段落です。2段落の “rock-down property prices”, “run-down city” といった語句はちょっと意味が取りにくく感じました。
大問2-2
Film Noir
ブラック映画
1940~50年代にハリウッドで流行した映画のスタイルについての文章。ジャンルは映画ですね。前回もこの問題は映画がテーマになっていました。タイトルはフランス語で「黒い映画」という意味ですが、その用語を関した映画の特徴が前半では語られ、後半はその用語の定義について述べられます。選択肢は割と素直に本文を言い換えている印象です。
大問3-1
Reductionism versus Systems Thinking
細分化と統合的思考
内容一致問題の一つ目は、割と抽象度の高い英文でした。ジャンルは遺伝子工学といったところですが、話が具体的事象になっていくことはあまりなく抽象的な思考法についての話が多いです。タイトルの通り、本文は明確な対比構造になっていますので、それを頭に置いて読んでいくといいでしょう。個々の分析をするのも有効だが、全体のなかでそれらを位置づけることも必要ですよ、そしてそれは難しいのですよといった内容です。interconnetion, cross-disciplinary, interrelatedといったキーワードをしっかり抑えながら読んでいくといいでしょう。設問は1問目がいちばん選びにくい気がします。external factorという語を直接指すような語句が本文中にないのでそこは内容を理解した上で汲み取らないといけませんね。
大問3-2
Jordan Peterson and Bill C-16
ジョーダン・パターソン教授とカナダの新しい人権法
2017年に変更されたカナダの人権法と、それに従わない意を示した大学教授が巻き起こした論争について。最終的には法でマイノリティーを保護することの限界が語られます。第1段落は言論の自由と人権法の軋轢という関係を見抜くこと。第2段落は教授が批判的に見ているidentity politicsというキーワードをしっかり理解することが必要です。結論はそこから少し派生して、結局その法はあまり意味がないよね、という感じでなんとも後味が悪い結論になっている印象です。
大問3-3
The Silurian Hypothesis
シルリア説
最後の長文は地質学、環境、文明とテクノロジーといったテーマでした。過去2回はがっつり近代史というテーマでしたが今回は、扱う時間のスパンが一気に伸びましたね。読んだ感想としては、最後の長文にしては私は読みやすく感じました。正答の選択肢は割と本文を素直にパラフレーズしてくれています。このレベルの文章を短時間でしっかり理解する読解力をつけていくのがやっぱり1級の最低条件ということですね。いくつか絶対普通の人は知らないだろうという専門用語もありましたが、(当然)読解力でカバーできる範囲です。
英作文
1級英作文は社会性のあるテーマについて、200-240語のエッセイを書くことが求められます。この語数はあくまで目安であって、多少オーバーしても採点には影響ありません。(実際に試して確認済み。)
今回のテーマは「感染症は今後数十年でより大きな問題となるか」というものでした。infectiousという単語を知らないともうおしまいですが、さすがに1級受験者で知らない人はいないかな~(いたかも)。
a bigger problemと比較級になっているので、「今より」大きな問題となるという視点があるといいでしょうね。
また、in the coming decadesとの指定ですので、(今から見て)数十年間の時間のスパンで考える必要もあります。
この期間内に起きそうな変化を軸に理由を組み立てていくといいでしょう。
ぱっと思いつくボディーとしては以下です。
肯定
- 人口増加・過密化で感染症の拡大は容易になる
- 人の移動が多くなるので拡大を止めるのが難しくなる
- 格差が広がり、医療にありつけない人もでてくる
- 食や環境、労働状況の変化による免疫力の低下(ちょっと苦しい・・・)
否定
- 医療技術の進歩
- 過去の感染症(SARSなどの)からの教訓
- 遺伝子工学の進歩
- 健康保険制度がさらに整備されるだろう
いくつか苦しげな理由もありますが、ともあれしっかり3つの観点から筋道だった理由をあげればそれほど難しい英作文ではありません。
肯定ならやはり人口増大を軸に、その副産物を考えて組み立てていくのがやりやすいのではないでしょうか。
否定なら医療や科学技術の進歩が軸になるでしょう。
書いている内に横道にそれないよう、しっかりTOPICを理解したうえでまとめていくといいと思います。
おわりに
英検の振り返り、いかがだったでしょうか。
このサイトでは英検2級以上について、各分野のポイントやアドバイスなどをまとめているのでそちらも参考にしてみてください。
過去の英検の分析もやっていますので、過去問にチャレンジされた方はそちらもご覧下さい。
なお、英検の過去問は英検公式サイトで無料ダウンロードできます。
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