先日行われた2019年第1回英検準1級を振り返ります。語彙問題に必要な語彙数や読解問題・英作文の解答のポイントを考えていきましょう。問題は英検公式サイトから無料で見ることができますので、そちらをご覧下さい。
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語彙問題(単語)
準1級の語彙問題は25問で、そのうち最初の21問が単語の問題です。
今回もいつも通り、全選択肢の84語をすべてアルクのSVLで参照しました。毎度のことですが、SVL1=1000語レベル、SVL2=2000語レベル・・・、SVL12=12000語レベルと考えてください。
結果は以下。
SVL | 語数 | 例 |
SVL 2 | 1 | immediate |
SVL 3 | 4 | horn, lean, spoil, interrupt |
SVL 4 | 9 | knot, stare, conventional, summit, shallow, tob, bolt, stem, etc… |
SVL 5 | 14 | swift, ethnic, industrious, exceed, inspector, declaration, tenderly, etc… |
SVL 6 | 15 | disclose, equivalent, ethical, scorn, admirable, endeavor, administrator, etc… |
SVL 7 | 9 | withstand, prop, contradict, ingenious, attachment, virtually, friction, etc… |
SVL 8 | 16 | invoice, impractical, frantic, extravagant, paraphrase, disposable, intruder, etc… |
SVL 9 | 7 | chunk, immeasurable, obstruct, entice, evade, aquatic, harass |
SVL 10 | 3 | fracture, recurrent, rehabilitate |
SVL 11 | 1 | exhale |
SVL 12 | 1 | diagonal |
SVL 外 | 4 | impassable, nautical, originator, encase |
語彙問題は大体全体の75%(4語中3つは知っている)の単語を知っているとほとんどの問題は正解できるでしょう。
今回は、75%ラインがSVL8の8000語レベルでした。だいたい8000~9000語レベルになるように準1級では設定されているので、まあいつも通りという感じです。
2級ではこのラインが毎度4000語程度ですので、準1級では2級の倍は語彙力が必要ということになりますね。やはり準1級は上級者の登竜門という感じがします。
今回は、SVL10以上の語が9語ありました(SVL外の4語含む)。
それらは多くの受験者が知らなかった単語だと思われます。
特に、以下の語彙なんかは1級で見かけてもおかしくないような語彙です。1級受験者でも意味に不安がある語もあるでしょう。
invoice, chunk, prop, recurrent, entice, encase
毎度のことですが、準1級は10000語まであと少しというレベルの語彙力が必要とされます。1万語と言うと、ある言語が「十分使える」と言っても恥ずかしくはないぐらいのレベルです。
1万語目指して少しずつ積み上げていくしか道はありません。
ちなみに1級では12000~15000語ほどの語彙力が必要とされています。このサイトでは、1級も毎回レビューを出しているので、良かったらご覧下さい。
語彙問題(熟語)
熟語問題は4題で、形式は単語と同じく短文の空欄補充です。
出てきた熟語は以下。(下線は正答)
(22)
stuck up for
slip by
talk down to
grew into
(23)
skim over
branch off
tip over
scratch out
(24)
hold out
wash away
pass out
blast out
(25)
turn down
pack up
pass out
feel for
熟語には単語のような基準もないので、難易度の判定はしにくいですね。
熟語に関しては準1級と1級はそれほど差がないように私はいつも感じます。あくまで個人の感想レベルのことしか言えませんが、(22)がいちばん選びにくいような気がしました。
(23)は、branch(枝)という語を知っていると、なんとなく比喩的な意味として予想できそうです。
(24)も文脈からholdがいちばんしっくり来そうな感はあります。
(25)もfeel forを熟語として知らなくてもなんとなくこれっぽいと思える気がしますね。
読解問題
読解問題は5題で、最初の2つが長文の空欄補充、後半3つが長文の内容一致問題です。
2-1
The Mud Angels
宝を泥から救い出せ
イタリアにおいて、貴重な芸術作品を自然災害から救い出すために集まったボランティアの話。ジャンルは、まあ、社会というか、歴史というか、みたいなところ。ディスコースマーカーを選ぶ1問も含めて、非常に読みやすく、解きやすい。
2-3
The Thaba-Tseka Development Project
良き開発計画とは
世界銀行が実施したアフリカ向けの開発計画とその挫折について。ジャンルは社会、文化。計画するのは良いけど、現場の文化や実情を踏まえないといけませんよという話になっています。現代社会で起きた問題点を指摘し教訓にまとめるというスタイルになっていて、英検らしい文章かと。
3-1
Hostile Architecture
寄せ付けざる建築
安全のために悪い人が「たむろ」しないような建築を行うことの是非について。後半ではその考えは否定され、別の案が提示されます。(34)の正答はは本文を少し抽象的にまとめ上げています。選択肢中のlessenという語を知らないと選ぶのは難しいかも。
3-2
The Uncertainties of Celiac Disease
不可解な腹痛
ある地域にだけ見られる腹痛の症状について、遺伝子や食物の観点から考察する文章。第2段落のintestine, gutという単語の意味を知っていたら楽でしょうが、知らなくても何となく意味を予想しながら読んでいくことは可能だと思われます。
3-3
Oxford and Cambridge
オクスフォードとケンブリッジ
英国の二大名門大学が辿ってきた特異な歴史について。ジャンルはイギリス史。教会と政権の関係など、英国史の常識的事項を知っていたらすんなり腑に落ちる話だったのではないでしょうか。19世紀までイギリスには2つの大学しかなかったなんてのは私も知りませんでしたので、けっこうおもしろく読めました。正答の選択肢はわりと素直な本文の言い換えになっているので、内容が読めていると迷うところはほぼないでしょう。(39)は、第2段落の[quickly and efficiently identify] and [put an end to] movements that threatened their authority… という内容を言い換えています。andが結ぶのは[ ]で示した語句です。
英作文
準1級の英作文は社会性のあるテーマについて120-150語でエッセイを書きます。
その際、指定された4つの観点から2つを使って自分の意見に対する理由を組み込むようになっています。
英検準1級の英作文は、このレベルの試験としては少ない語数で、ある程度しっかりレールの敷かれた、解きやすい試験になっています。
今回のTOPICは「将来、日本の消費者はより多くの輸入製品を購入すると思うか」というものでした。
観点は、「国際化、政府の政策、物価、品質」となっていました。
TOPICに “more” と比較級が含まれているので、今から見て、未来にはどのような変化が日本で起きているだろうかという視点から論を組み立てていくと良いでしょう。
内容としては、英検準1級によくあるようなトピックかなと思います。
おわりに
以上、2019年第1回英検準1級(筆記)を振り返りました。
過去問は公式サイトで無料ダウンロードできますので、そちらをご覧下さい。
このサイトでは2級以上の英検について、他にもたくさんの記事を挙げているのでよかったらそちらもご覧下さい。
準一級を目指しています。
kumako さん
目指しましょう!
準1級は難しいですが、かなり大きな一歩です。
見える景色もずっと明るくクリアになるはず!
返信ありがとうございます。
reading,listeningともに瞬時に理解出来ず精読、精聴の復習に時間がかかってしまいます。
特にreadingは最後の2問。listeningはpart2に苦戦してます。
compositionは時間がいつも足りず、です。
復習回数を増やすと出来るようになるのでしょうか。
先が見えず辛いです。
Readingはテクニックもなにもないような純粋な内容理解問題になっています。もし、時間が足りないようなら、単純に読むスピードを上げるための多読が何より効果的かなと思います。
基本的な文法につまずきがないかももう一度確認してみてください。2級やセンター試験の筆記ではほぼ満点近くとれないとなかなか準1級は歯が立ちません。時には後戻りして基本に返る勇気も上達には欠かせなかったりします。
読むスピードが上がると、リスニングのPart2(本文が長く、設問が細かい点をついてくるため、瞬時の正確な英文理解が必要な問題です。)もだんだんと歯が立ってくると思います。
英作文は得点しやすいところなので、最低限の時間は確保できるように他の問題を解いていきたいところですね。
準1級以上の英検は、英語の「高い基礎体力と総合力」がそれなりに要求されると思っています。
そのため、たまには英検専用の教材から離れて、ドラマや映画を英語字幕で見たり、読めそうな洋書をみつけて読んでみるといった方法も効果的です。過去問だけで視野が狭くなるよりは、遠回りに見える学習がよっぽど近道だったりもするので、諦めずに英語を読み切る体力をつけていきたいところですね。
こんにちは。質問させて頂きたくてメールしています。昨日、英検準一級を受けたのですが、あまりにも出来なくてショックから立ち直れず思いきって相談いたします。英検は20年振りくらいで、Toeicはここ数年、年に三回程受験しており、昨年11月は765点でした。昨日の英検ではパス単語をほぼ覚えたと思っていたのですが、10問も間違えreading,listeningは壊滅的でした。作文は週に一度、近所の英会話スクールで習っていたので最低線はできたと思うのですが。主に過去問しかならなかったのと、音読が足りなかったのか。2級にやはり戻るべきなのか。英語自体止める時なのか。こんな状態から脱出するにはまず何をするべきなのかお聞かせいただければ、有り難く思います。宜しくお願いします。
こんばんは
コメントありがとうございます。
準①級で壁にぶつかるということは多くの学習者が経験することであってなにも悲観することではないと思います。
特に準1級以上の英検はTOEICと違って語彙力が大きな鍵を閉める試験です。リーディングの半分以上を占める語彙問題の出来が全体の出来を直接左右します。(語彙問題の1問と読解問題の1問のスコア上の価値は同等です。)逆に考えると、語彙問題でほとんど正解することができれば英検で不合格になることはよっぽどスピーキングが不得意でもないかぎり、あまりありません。
語彙問題で多く取りこぼしがあると言うことは、パス単を始め、まだ準1級レベルの語彙が本当の意味で身についていないということになるかもしれません。覚えたつもりでも実際問題になってみると答えることができないと言うことはよくあります。単語の意味を覚えたかの判断基準は、その単語を見たときに、どんな文脈だろうが意味が一瞬で思い浮かぶ段階です。うろ覚えでは真の英語の語彙力とは言えません。
今一度立ち返って考えてみるべきは、2級レベルの語彙やしっかり身についているかということです。英検には段階別に明確な語彙問題のレベルの差が設定されています。そのため、2級で分からない語彙があるようでは準①級では到底歯が立ちません。準2級ー2級の差に比べて、2級ー準1級の差は大きいです。準1級では2級の倍の語彙力が要求されます。2級で常に9割以上、センター試験の英語で常に9割以上の得点を出せるレベルでないとそもそも準1級の問題は壁が高すぎるものです。もし前のレベルで妻月があるのなら、その段階に戻ることはなにも残念なことでもありません。結果的には早く上達する人は後戻りの重要性を知っていますし、時には後戻りをする勇気を持っていると私は思います。
私も1級を取得した後でも2級の問題に取り組むことはあります。そのたびに必ず満点が取れるわけはないですし、必ず新たな発見があります。
思い描く理想は輝かしいですが、英語力を着実に向上させて行くには、実際にはつまらない退屈な作業の積み重ねでしかありません。準1級は並の日本人には到達できるレベルではありません。そのために必要な努力は誰だって同じだと思います。TOEICで高得点がとれるとしても英検で躓くことなんんて多くの人に起こりうることです。
行き詰まりを感じているなら、好きな洋書で簡単に読めそうなものを探してみるとか、好きな映画やドラマを英語字幕で見てみるなどで気分転換するのもおすすめです。英語を学ぶ楽しさを再発見してモチベーションをまた見つけることも時に必要だと思います。
準1級レベルの単語を覚えているか曖昧なときは、パス単対応のアプリ『英単語mikan』や、大学入試用の上級単語集で自分に合うのを見つけるのもおすすめです。
準1級レベルの語彙に対応した単語集は書店に並ぶ単語集の中でも最も選択肢が多い部類なので自分に合うものを探してみるのも手だと思います。
英語自体は、たとえ休止したとしても、いつか再開してぜひやめずに続けていくことをささやかながら願っております。