遙かなるシルクロードをたどって、中央アジアの国々を旅してみたいと思ったことはありませんか。「○○スタン」の国々はそれほど人気の国ではなかったのですが、最近ではビザの緩和により多くの日本人が訪れるようになってきています。
今回は、カザフスタンとウズベキスタンを旅した経験から、これらの国でロシア語と英語がどれぐらい話されているのか、どの場所ではどの程度通じるのかを紹介します。
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母国語と公用語という事情
中央アジアの諸国は、母国語として、各国固有の言語を持っています。たとえば、カザフスタンならカザフ語、ウズベキスタンならウズベク語、キルギスならキリギス語といったように、その国の人口の大部分が理解する言語は母国語です。
一方で、これらの国々は30年ほど前まではソビエト連邦に属していました。想像に難くないと思いますが、人々はロシア語を使うことをある程度強いられていた時代です。
そのため、現在でもこれら中央アジア諸国ではロシア語を公用語として制定しており、実際に有名な大学や大きな企業ではロシア語が日常的に会話で使われています。
そのため、中央アジアの人々にとって、多くは母国語と、外国語としてロシア語を週託するというのが一般的であったようです。
この「公用語がロシア語」という点が、中央アジアの独特の言語事情を生み出しています。
たとえば、タイやベトナムなどの日本人にも人気のある東南アジアの国々では、外国語としては英語をまず第一に多くの人が学んでいます。観光地ではそれなりに英語が通じる場所もすくなくありません。一方で、中央アジアでは英語の間にロシア語というきっぱりと公用語と定められている言語が存在している点が、ほかのアジア諸国とは違う事情を生んでいます。
ただ、最近ではロシア語を話さない若い世代も増えていて、英語を学習する人も増えていまようです。英語教材はどの書店をのぞいても一通りはラインナップされていますし、英語ができるようになりたいという憧れのようなものは日本同様、多くの国民が抱いているようです。
ロシア語話者の傾向

私はウズベキスタンで国民のどれぐらいの割合がロシア語を理解するか数人に聞いてみたところ、全員が人工の5~6割と答えました。ロシア語話者は以下の傾向があります。
- 鉄道や警察など公的機関で働く人はほとんどがロシア語を話せる
- 若い世代よりは年配の世代の方がロシア語話者の割合が多い
- 都市部ではロシア語話者の割合が多い
もちろん、これは一定の傾向であってそうでない人もそれなりにはいるでしょうし、今後数十年で変わっていくとは思います。おそらく数十年でロシア語を理解する人口と英語を理解する人口は逆転するのではないかと言っていた現地人もいました。
英語が通じない?
中央アジアを扱ったガイドブックにはしばし、「英語はあまり通じない」という記述を見かけます。
実際どうなのかというと、通じない人は多いですが、時にはびっくりするぐらい上手に英語を話す人もいるという感じでした。これは結局アジア諸国どこをとってもほとんど同じような感じではないかと思います。
現地の人が英語を理解する度合いというのは、一概にははかれませんが、タイやベトナムなど、従来から日本人観光客に人気の国とそれほど変わりはないように思います。
町中に英語表記の看板や案内表示というものは、残念ながらほとんどありません。今のところ、これらの国々で「外国語表記」といえばまずはロシア語です。そのため、現状、英語を見かける機会よりはロシア語を見かける機会の方が多いというのが実情です。
ただ、サマルカンドやブハラなどの観光都市を中心に、英語の案内は増えているようですし、これからも増えていくと思います。これらの街では英語どころか日本語で話しかけてくるお土産屋やタクシーの運転手もいるぐらいです。(これも東南アジアとほぼ変わらない状況だと思います。)
結論から言うと、英語よりはロシア語の方がまだ通じますが、別に英語だけでもなんとか生きていくのは可能だと思います。実際多くの日本人、欧米人が英語を使って観光しているのは事実です。
場所別言語通用度

以下には、どの場所でどのぐらい外国語が通じるか、私の印象を表にまとめてみました。
ロシア語 | 英語 | |
空港 | ◎ | ○ |
鉄道 | ◎ | △ |
路線バス | ○ | × |
レストラン | ◎ | △ |
陸路での国境 | ◎ | × |
ホテル | ◎ | ○ |
今回参考にした場所は以下のカザフスタンとウズベキスタンの以下の都市です。日本人が旅行で訪れるとしたらこれらの街がほとんどではないでしょうか。
アルマトイ、シムケント、タシュケント、サマルカンド、ブハラ、ヒヴァ、ヌクス
まず、全体の傾向としてですが、先述の通り、公的な機関ではロシア語はほぼ問題なく通じます。電車のチケット窓口や、空港、警察、国境審査、ツーリストインフォメーションなどといった場所では基本的なロシア語を学んでいれば随分楽に通過することができます。
ただ、市内を走る路線バスは英語もですし、場合によってはロシア語すらろくに通じません。路線バスは中央アジアでは20円~40円ほどと日本人からすると格安の値段で乗ることができますが、やはりサービスは値段相応という感じです。バスの運転手も車掌も鉄道と違って制服みたいなものはありませんし、そこには職業の格差があるように思えます。
以下ではもう少し詳しく各場面の言語事情を見ていきましょう。あわせて旅行をする際に役立つ情報も紹介します。
鉄道の言語事情
中央アジアは鉄道移動が主だと思いますが、駅の窓口で英語はほとんど通じません。といっても、本当に基本的な英語ぐらいは分かってくれますし、(ロシアと違って)ほとんどのスタッフは優しいので、なんとか理解しようとしてくれます。数字やtoday, tomorrowぐらいの単語はほとんどの人が理解してくれると思います。その上、地名はほとんどがカタカナ読みで通用します。これはありがたいところです。
また、ブハラやサマルカンドなどの観光都市を中心に、英語を理解するスタッフも増えています。ブハラとサマルカンドではこちらがロシア語で話しかけても英語で説明してくれるぐらいのスタッフもいました。
鉄道のチケットを買うときは、不安な人は時間を調べて地名と時間をメモしてそれをみせるというのが一番おすすめです。カザフスタン鉄道の時刻表は公式サイトから、ウズベキスタン鉄道の時刻表はグーグルマップから見ることができます。出発と到着の地名を入力し、日時を選択すると候補が出てきます。
キリル文字が読めたら何かと便利なので、基本的な読み方だけでも頭に入れておくことをおすすめします。キリル文字は33文字あって、基本的に一文字が一音に対応しているので、読み方を覚えるだけならあっという間です。
以下、よく使う地名をキリル文字のキリル文字表記を挙げておきますので、時刻表や地名を調べるのに必要な場合はコピーして使ってみてください。
アスタナ(ヌルスルタン) | Нур-Султан |
アルマトイ | Алматы |
シムケント | Шымкент |
ビシュケク | Бишкек |
タシュケント | Тошкент |
サマルカンド | Самарқанд |
ブハラ | Бухара |
ウルゲンチ | Ургенч |
ヒヴァ | Хива |
ヌクス | Нукус |
モイナク | Муйнак |
ホテルの言語事情
私は格安のゲストハウスやすごく安めのホテルしか利用していませんが、ホテルではほとんどの場合、基本的な英語は通じます。
私は中央アジアに滞在した一ヶ月でいくつかのホテルに滞在しましたが、英語が全く通じなかったホテルはウズベキスタンのモイナクという西の果てにあるちいさなゲストハウスだけでした。(ロシア語は通じる。)
その他のホテルではそれなりに英語も通じました。中国やロシアのホテルと比べたら遙かに英語の通用度は高いというのが私の印象です。
タクシー事情
中央アジアのタクシーはとにかく勧誘がうるさいのと、外国人からはぼったくってきますし、平気で嘘の情報を流してきます。
アルマトイにはUberがありますが、多くの都市ではそれもないので、タクシーを使う際はなかなか注意が必要です。
基本的に、タクシーは現地の人(ホテルスタッフなど)に捕まえてもらって値段を聞いてもらうのが一番手っ取り早いです。値段も日本人の感覚からすると驚くほど安く移動できます。
英語で話しかけた場合には間違いなく値段をふっかけてきます。これはもう逃れられません。そして、英語が通じるタクシー運転手に出会う可能性はすごく低いです。一方でロシア語が通じないタクシー運転手はほとんどいません。
私もバスが動いていない時間でどうしようもないときはタクシーを使ったのですが、外国人観光客とみると、現地人の10倍ぐらいは平気で最初提示してきます。交渉したとしても半額ぐらいになるのが精一杯ですので、なかなか悔しいところですね。
ロシア語が分かる人は、恐る恐るではなく、どや顔でまくし立てるように「○○に行きたいのだがいくら払えばいいか?」「いや、それは高すぎるな。それなら他の手段を考える」みたいなことを堂々と言いましょう。私の印象ですが、その方が相手も本来の値段に近い額を提示してきます。要は私はこの場所のことをよく知らない観光客です、という雰囲気をできるだけなくすことです。
英語を操る一般人に出会った
私はカザフスタンとウズベキスタンを合計1ヶ月ぐらい旅したことがあったのですが、英語を話す一般人にもずいぶん会いました。
- アルマトイのバス停で値段を聞いた男性
- タシュケントの駅で話しかけてきた大学生
- タシュケント~サマルカンドの鉄道で話しかけてきた大学生
- ブハラ~ヌクスの鉄道で話しかけてきた大学生
- モイナクからヌクスまで車に乗せてくれた英語教師の親子
長距離の移動が多い中央アジアですが、観光のオフシーズンにもかかわらず、大体近くには英語を理解する人間がいたというのは結構幸運だったかもしれません。(ちなみに移動は常に一番安い三等寝台を利用。)
中央アジアの人たちは(ロシアと違って)とてもフレンドリーに外国人に話しかけてきます同じ車両やバスに外国人がいると見るやみんなしてじろじろこちらを見てくるぐらい、話しかけたくてたまらないオーラを出してくる人もたくさんいます。
そんなときは、怖がらずノリとテンションでコミュニケーションをするのが一番です。英語やロシア語はその助けになってくれるはずです。
ロシア語なんてわざわざ旅行のために身につけるのは馬鹿げているかもしれませんが、ものすご~く役に立つので、本当の意味で旅を楽しみたい人にはロシア語を身につけるとこをおすすめします。
現地の人の目線に近づくことができますし、なにより安く旅行できる可能性やおいしい食べ物にありつける可能性があがります。
結局、今回は、ロシア語のすすめでした。
最低でも、キリル文字の読み方ぐらい分かっているとものすごく役に立つので、ぜひこの地域を旅する際は参考にしてみてください。